タイトル<野菜の学校>
● 2009年度「野菜の学校」 ●
- 2009年12月授業のレポート -
開催日: 2009年12月5日(土) 会場:東京都青果物商業協同組合会議室

◆テーマ野菜:ねぎ

◆旬野菜:親芋

【講義】
(1)

「ねぎ」
(茨城県板東市におけるねぎ栽培)
茨城県JA岩井 営業部 内田芳美氏

(2)

栄養、調理保存
M-cooking-studio 松村眞由子氏

(3)

市場情報、出品品目紹介
東京青果(株) 澤田勇治氏

【講義より】
 現在、日本で栽培されているねぎの原産地は、中国の西部地方と推測される。ねぎは「葱」という字が用いられてきたが、この「葱」は中国では山海経や礼記に記され、これが今日のねぎと同じとすると、2200年位前頃からすでに知られていたことになる。名称の起こりは、ねぎは臭気が強いという意味から古名を「気(き)」といい、「気」の一字名称のため「ひともじ」とも称された。後に根の白く伸びるところから「根ぎ」になり、また「根深」ともいわれるようになった。

 白根の長ねぎは中国北部で、葉ねぎは南中国で生まれた。元来ねぎは、温帯の野菜だが、耐寒耐暑性ともに強いため中国では各地で作られており、太ねぎ、葉ねぎとその中間の兼用種の3群に大別される。これらがわが国のそれぞれの地方に導入されて土着し、今日の加賀群、九条群、千住群として分布するに至ったと思われる。

 加賀群は、夏は成長するが冬は成長が止まり、葉身は枯れ、休眠状態で冬を越す。北陸、東北、北海道など寒地で多く栽培されている。九条ねぎ群は、青ねぎ・葉ねぎともいわれ、冬も成長する冬ねぎで関西で多く栽培されている。千住ねぎ群は両者中間型の根深ねぎ(白葱)で、関東などの東日本で多く栽培されている。

 このように、ねぎは3群に大別されるが、地名をつけて、その地方特有の産物として引き継がれてきた伝統種も、各地に多く見られる。

 以上、ねぎの歴史と栽培状況に引き続き、ねぎの作型、病虫害、ねぎの生産概況など、ねぎ全般について講義があり、その後、内田先生の管轄、板東市JA岩井管内におけるねぎおよび野菜生産・販売のご紹介があった。

【ねぎの食べ比べ】
 8品目:生食 7品目:焼き 試食:ミルク煮(下仁田ねぎ)、卵焼き(各種混合)

 ねぎの食べ比べ品目は、以下の8種類。

  1. 根深ねぎ(白美人) 
    品種:夏扇三号(サカタ)
    産地:栃木 JA那須南部 
    特徴:関東地域では、主に白い部分(葉鞘)を食べる習慣があり、ねぎの成長にともない土寄せを繰り返す深植え栽培にて作るねぎ。関東ねぎの総称。(千住群)
  2. 千寿ねぎ
    品種:元蔵(武蔵野種苗)
    産地:埼玉 葱茂商店
    特徴:江戸期より続く関東根深ねぎのブランド商品。合黒系、純一本太葱。(千住群)
  3. 下仁田ねぎ
    品種:下仁田(在来種)
    産地:群馬 JA甘楽富岡
    特徴:群馬県下仁田町の特産。丈が短く生では辛味が強いが、煮ると柔らかくなり、まろやかな甘味がでる。(加賀群)
  4. 仙台曲がりねぎ
    品種:ホワイトタイガー 秋冬系
    産地:宮城 北国組合・仙台太白区生産組合
    特徴:仙台市市内で白い軟白部分が大きく曲がった形態を持つ葱が栽培されている、葱畑の多くは地下水位が高く、通常の立ちめぎ栽培が出来ず、ねぎを横に寝かせて(やとい)と呼ばれる独特の作業を実施して作る。甘味と柔らかさが特徴である。(千住群)
  5. 九条ねぎ
    品種:九条太(在来種)
    産地:京都 JA全農京都
    特徴:葉肉が長くて柔らかい葉ねぎを代表する品種、青ねぎともよばれる。京都九条地域の産地が有名である。(九条群)
  6. 平田赤ねぎ
    品種:在来選抜種
    産地:山形 JA庄内みどり
    特徴:山形庄内地域の砂質土壌地帯で栽培される、江戸時代から続く一本葱系の名物ねぎ。葉鞘部の外側が赤紫色で、辛みが少なく、柔らかい。
  7. 越津ねぎ
    品種:越津(在来種)
    産地:愛知 JA愛知西
    特徴:愛知県津島市越事が発祥。軟白用栽培に適し、白根を特に長くすることが出来る。葉部も柔らかで葉ねぎとしても利用される。(九条群)
  8. 鍋ねぎ
    品種:なべちゃん葱(トキタ種苗)
    産地:茨城 JAいわい
    特徴:下仁田と根深一本ねぎを交配させたF1種。下仁田ねぎより耐寒性、耐病性にすぐれており、作りやすい。柔らかくなべものに最適。
1.根深ねぎ(白美人)
2.千寿ねぎ
3.下仁田ねぎ
4.仙台曲がりねぎ
5.九条ねぎ
6.平田赤ねぎ
7.越津ねぎ
8.鍋ねぎ

<生食>
 ねぎ生食の食べ方は、薬味(小口切り)とし、そばつゆを添えましたが、香り(臭気?)と辛みはやはり強烈でした。
 ねぎは薬味として日本の食卓には欠かせないもので、生食の食べ比べが省けません。「パスなさる方も大勢いるのでは…?」との当初の予想は外れ、みなさん果敢に挑戦されていました。
 「下仁田ねぎ」は刺激が強く苦みを感じたとの感想が多く、やはり加熱して食べる品種だと納得。「九条ねぎ」はクセが無く、青みとして使え、食べやすいとの感想が大勢を占め、「越津」、「千寿」は生でも比較的食べやすいとの評がありました。


生食は小口切りで食べ比べ

<焼き>
  「九条ねぎ」を除いた7品目をオーブン焼きにしました。ねぎのどの部分を食べるかが話題になり、西日本出身の方は緑の葉の部分、関東以北の方は白い部分と分かれました。
 生食では評判が今ひとつだった耐寒性のある加賀群の「下仁田ねぎ」は、熱を加えると甘みとろみが出て食べ応えがある。「根深(白美人)」はいつもの食べ慣れた味。「千寿ねぎ」と「九条ねぎ」との雑種から生まれた「越津ねぎ」はバランスがよく上品な味との評がありました。「鍋ねぎ」はインパクトに欠けるが、現代人に合い、和風にも洋風にも使えるのではとの感想が多々ありました。


7品目を焼いて食べ比べ
 山形県酒田市平田地区にて栽培されている「平田赤ねぎ」は、江戸時代末期、北前船によりもたらされ、家庭用の越冬野菜として各戸に普及されていましたが、白ねぎに押され栽培面積が減少していたものを復活させ、自家採取選抜した在来野菜です。初めて食べる方も多く、おいしいと味が薄いとの評に分かれました。赤色はアントシアニン系色素のため、加熱すると変色するので、外側の赤を酢で処理し、中の白い部分を加熱すればよいと、料理の際のアイデアも寄せられました。珍しい地方野菜として、栽培法に特徴のある「仙台曲がりねぎ」も出品されました。
 その他、出席者の方から地方の珍しいねぎの話題提供もあり、ねぎの仲間は500種以上が知られているそうなので、これから、ねぎの勉強はもっと楽しくなりそうです。
<試食>
 手軽にたくさん野菜が食べられる料理を提案する「試食」では、下仁田ねぎのミルク煮と、いくつかのねぎを混ぜて加えた卵焼きを紹介しました。
 ミルク煮は、下仁田ねぎを5センチの輪切りにし、ミルクと生クリームでコトコト煮て、塩とコショウをパラパラと振っただけです。カロリーが心配という方は、豆乳にチキンコンソメを加えても良いでしょう。
 卵焼きは、薬味と同様に小口切りにしたねぎを大量に用意し、卵に加え、しょうゆ、塩、酒で調味して焼きました。甘みはねぎから充分に出ますが、卵焼きは甘いほうが好きという方は、みりんを加えてください。スペインオムレツのようにフライパンにフタをして厚く焼くのもよし、型に入れてオーブンで焼くのもよし。やりやすい方法でお作りくださればいいと思います。オーブンの場合は、180℃で40分くらい焼き、上から押さえて汁がしみ出なかったらできあがりです。
【旬野菜:親芋】

 一般に、「里芋」というのは、小芋の部分を食べるものが多いのですが、今回は、親芋を主に食べる芋類を集めました。「八つ頭」、「セレベス」、「京芋」を蒸して試食。「カラトリ芋」は味噌煮にして、ズイキの部分も味わいました。山形県在来のねっとりしたおいしい里芋「甚五右衛門」は、和風煮にしました。


八つ頭

セレベス

京芋

唐の芋

からとり芋

からとり芋の味噌煮

甚五右衛門(親芋)

甚五右衛門(子芋)
 
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