タイトル<野菜の学校>
● 2009年度「野菜の学校」 ●
- 2009年11月授業のレポート -
開催日: 2009年11月7日(土) 会場:東京都青果物商業協同組合会議室

◆テーマ野菜:ニンジン ◆旬野菜:もやし

【講義】
(1)
「ニンジンの生理生態と品種」
カネコ種苗(株) くにさだ育種農場 育種第2グループ 神波千秋氏
(2)
栄養、調理保存
M-cooking-studio 松村眞由子氏
(3)
市場情報、出品品目紹介
東京青果(株) 澤田勇治氏
【講義より】
 今回は、カネコ種苗(株)でニンジンの育種をしている神波千秋氏に講義をお願いしました。フレッシュな若手で、しかも「野菜の学校」初の女性講師でした。はっきりとした話し方で、かたい演題をわかりやすく解説してくださり、ニンジンの全体像がよく理解できました。

 ニンジンの原産地は、中央アジアのアフガニスタン。冷涼な気候を好みます。インドを経て中国に伝来した「東洋系」と、トルコで交雑成立した「西洋系」があります。

 日本には、1631年に東洋系が伝来。赤、紫、黄、白色があったといいますが、現在は真っ赤で色鮮やかな「金時」のみが栽培されています。

 西洋系は19世紀にフランスで品種改良が進み、現在のような橙色で短根の品種が登場しました。日本へは19世紀に伝来。北海道、愛知、関東に定着したものは寒地型、長崎に定着したものは暖地型となり、現在の栽培品種のもとになりました。特に、長崎で黒田正氏が育成した「黒田五寸」は、現在でも栽培されている息の長い品種です。

 日本では1960年代まで長根種が主流でしたが、食生活の変化、生産性の向上、周年出荷等の理由から短根種へと変化。また、短根種も収量の上がらない三寸から五寸へと改良されていきました。1965年に日本初のF1ニンジン「向陽五寸」が発売され、現在ではF1品種が多く栽培されています。

 以上のほか、作型や生育、病虫害などについてお話くださいました。

向陽2号
(栃木 島田青果)

恋ごころ
(栃木 JA矢板)

黒田五寸
(栃木 JAはがの)

ひとみ五寸
(群馬 固定育種所)

ベーターリッチ
(千葉 小野沢農園)

金美にんじん
(茨城 JAかしまなだ)

れいめい
(北海道 カワダ商産)

パープル
(北海道 高橋農産)

葉にんじん
(京都 JA全農京都)

島にんじん
(沖縄 個人荷主)

黒田五寸
(埼玉 関野幸生さんが
自家採取、自然栽培)

万福寺大長
(産地不明)
【ニンジンの食べ比べ】11品目:生食 3品目:和風煮

 生食の食べ比べ品目は、当初用意した9品目に、受講生の小野地さんが持参して下さった2品種を加え、全11品種となりました。

  1. 向陽2号(栃木県):普通によく食べられている品種。ヨーロッパ系5寸。形質最高、どこでも作れる春夏作業用の早太り5寸。ニンジン臭が薄い。
  2. 恋ごころ(栃木県):黒田系5寸。甘味に富み、色もよし。芯まで濃鮮紅色。生食、ジュース等幅広い用途に向く。
  3. 黒田五寸(栃木県):黒田系5寸。根色、芯色が特に優れ、濃紅橙色となる。肉質が柔らかで、甘味が強い。
  4. ひとみ五寸(群馬県固定育種所):5寸系。根色、芯色が特に優れ、濃紅橙色となる。肉質が柔らかで、甘味が強い。
  5. ベーターリッチ(千葉県):5寸系。甘味が強く、生食にぴったり。ニンジン特有のクセがなく、カロテン含有量が豊富。
  6. 金美ニンジン(茨城県):山吹色。5寸系。中国原産の「チャイ二−ズ・イエロー」を選抜育成した黄色ニンジンと、短根赤系ニンジンとの交配種。ニンジン臭がなく、甘味が強いため、ニンジン嫌いな人にも食される。
  7. れいめい(北海道):5寸系。ちはまニンジンと同用種。カロテン含有量豊富。 
  8. パープルニンジン(北海道):紫色。ヨーロッパ系7寸(ナンテツ系)。外皮は紫で、中身はオレンジ。非常に甘味が強く、ポリフェノールが豊富。
  9. 島ニンジン(沖縄県):沖縄の在来種の黄ニンジン。季節限定野菜のひとつ。甘味が強く、ニンジン嫌いの子供も喜んで食べる。
  10. 黒田五寸(埼玉県):長崎黒田五寸育成会の種。長崎五寸と丸山五寸との交雑後代から昭和10年頃大村市の黒田正氏が選抜固定。
  11. 万福寺大長(埼玉県):生洋系[滝野川]×東洋系。煮ものに最適な、昔ながらの長にんじん。
 和風煮の食べ比べは、「向陽2号」、「黒田五寸」、「れいよう」の3品目。かつお節のだしに、しょうゆ、塩、酒で淡い味つけをしました。

 生食の食べ比べ品目は、葉ニンジンを除く全種としたので、試料として多すぎたかもしれません。次回の課題としたいと思います。感想としては、「最近のニンジンはにおいがなくなり、食べやすくなっている」、「生食と調理品を食べ比べたところ、加熱すると甘みが増すので、ニンジンは熱を加えて食べるものだ」などの意見がありました。

生食の食べ比べ1

生食の食べ比べ2

和風煮の食べ比べ(例)
【ニンジンの試食】シリシリ:ひとみ、黒田五寸 サラダ:ベータリッチ、恋ごころ他カラフルニンジン

ニンジンのシリシリ

せん切りサラダ
 ニンジンを簡単に調理して、たくさん食べられる料理を紹介しました。

 左の写真は、沖縄で使われているスライサーで細かく切ったニンジンを卵と炒めた「ニンジンのシリシリ」です。

 右の写真は、カラフルなニンジンの色を生かした「せん切りサラダ」です。すったニンジンを加えたフレンチドレッシングで和えました。オレンジで香りもプラス。
【旬野菜:もやし】

 もやしは時無しで、特に11月が旬の野菜というわけではありませんが、最近はいろいろな豆から作られているもやしがあるので、今回ご紹介しました。

  1. 通常もやし:けつるあずき(ブラックマッペ)を発芽させたもの。
  2. 大豆もやし:大豆を発芽させたもの。
  3. 緑豆もやし:緑豆を発芽させたもの。
  4. 根切りもやし:中華料理店など向けに、根を切り取って袋詰めしたもの。
  5. 大鰐もやし:江戸時代、津軽藩主に上納していたという大鰐町の特産品。温泉熱を利用して栽培されている。

通常のもやし
(福島 成田食品)

大豆もやし
(福島 成田食品)

緑豆もやし
(福島 成田食品)

根切りもやし
(福島 成田食品)

大鰐もやし
(青森 大鰐町)
 
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