●「有名野菜品種特性研究会(サトイモ)」報告●
担当理事  吉岡 宏
【講演要旨】
  2)サトイモの品種と栽培について
 
埼玉県農林総合研究センター 園芸研究所 鶴ヶ島試験地
 
専門研究員 岩元 篤 氏
■サトイモの現状  

○作付面積
 1978年3.1万ha → 2008年 1.4万ha と30年間で 1/2に減少
 一時期中国など外国産の輸入が増えたものの、現在はその量も減少傾向で、栽培面積・生産量・消費も減少傾向にある。

○収穫量順
  @千葉県 A宮崎県 B埼玉県 C鹿児島県 D栃木県・・・・・

○サトイモの1人当たりの年間購入量
 2002年950g → 2009年750gに減少


岩元 篤 氏
■主なサトイモ品種

 食べる部分により以下の4種類に大別される。

○子芋用品種

 ・土垂(どだれ)…子芋、孫芋の数が多く、多収。芋は長卵形の芋で、肉質は粘性。葉先が長く垂れ葉柄と葉の付け根部分にアントシアニンが発生。主な産地 埼玉県・千葉県など

 ・石川早生…早生種で多収。暖地では7〜9月に出荷される。芋は丸く球形、肉質は粘性で淡泊。のどごしがよい。 主な産地 宮崎県・千葉県・九州や静岡など

 ・蓮葉(はすば)芋…主な産地 関東周辺など

○親子兼用品種 

 ・八っ頭…親芋と子芋が分球せず塊状。粉質でデンプン含量が多く食味が優れる。葉柄は赤茎でえぐみが少なく、ずいきや芋がらとしても食べる。主な産地 埼玉県・千葉県

 ・唐芋(とうのいも/別名エビイモ)…唐芋を土寄せして、親芋の茎葉を制限して親芋の肥大を抑制し、子芋を育て、エビのように曲げたものを特に「エビイモ」という。子芋、孫芋ともほくほくした粉質で、食味が優れる。 主な産地 静岡県・京都府など

 ・大吉(セレベス)…赤茎

○親芋用品種 

 ・筍芋(たけのこいも/別名京芋)…親芋の半分以上が土から出ていて、その姿が筍に似ている。草丈は2m以上に生育する。 主な産地 宮崎県

○葉柄用品種 

 ・蓮芋(はすいも)…青茎を生のまま食べる。茎の切り口に蓮のような穴がある。酢の物や汁の実、ツマものなどに使われる。イモは根の先端に小さく着生する。主な産地高知・福岡県

■サトイモのえぐみ
 概して青茎のサイイモはえぐみがある。これは蓚酸カルシュウムの結晶で、食べると結晶が口内の粘膜に刺さり、単にうがいしただけでは取り除けない。八っ頭や赤目はえぐみがなく芋柄やズイキとして食用に供される。蓮芋は青茎でもサトイモとは同属の別種で、えぐみがない。
■サトイモの作型


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■サトイモの栽培概要(埼玉県・土垂の早熟栽培例)
2〜3月   堆・厩肥、石灰を散布してトラクターで耕耘し、土作り。
3〜4月   ロープを張り、印をつけ、基肥を散布後、畝幅1〜1,2m・マルチ張り機で畝作り。マルチ穴あけ機で株間40〜45cm・深さ15cmに穴を開け、種芋の芽を上に埋め、かき板等で土を盛る。(種芋は40g以上のふっくらと形状の良い「孫芋」を使う)
6下〜7月中旬   マルチ除去、株間に追肥、土寄せ機で高さ15cm土寄せし、盛りあげる。
7下〜9月上旬   灌水。灌水で収穫量が増え、カルシュウム欠乏症(芽つぶれ症)を防ぐ。
9中〜12月下旬 鎌で茎を切り、トラクターに鋤をつけ土中を通して根を切り、株を浮かせて収穫する。早生の蓮葉芋は9〜10月、中生の土垂は11〜12月に収穫となる。
寒さ対策に、年内は畑に穴を掘り貯蔵し、順次出荷する。
■まとめ
 サトイモは日本において1番古く栽培・食用としてきた野菜(主食)の一つで、渡来してから日本各地に定着し、その地域の気候・風土に合った品種が選ばれ、各地域で独特の食文化を育んできた。年々需要が減じているが、各地域のサトイモをもっと食べていただきたいものである。
(文責 事務局 真柄 佐弘)
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