●「野菜の消費拡大シンポジウム」報告●
<野菜品質評価の現状と課題を探る>
【開催日時】 平成20年3月10日(月) 13時〜17時
【会場】 女子栄養大学駒込校舎松柏軒講堂
【参加者】 約130名(食品加工・流通、全農、種苗、市場、研究・教育機関、一般、マスコミ)
開催の目的
 健康が国家的課題として浮上し、さながら一億総健康志向時代を迎えているといってもよい昨今です。とりわけ、健康と野菜を巡る情報が多方面から発信されるようになりました。健康のために野菜摂取が必要不可欠であることは、改めていうまでもありません。
 にも拘らず、野菜消費は伸びていないという現状を、私たちは直視しなければならないと考えます。一方で、おいしい野菜なら消費が伸びるという指摘が多々あり、消費の側からも何らかの指標を求める声が高まっています。まずは、消費者と生産者が正しい野菜品質情報を共有し、それに基づいて生産された野菜が出回ることが貴重な一歩になるのではないでしょうか。
 今、個々の野菜に対する品質情報が巷に氾濫しています。「おいしさ」という感情を伴う語に科学的知見の裏付けはむずかしいといわれていますが、当野菜と文化のフォーラムでは、あえてこの問題に挑戦してみました。そして、その検討会を通じて見えてきた野菜情報をこれを機会に提供して、これからの野菜品質を考える参考に供したくシンポジュ−ムを開催する次第です。
基調講演(講演2題)
「これからの野菜の品質を考える視点について」 山口 静子氏
(野菜おいしさ検討委員会委員長、東京農業大学教授、前日本官能評価学会会長)
「小売店頭より見た消費者の求める野菜品質情報について」 恵本 芳尚氏
((株)イトーヨーカ堂 食品事業部青果部チーフバイヤー)
  
講演要旨
【基調講演1】 「これからの野菜の品質を考える視点について」
山口 静子氏
(野菜おいしさ検討委員会委員長、東京農業大学教授、前日本官能評価学会会長)
 2年間一緒に研究させていただいた中から、感じたことを報告したい。やってみて、天然物を扱うのは、牛肉も野菜も大変難しいと思った。逆に言うと人間の良さを指標で測れるか。それが測れるなら、入学・入社試験もいらなくなる。それを野菜に期待するのは間違いで、安易に指標を定めるべきべきではない外国人も日本の市場を狙って調査しているが、かまぼこのように一様な肉を目指しているように見える。従って杓子定規で指標が出たときの弊害も考える必要がある。今日の話は、本当にある一面を捉えた物にすぎず、結論も出ないので皆さんと一緒に考えたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・野菜のおいしさの要因・・・・・・・・・・・・・・・・
  野菜の品質というと、成分、物性、熱量、機能性などの物理化学的の他に、食べる人の特性(年齢、性別、体調、食経験、鑑別濃緑など)もある。さらに調理の仕方でも違う。複雑な野菜と複雑な人間とがかち合い、そのコンビネーションだけでも複雑だ。その中で、何とか条件を選び、評価をはじめた。
  いろいろな要因の中で、色も多彩、香りも欠かせない、味はもちろん、食感も含めて五感の全てが重要だ。その中で、最後は味となる。味の役割として、栄養要求のシグナル「甘味、酸味、塩味、苦味、うま味」がある。それぞれ右図のようなシグナルとしての役割をもつ。その最後にある「うま味」が、国際的にも知られ、注目されている。

 まず、1908年池田菊苗博士によって、グルタミン酸が発見された。

味覚のシグナル

甘味→
エネルギー源としての糖
酸味→
代謝を促進する有機酸 腐敗、果物の未熟さ
塩味→
体液のバランスに必要なミネラル
苦味→
有害物質
うま味→
栄養素としてのタンパク質

 

 その後、1913年にイノシン酸、1957年にグアニル酸と、三大うま味が日本人の手で発見された。母乳の中でもグルタミン酸がアミノ酸中最も多く存在し、大根や人参の微弱な味の中でも、大きな働きをしている。

 味覚にはどのくらいの濃度から感知できるかという「閾値(いきち)」がある。ショ糖(砂糖)の水溶液では、0.086%、硫酸キニーネ(苦味)では0.000049%(≒0.5ppm)というわずかな量で感知できる。グルタミン酸では0.12%と大きく違うが、これにイノシン酸が加わると、グルタミン酸の働きを分かりやすくしてくれる。

東西のだしの共通点

種類
動物性食品
植物性食品
日本料理
だし
鰹節、煮干
昆布
中国料理
鶏ガラ
野菜
西洋料理
ブイヨン
牛すね肉
野菜

 うま味には相乗効果がある。右図は30年余り前、味の素に入社したときにやった仕事で、グルタミン酸(MSG)とイノシン酸(IMP)が双方半分くらい存在するときに、一番うま味を強く感じる。これはうま味特有の現象で、他の物には無い。

 イノシン酸は動物性食品にのみ存在し、植物性食品には無い。人類は昔から動物性食品と植物性食品を一緒にダシをとって、うまく摂取してきた。イノシン酸は煮干しなどに多く含まれ、グアニル酸はキノコに多い。外国人はクラム(ハマグリ)を焼いて食べ、汁は捨ててしまう。日本人は汁物文化で、汁を大事にする。汁によってうま味の相乗効果が目一杯おこる。
・・・・・・・・・・・・・・・・嗜好の形成・・・・・・・・・・・・・・・・
 味の中でも、甘味、うま味、塩味は生得的に好まれる。それが本能的に分からない人は、学習して知恵を獲得しないと生きられない。酸味、苦味、辛味、渋味やほとんどの香りは、学習によって後天的にその良さが分かるようになる。学習のはじめは、何を食べるかでなく、何を食べないかである。人類はそうして食べられないものを学習してきた。野菜もはじめから好まれたわけではない。負の感覚、感情を克服することによって、強い嗜好が形成されるものが多い。それには苦味、渋味、強い酸味、強い塩味、辛味、メントールの冷感、アルコール、青臭さ、醸造・発酵香などがある。

 学習の動機には、親や社会的な圧力、繰り返し接触、好ましい特性との連合学習、心理的な薬理効果、スリル探しなどがあり、それらを通じてだんだん好きになる。それを面倒くさいと感ずると、口当たりの良い甘味になり、奥深い味は賞味できぬようになる。


縄文以来の価値観
近年の傾向
 ・季節感の重視
 ・素材の持ち味を生かす
 ・高い香り
 ・苦味・渋味嗜好
 ・清浄な水
 ・だし
 ・米の味
 ・やわらかいの志向
 ・香りのないもの志向
 ・甘いもの志向
 ・脂っこいもの志向
 ・新奇性嗜好
 ・グルメ志向
 ・安物志向
 ・無関心

 日本は良い水と四季に恵まれ、精神性の高い嗜好を持つ。しかし最近は柔らかくて甘ければよいという感じになってきている。それでよいのだろうか。今回の検討も、原点回帰の必要を考えさせてくれる。「A5」ランクの牛肉は67%の粗脂肪を含む。67%も脂肪があると赤身のうまさが隠されてしまい、煮ても、焼いてもうま味が出ない。そこに、牛肉の各付けに疑問を感じた。

 野菜では行き過ぎた甘味がそれに相当する。多少の強調はともかく、強調しすぎるとよくない。バランス、調和を考えないといけない。自分の嗜好を開発し、高みにおいて受容することが必要だ。
・・・・・・・ニンジンの評価1「昔ながらのニンジンは評価されるか」・・・・・・・

昔ながらのニンジンは評価されるか
試料
Brix.
 A:(群馬産)長人参
11.8 
 B:(千葉産)
9.5 
 C:(長崎産)
8.6 

 昨年、いろいろなニンジンを評価した。その中で印象的だったのは、群馬産の長ニンジンAだった。B,Cは五寸ニンジンで、そのうちBは自然農法のもの。
  みんな糖度が高いが、生食と煮た場合では評価が全然違う。Aは硬くてニンジン臭さもあり、生では評価が出ないが、ニンジン好きな人はAを高く評価する。そうでない人はCを好む。すると、作りやすくてよく売れるニンジンの評価が高くなり、「味が薄く、甘く」となってしまう。

・・・・・・・・ニンジンの評価2「甘味は強いほど好ましいか」・・・・・・・・

甘味が強いほど好ましいか
試料
 A:ベーターリッチ
 B:向陽二号
 β:向陽二号にグラニュー糖2%添加
比較
 AとBとの比較
 Aとβとの比較

 「ベータリッチ」と「向陽二号」に砂糖を添加したものを比べると、平均点が同じくらいになった。すると「甘ければよい」ということになるのか。
  一口食べただけの官能評価は、突拍子もない結果が出るおそれがある。ニンジン好きでない人は、ニンジンの甘味を好まないことが分かった。従って見かけのデータで評価を下すのはまずい。そこでトータルのおいしさを判断する必要がある。トータルとしてのおいしさは、単純な「快」・「不快」だけでなく、認知的判断、摂取に伴う摂取量とおいしさの時間的経過、他の食材との組み合わせ、調理方法、一口だけでなくたくさん食べられるかなど、あらゆる意味での調和とバランスで評価しないと行けない。

・・・・・・・・ニンジンの評価3「野菜のおいしさはいかに微妙か」・・・・・・・・
 もう少し違うことをやってみようと、今年、3種のニンジン(ひとみ五寸、向陽二号、千浜)でテストした。食べても違いがよく分からず、どうでもいいやの感じだった。
  そこで、とりあえず、2種の調理(市販コンソメスープ、2%鰹節)をした。それぞれ順位(一番買いたいもの)を付けてもらうと、コンソメと鰹節とで順位が変わってきた。表のデータと勘案すると、グルタミン酸の多少が効いていると思った。


だし
(n=85)
市販コンソメスープ
(n=75)
2%鰹節
試料
順位1位をつけた人
36
27
22
24
39
12
順位2位をつけた人
24
31
30
33
13
29
順位3位をつけた人
25
27
33
18
23
34
平均順位
1.87
2.00
2.13
1.69
1.58
2.02

 

試料 Brix. グルタミン酸
 A:
8.4 0.014%
 B:
8.2 0.019%
 C:
8.0 0.016%

 一方、ニンジンの部位(頭と尻尾)で測るとBrix.による違いがでた。ではイノシン酸を添加するとどうなるか。そのまま(0.1%食塩)と0.01%のイノシン酸を添加した。するとイノシン酸を加えることによって、歴然とうま味が増強されたことが分かった。

 そのまま炊いた時は「向陽二号」のほうが好まれるが、イノシン酸を加えると、グルタミン酸の多い「ひとみ五寸」が好まれた。市販のコンソメはグルタミン酸が多い。昆布で煮ても同じだろう。イノシン酸の添加でこんなにも違うのかと驚いた。
 イノシン酸0.01%ではそうだったが、「千浜」に0.0033%を添加するとわずかの差でも評価が違ってくるのがわかった。こういうことに気がつかないと、ニンジンの価値をよく知らずに判断を下すことになりかねない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・ダイコンの評価・・・・・・・・・・・・・・・・・
■試料
 B:Brix.3.6
 C:Brix.4.8
 ・生:千切り
 煮物ベース:だいこん乱切り3s、酒60g、みりん60g、醤油150g、2%鰹だし汁1s
 ・揚げ煮/ベースに油揚げ320g
 ・おかか煮/ベースに鰹削り節20g

 Cのダイコンは未熟だったがBrix.はBより高かった。
 しかし、「おかか煮」にするとCの評価が高くなった。おいしいとよく噛むので、食感も高くなる。20gの削り節を入れただけで、評価が変わる。野菜を食べさせるには「生がよい」というが、ダイコンを生食するのは大変だ。煮る方がよい。大根おろしも醤油がうま味を増強する。鰹節を加えるとさらに効果が出る。しかし、塩やドレッシングでは差が出ない。

 このように、野菜の持つポテンシャルを最大に引き出して食べることが大事だ。「生では辛い」と避けられたダイコンも煮ると変わる。さらに熟すともっと変わる。
・・・・・・・・・・・・・・キュウリの評価1「歯切れのよさ」・・・・・・・・・・・・・・
 昨年評価した、資料Aは「ミニキュウリ」。Bは群馬産の「木瀬アンコール10」。これを生食(もろきゅう)と塩漬けとで評価した。その結果、生食でミニキュウリが好まれたのは歯触りだけ。塩漬けでも同じだった。ミニキュウリは、パリッとした食感を楽しみたい人には良いが、これを一般のキュウリにまで拡大してほしくない。
 主婦のアンケートでは「パリパリ派」が多数だが、生産者がそれに応えるのをおそれる。今年は「パリパリきゅう」が多くなったような気がする。
・・・・・・・・・キュウリの評価2「新鮮さはおいしさの決め手か」・・・・・・・・・
 今年は、A、B、C、D4種のキュウリについて評価した。4種ともおしなべて香りも味も薄い。ただし食感だけは評価が高い。キュウリをあまり好まない人は、食感のところしか評価しないようだ。もう一つ不思議なのは鮮度。5日前に収穫したキュウリと、前日収穫したのを評価した。   
その結果、Aのキュウリでは差がなくBでは古い方にドレッシングを用いた方がおいしいとでた。
Cは差が無く、Dでは生では古いほうが、ドレッシングすると新しいほうが高評価となった。ドレッシングすると差がなくなるならパリパリしていればよいのか。

  D1とD2で比べると、スティックでは差がでるが、ドレッシングでは差がなくなる。これでは、少し古くてもパリッとさえしていれば良い、ということになりかねない。一体どうすればよいのか。キュウリは進歩したのか。これは、これからの課題と思う。

 消費者が全て満足するものなど、できっこない。本当は何をたべたいのか。一般向けを狙うと、特徴のないものになりやすい。昔のキュウリには、良い呈味成分をもつものが多かったと思う。 
新鮮さはおいしさの決め手か
・A1:
12月7日
収穫
・A2:
12月12日
収穫
・B1:
・B2:
・C1:
・C2:
・D1:
・D2:

スティックと薄切りに
市販のドレッシングをつけた場合での
評価

 日本の漬物はすばらしい。乳酸菌やアミノ酸を生産してくれる。学生は、漬物好きと、漬物が無くてもよいに二分される。いま、漬物は不当に評価されている。その点を訴えていかないと、日本の食文化がなくなるおそれがある。
・・・・・・・・・・・野菜評価において考慮すべきポイント1・・・・・・・・・・・
  1. 野菜の消費者は、野菜好きな人と余り好きでない人がいる。
  2. 鑑別能力がある人とない人から形成されており、しばしば反対の価値観をもつ。
  3. 従って、平均値では両者の価値観が打ち消しあって、どちらつかずのものとなる。
  4. あまり好きでない人、あるいは鑑別能力のない人に合わせれば、品質は限りなく低下し、野菜好きの人の野菜離れを引き起こす。
  5. おいしさは、調理によって引き出される。
・・・・・・・・・・・野菜評価において考慮すべきポイント2・・・・・・・・・・・
  1. 野菜には生、加熱それぞれに向いたものがあり、同時に最適条件を満たすことは難しい。
  2. 野菜は、動物性食品と組み合わせることで、うま味が顕著に増強される。特に鰹節などのダシは重要であり、和食文化を振り返る必要がある。
  3. 野菜は無数の成分や特性からなり、一部の特性のみを強調して差別化しても、バランスを失う。
  4. 野菜は、消費者のニーズを満たすべく変化している。賢い消費者なくした、おいしい野菜はあり得ない。
  5. 自らの舌で味わい、批判力を持つことが大事。
  6. 野菜を通じて自給率を向上してほしい。
(以上 レポーター 鈴木 厚正氏)
【基調講演2】 「小売店頭より見た消費者の求める野菜品質情報について」
恵本 芳尚氏
((株)イトーヨーカ堂 食品事業部青果部チーフバイヤー)
【イトーヨーカ堂は2002年来生産者がこだわって作った安心・安全野菜を「農ぶらんど」として展開し、また、当時からネギなどの中国輸入野菜の残留農薬問題など、消費者が関心を持ち始めた時期で、現在では「顔の見える食品」ブランドが定着した。消費者に認められた契約生産者数や販売量が大きく伸びてきている背景や販売戦略など、大型量販店の最先端をリードする恵本氏に講演を依頼した。】
日本のマーケット現状分析
 1990年以降、量販店の業態が非常に伸びた。大量に仕入れて販売し、コストを下げる事によって、「値頃な価格で、品質の良いものを提供」することができた。
人 口 の 形 成
1世帯当 世帯数 単身世帯の構成
1975年
3.5人 3,4千万 若・独身者が多
2005年
2.518人 約5千万 高齢者が多,
65才以上2千万人

 しかし、現在は「ほしいものしか買わない」という時代になり、量販店、百貨店は厳しくなり、いろいろな販売形態がでて、コンビニを含めたホームセンターやドラッグストア、ディスカウントストアなどが拡大しつつある。いま伸びている業界は、インターネット販売と雑誌・テレビ等の通信販売で、コンビニと同等の売り上げとなっている。

昔は、大量生産・大量販売で平均的な家族を対象に商品開発・販売(大型店舗)

現在は、ターゲットを分けて、該当する消費者対象に商品開発・販売(店舗の多様化)
セルフ店頭販売では→店頭で消費者に説明し、販売する必要が高まっている。
どこでどのようにして生産されるか、栽培のこだわり、調理の仕方の提案など
野菜は情報(安心・安全)、視覚・鮮度感・おいしそう・価格で選ばれる。

 野菜は、日々の産地・品質・形態が変わり、いろんな特長を消費者にその良さを伝えながら販売しなければならない。
生産者を指定できる 
―顔の見える野菜・果物の特長は「安全性と品質とおいしさの提供」−
 ポジティブリストの施行以降、生産者の意識が高まり、「顔の見える野菜をやりたい」という生産者が増えた。そのためには、いろいろな審査を受けるわけであるが、この仕組みの第一の特徴は、われわれを監査する第三者の認証機関を置くことで、定期的にデータをチェックされることにある。産地では情報通り栽培履歴が管理されているか、農薬の散布が適正かなどをチェックしている。
 顔の見える野菜の特徴は、生産者個人を指定できる事であり、グループ認証ではないので、タマネギ1個、ジャガイモ1個がその生産者の商品となり、生産者の顔が消費者に伝わることにより安心感をもって食べていただける仕組みになっている。また、国産に限定していることで差別化ができる。
全商品にQRコード ―セルフ販売で消費者に多様な情報提供―
 日本の消費者はどうしても「価格」のほうを見られる方が多い。限られたチラシ紙面の中で詳細な情報、生産者一人の情報を出すことは難しい。2年前から携帯電話のQRコードを全商品に入れるようになって、飛躍的に情報の活用量が増えた。このピーマンは誰が作ったのか、レシピを含めて、品物の良さを伝えやすくなった。
チラシの効果 ―年間300億円の使徒―
 しかし、チラシをなくすと消費者がきてくれなくなるジレンマもある。ネットでも公開し、消費者の近くの店ではどういうものが売られているのか、チラシそのものが出てくるようになっている。「産地、農協を含め流通業者の方、小売業の三者一体」となって、「消費者に安心・安全、味を含めて多様な情報を伝える」ことによって、消費者から評価を頂き、購入して頂けるように心がけている。そういう意味で、「生産者の苦労が消費者にまで伝わる」、そういう商品作りを目指している。
伸びるカット野菜 ―安全な物を作る企業努力が必要―
 カット野菜は売り上げが非常に伸びた商品。しかし、ここ2〜3年は低迷している。アンケート結果では「中身が分からない」「どこの商品をどういう風に使っているか分からない」という不信感を持つ消費者が半分以上おられる。
 そこで、「カットした野菜も安全です」ということを前面に出した商品にした。カット野菜を「顔が見える野菜」にしてから、売り上げが2割伸びた。 

取り組み事例
 まだ、首都圏だけだが、昨年、12月からカットサラダとか、鍋用セットなど、野菜を切ってパッケージする商品を全て「顔が見える野菜」に切り替えた。5年間培ってきた同野菜の仕入れルートを使って、商品をカットし販売し、キャベツは○○産地、ニンジン、タマネギは○△産地と全部認識できる形とした。

 漬物やイチゴジャムなども生産者を指定品柄表示することで販売が伸びている。
伸びる要素は十分 
―消費額第一位・トマトの消費量は年間一人当たり9〜10s―
 世界で一番食べるのはギリシャの115sで、日本は1/10でしかない。逆に言えば、10倍の伸びる可能性がある。調理してこういうおいしい食べ方がある、特徴がある事などを含めて知らせることによって、商品の販売が伸びることもある。それが消費者に伝わらないと買っていただけないことになる。
もう一つ、野菜のおいしさ、品種特性を含めていろいろな提案をしないと、今の消費者には買っていただけない。
今後の生鮮野菜の消費動向 ―見通しは暗くない―
 これからの人口減少。「今の若者は野菜を食べない」。統計では30才以下は1,1万円ですが
それが、60才以上では2,5万円。今後、少子高齢化で全体で人口は減るが、野菜を食べる人は増加すると考えれば、生鮮物の未来はそれほど暗くはない。野菜や魚は消費が伸びるチャンスがある。
 逆に、加工品の未来は暗い。家庭で、自分でこだわって作って食べる人が増えるかもしれない。いま、食料需給バランスの変動によって、パン原料や加工品などの値上がりがある。これらは輸入のウエイトが高いからである。

 日本で唯一余っている「米」は高くならない。米は日本の主食だから、たくさん食べて消費しようとすることで「日本人の食生活」「食料の自給率」は大いに変わっていくと思う。一番良いのが自給率100%で、国産野菜を見直す良いチャンスと思う。皆さんも前向きに取り組んでいただきたい。われわれも国内の自給率を上げて。国産の良いものを、消費者にたくさん食べていただいて、日本の未来が明るくなるように努力したい。

今後の取り組み
 いま、食の環境は非常に厳しい。いろいろな法律、リスクを維持するために取り組みがある。GAP、環境問題、フードマイレージの低下など。
 通いコンテナを使用し、コンビニ弁当の残りをリサイクル、家畜飼料や堆肥として循環型農業を、社会的責任で構築しないと企業として成り立たなくなろう。生産者と消費者両方に支持されて商売をしていかなければと日々取り組んでいる。          
(文責 真柄 佐弘)
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