●「ナスフォーラム2007」報告●
【共催】 日本農園芸資材研究会
【開催日時】 2007年(平成19年)6月27日(水) 13:00〜17:00
【場所】 女子栄養大学 3号館5F
【参加者】 約120名(食品加工・流通、全農、種苗、市場、研究・教育機関、一般、マスコミ)
開催の目的
日本では1200年も前から栽培されており、地方により長卵形なす、小なす、丸なす、長なすなど様々な特徴を持ったナスが存在しています。
ナスは消費・生産量ともに減少傾向にありますが、国内では古くから食され、地方特有の品種も多く、調理用途も多様なナスを多面から捉えて消費拡大の可能性を探るフォーラムを開催する運びとなりました。開催の趣旨をご理解いただき、各界の皆様のご参加のなかで、有益な情報交換が行われますことを期待する次第です。
講演要旨など
1)「今後の野菜政策となすの需給の現状」
農林水産省生産局野菜課流通加工対策室長
鈴木 良典 氏
 ナスの作付面積は平成17年度1.2万ha、収穫量は40万tで作付面積・収穫量、消費量とも年々減少傾向にある。市場入荷量は8月が最も多く、冬季になると少なくなる夏型野菜といえる。

 なすは古くから栽培されてきたことから、地方独特の品種も多く見られ、伝統的に卵形なすは関東、長卵形なすは東海から関西、長なすは関西以西、大長ナスは九州で生産が多かったが、近年では栽培が容易なことといろいろな用途に向くことから長卵形ナスが全国的に生産されるようになった。

 ナスは漬け物、揚げ物、焼き物など調理の多様性もあり、最近は水なす、サラダナスの登場により消費の拡大が期待できるが、地域に結びついた特徴のある品種も多くこれらの品種を大切に育て生産し栄えていくというのも野菜の重要な方策であると考えている。

 

2)「なすの品種動向と今後の展開」
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
斉藤 猛雄 氏
 ナスはナス科に属する野菜でナス科には、タバコ、チョウセンアサガオが属するほか野菜では、トマト、ピーマン、トウガラシ、ばれいしょなどもナス科に属している。

 インド東部が原産と推定され5世紀頃に中国へ伝わり日本には8世紀以前に渡来したとされ、日本では10世紀にはすでに重要な野菜となっていたようである。ナスには多くの種類があり果皮色は黒紫色以外に緑色、白色や黄色などがあり縞のあるナスもある。果実の形や大きさに対する日本人の嗜好は地域によって異なり、その嗜好や各地域の気候にあわせ種々の雑来種が成立している。日本型ナスの紫色は主としてナスニンというアントシアニン系色素により、その合成には光を必要とする。ナスニンはある種の金属イオンと錯塩を形成すると色が安定するため、漬け物の青紫色を鮮やかにするために鉄やミョウバンを入れることがある。なすはビタミン、ミネラルや食物繊維含量が少なく、栄養面では目立つものはありませんが、果実中には活性酸素の働きを抑えるなどの効果があるクロロゲン酸が含まれている。また、果皮にはアントシアニンが含まれており、コリンという血圧を下げる機能性のある成分も含まれている。

 ナスの品種改良の目標として生産面からは土壌病害抵抗性、その他の病害虫抵抗性、早熟性、収量性、耐寒性、とげなし性、草型等多くの形質が挙げられる。

 流通・消費面からは果形、果色とつや、果皮の硬さ、肉質等が挙げられ、嗜好の地域性も加味される必要がある。

 近年、単為結果性品種という受粉しなくても子房が発達し、無種子の果実が生長及び肥大する性質を持つ品種の研究開発が、栽培の省力化および果実品質向上の両面より期待されている。

 野菜茶業研究所では2004年に「ナス安濃交4号」を育成し、全国で試験栽培して良好な結果が得られたので「あのみのり」として2006年12月発表した。

 

3)「ナスの魅力」 
有限会社おいしいもの研究所代表
料理研究家 土井 善晴 氏
 土井先生は、テレビ朝日「おかずのクッキング」などテレビ、雑誌で著名な料理家・フードプロデューサーですが、今回の講演では「食」に関する全般的なお話とスライド写真による「なす料理」の説明をされました。

 野菜は「旬」を大切にしたい。「旬」は人の力で作りだすことはできず、私達は「旬」の野菜を食べることで、季節を感じ、その野菜の持つ美味しさ美しさを実感し、豊かな恵み(栄養)を摂ることができる。

 最近は甘い=美味しさの風潮があるが、美味しい,美味しくないという感覚を育てるのは家庭の環境・料理が大切である。「旬」の食材で心のこもった料理を食することにより、季節を感じ家族のつながり(思い出)ができる。そういった体験が人間の本能的な味覚を研ぐことにつながると思う。調理もしないで1人で食べる食事に文化は芽生えようもない。

 例えば「じゅんさい」〜 ヌメリが強くて冷たいのどごしが魅力で夏には最高の食べ物だが、味としての説明はつかない美味しさ・風味がある。こういったものが野菜の本物の味・力強さなのではないかと思う。

 「ナス」は地域ごとに色々な種類があり、焼く・煮る・漬けるなど料理のし方も様々で魅力のある野菜だが、最近、地方の特徴ある在来品種ナスは少なくなってきたようである。

 地方で自家用に栽培されるナスは地域の郷土料理と結びついて感激するような味が残っている。これからも大事に残して受け継いでほしいと思う。

表1 なすの栄養成分


資料:「五訂日本食品標準成分表」科学技術庁資源調査会編
注:Tr→微量。含まれているが成分の記載限度に達していないもの。
*…植物油(調合油)16.9g
4)出展会社 プレゼンテーション
 下記の出展会社より、なす品種の紹介と商品展示がありました。試食会場では出展された「ナス」を天ぷら、塩漬け、揚げびたし、焼きナスなど調理されたものを参加者が試食しました。

1、(株)渡辺採種場(宮城県)式部  2、タキイ種苗(株)(京都) とげなし千両、庄屋大長
3、(株)サカタのタネ(横浜)ごちそうナス 4、丸種(株)(京都)水の匠、黒雄、ひもなす
5、八重農芸(株) (長崎県) 黒船      6、(独)野菜茶研究所(三重県) あのみの

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