●「有名野菜品種特性研究会(インゲンマメ・メロン)」報告●
担当理事  栗山 尚志
【開催日時】
平成20年6月26日(木)  13:30〜17:00
【開催場所】
女子栄養大学駒込校舎5階 松柏軒
【参加者】
76名(食品加工・流通、種苗、市場、研究・教育機関、一般、報道)
【総合司会】
理事(顧問) 栗山 尚志
【進行】
理事 草間 壽子
【調理・開発】
副理事長 上原 悠子、副理事長 川村 玲子、理事 荒井 慶子
松柏軒 宮田 寛敬氏
開催の目的
 いま、農水産物すべてにわたり安全でおいしい品質基準が消費者の最も関心の高い事柄であります。農水省においても新鮮でおいしい日本の農産物を海外に輸出して「ブランド・ニッポン」の普及推進を政策的に進めております。
 しかし、おいしさとは誰でも知っているが、よくわからないものでもあります、それは、主観的なものであり、文化的なものであり、個々の意識が大きく介在する複合的なものであり、科学的な基準作りが各界において試みられています。
 「野菜と文化のフォーラム」では、この問題に迫るために、流通市場で有名な野菜品種を取り上げ、おいしさにかかわる様々な視点より「食べ比べ」を通して品種特性を明らかにしたいと考え、毎年「有名野菜品種特性研究会」を開催して参りました。
 今回は、インゲンマメ・メロンを取り上げました。「インゲンマメ」は近年、食味を重視した育種改良が図られており、今後消費の伸びが期待される作物です。「メロン」は消費が減少傾向にある作物ですが、食べごろ(適食期間)に視点をおくことによって消費拡大が期待できる作物と考えられます。
 多くの方々に参加していただき「食べ比べ」を通して情報交換がし易いものと考え企画いたしました。開催の趣旨をご理解いただき、各界の多くの皆様のご参加を期待いたします。
話題提供
  1. インゲンマメ
    千葉県農業総合研究センター 暖地園芸研究所 主席県研究員 香川 晴彦氏

  2. メロン
    財団法人 日本園芸生産研究所 常務理事 平林 哲夫氏
講演概要
おのおの作物の来歴、作物的特性と品種動向、生産地情報等の説明。
<インゲンマメ>
 インゲンでは生産者と消費者の求める品種特性について、消費者側は、(1)さっと茹でてサラダ感覚嗜好、(2)シャキシャキとした食感、(3)莢色が濃く料理の色添え、(4)栄養価が高いもの、(5)大莢の品種などを期待している。
 生産者側では、(1)曲がりが少ない、(2)耐病性・耐暑性がある、(3)収穫適期が長く収穫しやすい、(4)収穫が遅れてもすじが入りづらいものを期待している。
<メロン>
 メロンでは、その魅力と品種動向について講演され、消費者サイドからの課題としては、(1)品種特性が分からない(概してネット系志向が強く、区別がつけにくい)、(2)品質が不安定(当たり外れの差が大きい)、(3)収穫→追熟→食べ頃→過熟の時間経の品種間差が大きい、(4)適食期間が短いなどがある。
 果肉品質は収穫時期に大きく左右され、収穫適期の判定は生産者を、適食時期の判定は消費者を悩ませるが、成熟すると果皮色が変化する(黄変)優れた性質を持つものもある。香りのあるものは、概して店持ち性が劣るがこれらは果肉由来で、「果皮から発する」ものには期待が持てる。
 今後の育種目標として、多様な遺伝資源の再評価により、いろいろな外観や、スプーンやフォークで食べられるなどの新しい肉質、食べ方の開発や提案、総合的な食味の向上、適食期間の長期化、可食率のさらなる向上なども考えたいとした。

 

食べ比べ評価のとりまとめ結果の概要
 インゲンマメ5品種(食塩少量添加・蒸気加熱による塩ゆで調理)およびメロン7品種について参集者による食べ比べを行い、形質別に評価した。
 評価に配布された評価票記載の特性それぞれについて、インゲンマメ・メロンともに「優れていると判断した上位3品種に○印」をつけてもらった。
 評価票には性別・年齢の記載欄を設け、それらの評価との関連の分析を試みた。取りまとめの結果は以下のようである。

<配布した「試食判定アンケート」内容>

 

<食べ比べ評価のまとめ>

1.食べ比べに用いた品種 (  )内は下表における略称
(A) インゲンマメ (B)メロン
  1. いちず
  2. ビックリジャンボ (ジャンボ)
  3. 成平
  4. サクサク王子 (サク王子)
  5. モロッコ
  1. MK-M-180(MK-M)
  2. タカミ
  3. ミラノ
  4. マリアージュ(マリアー)
  5. マルセイユ(マルセイ)
  6. レノン
  7. クインシー

 

2.食べ比べ実施前に糖度計によって測定したメロン品種の糖度 (3果平均Brix.値)

1.MK-M-180(MK-M) 16.0 緑肉
2.タカミ 14.5 緑肉
3.ミラノ 15.3 緑肉
4.マリアージュ(マリアー) 14.8 赤肉
5.マルセイユ(マルセイ) 11.0 赤肉
6.レノン 16.3 赤肉
7.クインシー 16.9 赤肉
3.評価票に記載された○印数の形質別順位・品種名 (  )内は○印総数
(A)インゲンマメ
(B)メロン

 

4.性別の影響

 下記を除き、各形質の評価に男女間の差は認められなかった。
(1)
メロンの外観評価にあって、MK-Mとマルセイユを比べたとき、男性はマルセイユが、女性は、MK-Mの方が評価が高い。
(2)
メロンのうま味評価にあっては、ミラノとクインシーを比べたとき、男性はミラノが、女性はクインシーの方が評価が高い。
5.年齢の影響
 49才以下(33名)と50才以上(37名)に分けてみたとき、下記を除き、各形質の評価に年令間の差は認められなかった。
(1)
インゲンマメのうま味評価にあって、ジャンボとサク王子を比べたとき、49才以下はジャンボが、50才以上ではサク王子の方が評価が高い。
(2)
メロンの肉質評価にあって、ミラノとマルセイユを比べたとき、49才以下はマルセイユが、50才以上ではミラノの方が評価が高い。
(3)
メロンの総合評価にあっては、ミラノとクインシーを比べたとき、49才以下はクインシーが、50才以上でミラノの方が評価が高い。
6.その他
(1)
糖度計による糖度は、食べ比べでの甘さの評価と必ずしも一致しない。糖度が同じでも、質に差異があるものと思われる。
(2)
この度のインゲンマメの蒸気加熱処理法には、想定外ではありましたが不満足な点があり、品種によってはその優れた特性が十分には発揮されなかったことが危惧されます。
出品インゲンマメ・メロンの品種特性に関する説明
 出品各種苗機関により行われた。
謝辞
 インゲンマメ・メロンに関する最新情報を含めて解説していただいた講師と食べ比べ評価に参加いただいた各位ならびに食べ比べ材料を提供くださった種苗各社に謝意を表し、厚くお礼申し上げます。
以上
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