●「ピーマンフォーラム2005」報告●
担当理事 川口 和雄
−需給の現状を論じ、需要拡大の可能性を探る−
主催:野菜と文化のフォーラム 共催:日本農園芸資材研究会
平成17年6月22日(水)10:00〜16:30
女子栄養大学・香川記念館(東京豊島区駒込)
参加者94名(行政他16,JA生産者・経済連13、普及所4、流通4、食業界41、種苗9、報道4)
開催の目的
今日野菜を取り巻く環境は、品質的には「安全・安心・おいしさ」への高い関心が寄せられ、消費サイドでは健康面から野菜の重要性情報が氾濫しているが、野菜の消費減少には一向に歯止めがかかる気配はない状況にある。
かたや消費面では、国内においては生産者の高齢化による供給力の低下と需要形態の変化と相まって、輸入野菜はもはや輸入という表現で位置づける時代は去り、国内産地の補完的な産地としての位置づけが青果物調達業界には定着しつつある。
こうした流通環境変化はピーマンにおいても例外でなく、国産の供給量力は年々低下し、品種は多様化し、海外産地からの輸入は増加傾向にある。
このような需給環境の中で、需給に係わる方々がこの現状をどのように捉えているのか、多面的な立場から本音の議論を交わし、ピーマンに係わる課題を明らかにし、関係者への情報発信となり、ひいては栄養面・機能性面からも期待されている野菜「ピーマンの消費拡大」に結びつくヒントを見いだすことができればと願って開催する。
基調講演:
  1. 日本のピーマン需給の現状と野菜政策
    農水省生産局 鈴木 良典室長
  2. 期待されるピーマンの機能性について
    野菜茶業研究所 東 敬子室長
  3. 海外のピーマンについて
    (株)サカタのタネ 相原 悟氏
  4. 中華料理食材としてのピーマンについて
    麻布長江 長坂 松夫氏
昼食:
ピーマンの食べ比べ
(産地物、サカタのタネ、タキイ、トキタ各社から提供)
パネルディスカッション:
司会:日本農園芸資材研究会 川口 和雄
日本橋大増・料理長 横山 勉氏
キチントフードサービス代表 石田 等氏
JAしおさい青果物生産部会 山中 雅典氏
情報交換会:
(女子栄養大学・松柏軒)
報告
基調講演:ピーマンの消費は伸びていない。トマトのように糖度を上げるわけにはいかないが、ピーマンには他の野菜にはない優れた栄養価、機能性がある。この点をもっと消費者にアピールする必要がある。そのためには私たちがピーマンをよく理解し、特性を引き出す勉強をしなくてはならない。
  農水省より野菜政策の現状とピーマンの生産、消費、輸入状況の解説があった。一人あたり年間購入量は0.8sで、ここ10年間横ばいで推移している。平成16年度の国内生産量は作付け面積3,600ha、収穫量15万t、出荷量13万tで主産地は茨城・宮崎・高知県と続き、輸入量は1,000t程度である。
パプリカ等のカラーピーマンは2.31万tで韓国・オランダから増加傾向にある。国内でも宮崎、熊本県などからカラーピーマンも出回り始めている。特に完熟赤ピーマンでは未熟緑ピーマンと比べ期待される機能性成分が多い。具体的にはカロテン、カプサイシン、ビタミンC.Eの含有量が高く、癌や動脈硬化予防、老化抑制、美白作用などの効果について紹介された。
チャィニーズレストラン麻布長江の長坂氏は、世界でトウガラシやパプリカを含むピーマン消費量が多い「中国」「メキシコ」「トルコ」などの国に共通点として油を使って料理する文化がある。ピーマンを食べるとき、「油の使い方の加減をすることで」、また「ピーマンも食材の一つで他の食材との組み合わせ」で消費の発展性が広がり、香りが生きる。生産者と料理人の連携の中でピーマンの特性を生かし何が提案できるか考えてほしいと呼びかけがあった。

昼食会場:協賛種苗会社や産地より提供していただいた緑ピーマン、カラーピーマンの展示と揚げ浸し、マリネなどの料理の試食は大変好評であった。

パネルディスカッション:弁当を製造・販売する横山総料理長より弁当の食材として
利用が進まない要因として、「調理してから時間が経過すると鮮やかな緑がとんでしまう」などの指摘があった。また、周年販売されていることから「旬をアピールできない野菜」というイメージをなくする工夫も提案された。
生産者側・JAしおさい生産部会の山中氏から、年々産地の栽培面積を拡大し、現在春・秋二作穫りのためのハウス導入で、収穫量拡大を実施している栽培技術概要について報告があった。また産地でのピーマンの食べ方として「丸焼きして鰹節と醤油をつける」などの料理方法の紹介があった。「おいしい物は飽きない物」、単純にしておいしいからこそ飽きない物となる

 
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