@日本の農業の変化に伴って変わり得る
有機栽培の今後を考える上で、日本の農業に起きている変化に注目します。
現在、日本の農業従事者は65歳以上が2/3を占めており、この10年でこの人たちはやめていくだろうし、後継者を他の業種につけていることが多いのです。10年後、農家は1/10に減っていると予測されます。ただ、農地を編成し直して生産力を上げていくことは可能だと、農水省なども見ているのです。
現に野菜の栽培で、100〜200haの大規模農家が、ここ2〜3年でめざましく増える傾向があります。九州では休耕地の奪い合いといってもよい状況で、愛知界隈でも大変活発です。全国各地にそういう地域が出現しており、関東が最も動きが鈍いように見受けられます。
これまで、有機農業は生産者がリスクを負いながら努力してきましたが、今の価格ではあまりに低すぎて、報われません。しかし今後、価格が1〜2割高になるなら、リスクがあっても続けたいという農家が、例えば100haの中の20haを当てるという形で広がるのではないかと考えます。
日本の農家は利益を出すことに罪悪感さえ抱いているほどでしたが、今後は利益を出して再投資する経営を目指せるし、そこに有機も確実に組み込まれていくと思います。3〜5年後には充分可能性があると期待しています。
A日本には有機栽培の科学的な技術がある
農産物を効率よく生産し、利益を上げるには技術の支えが必要で、科学的な有機農業をこそ目指すべきでしょう。
そのためにはまず土作りの技術が必要です。土壌微生物によって作られたものを、植物は根から吸い上げて成長します。土壌微生物の生態や働きを科学的に学び、それを生かした土作りの技術を私たちはすでに実践しています。野菜の有機栽培では輪作がネックになりますが、輪作でもできる土作り、またそれに適した野菜の研究も必要でしょう。
一般に欧米の有機は、技術レベルは低いにも拘わらず、制度は立派で、自分たちのペースで世界をリードしています。それは、支援制度が日本とは決定的に違うからです。政治の場に出し、予算を使って有機農産物を買い支えることで、ヨーロッパの有機栽培はグンと伸びました。アメリカが農家にばらまいている補助金は日本円にして6兆円という大金で、それは農産物を戦略的に位置づけているからです。欧米の有機に多額な補助金が可能なのは、消費者の理解と支援がベースにあるからで、そこが日本との大きな違いでしょう。
2006年に有機農業推進法が成立し、有機の取り締まりがきびしくなる一方、予算が年間5億円程度付くことになりました。運用による効果を期待したいものです。
今後、農業が変わる中で、有機栽培がどう増え、社会的にどう評価を得ることができるのか、社会にどう役立つ農業形態にしていけるのか、まさに消費者がカギを握っていると思います。
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