●平成21年度地方野菜視察研修会報告●
担当理事:大崎 伸介、日原 幸子
協力:長岡中央青果(株)会長 鈴木 圭介氏
【研修目的】
長岡野菜は5年前の中越地震、前年8月に本会で視察しました。震災から5年、復興に向けた長岡野菜産地の力強い取り組みを見学したいと思います。そして、コシヒカリだけでない枝豆、巾着なす、れんこんなど新潟の秋を堪能したいと思います。
【期間】
2009年9月25日(金)〜26日(土) 1泊2日
【参加者】
25名(定員枠以上のお申し込みがありました)
【訪問地】
新潟県長岡市周辺の野菜産地
<2009年9月25日(金) 1日目>
 JR長岡駅前に午後1時集合、宿泊所のバスにて出発。天気は薄曇り。初日は農家の圃場を3カ所、長岡青果の自主農場、山古志の神社、復興状況を見学。

 最初の訪問先は、「長岡巾着なす」の生産者の小林幸一さんの畑。信濃川の河川敷にある「天然の造成地」。前回訪問した畑とは幾分離れた所にあった。本年は650本の苗を4月15日に定植。約1ヶ月ビニールトンネルを施した後、6月上旬から出荷開始。10月中旬まで続く。元肥の堆肥を入れた後は追肥はなし、水やりもなしとのこと。

●「長岡巾着なす」
 長岡の夏を彩る代表的な野菜。蒸かして食べるのが長岡では一般的。千両なすの2.5倍位の大きさの丸なすで、縦にしわが入るのが良いとされる(絞った巾着袋のように)。表皮の艶がないのも巾着なすの特色。

 千両なすの栽培に比べ、苗を大きくするのも大変であるし、受粉しても着果しにくい。収量は千両なすの1/3〜1/5と少ない。ある程度の暑さは必要だがハウス栽培では栽培不可。


「長岡巾着なす」の花と育ち始めた小さな実

生長すると巾着袋のように縦にしわが入る
●「肴豆、一寸法師(枝豆)」
 水田が広がる平地の圃場。生産者の中村文和さんが当日稲刈り作業のため、代わりにJA長岡の淡路さんよりご説明いただいた。ご厚意により畑で摘んだ枝豆を生のまま試食! 薄皮は柔らかく、豆そのもののよい甘さがあった。

 晩生の枝豆で、豆の味・風味に優れているのが特徴。収穫時期が秋の彼岸から10月の初旬までと短い。前回の訪問は適期ではなかったので今回はまさに「旬」。昭和45年頃、JAで噂になった在来種の枝豆を復活させたもの。一時期は味のばらつきがあったが、選抜を重ねようやく「昔の味」を戻しつつある。また、肴豆から「早生・小ぶりの豆」を選抜し、「一寸法師」と名付けた。茹で上がりが綺麗で、味にくどさがない。「肴豆」より収穫期は早く訪問した翌日で終了。

 どちらの枝豆も日が短く(短日)ならないと結実しない。早く播種しても育たないそうだ。
おいしい枝豆の大きさは、鈴木会長によると、「首都圏の豆は、莢の厚さが10mmくらいで大きな豆が莢にしっかり入っているが、新潟では8mm以下の小ぶりの豆が香りよく好まれる」。新潟の方々の枝豆に対するこだわりを感じた。一度に食べる量も一人丼いっぱいくらい、とのこと(その日の夕食に出された枝豆の量で納得?!)。


「一寸法師」の畑


たわわに実をつけた「一寸法師」

 

 旨い米が作られるところに旨い枝豆がある。粘土質に砂がまじっているような土壌で、水のコントロールがうまくいく場所が良いそうだ。圃場では一寸法師をそのまま生で食べた。莢が薄く実はほんのり甘い。地元の方々が愛する「くどくない美味しさ」なのだろう。

 平地にお別れをして、長岡中央青果の栽培圃場のある高台・関原台地に向かう。

 08年から同社の募集に応じた方々が50aの農地で野菜を栽培している。「巾着なす」の小林さんらを師匠に迎え、資材や肥料は会社負担。

 「越の風」という品種名のキュウリがたくさんなっていて、試食させて頂く。自根のきゅうりで曲がりやすい品種らしい。パリパリした歯触りで、風味も良い。

 ここで栽培された「体菜(たいな)」を三条市の漬け物業者に納入。漬け物22tが完売になった。そのほか「関白」という雪を被ると美味しさが増す品種の大根を、某居酒屋チェーンが4,000ケース買い受けた……等の話を伺う。

 信濃川をまたぎ、旧山古志村へ。

 山沿いの道へ入ると切り立った崖が迫りくる。真新しいトンネルや茶筒を重ねたような砂防ダムを通り、山古志の中心地へ。映画「マリと子犬の物語」の舞台になった集落、中山隧道の入り口を車上から見て、高龍神社へ。崖に建つ神社で商売繁盛、家内安全の神様。参加者のほとんどが急な石段を登って参詣したので、御利益も大きいだろう!


山古志村の風景

 今日最後の圃場見学は旧山古志村・南平地区で「かぐらなんばん」。生産者は畔上孝さん、小夜子さん。実は同地区は震災後に集団で高台に移転した。新しい畑は数年の時と畔上さんの思いが伝わってくるようなたたずまいがあった。700本の神楽南蛮が栽培されて、すでに来年用の種が吊し干しされていた。10月の末まで収穫が続く。


「かぐらなんばん」の圃場見学

●「かぐらなんばん(神楽南蛮)」
 遠目からはピーマンに似ているが、しわが寄りゴツゴツした形。肉厚でピリリとした爽やかな辛みが特長。旬は7月下旬から9月下旬。旧山古志村では、昔から自家用野菜として栽培されている。種も自家採取。

 畔上さんの圃場では、「体菜」も栽培されている。定植されて日数が浅いのでまだ小さな株だが、草丈が50〜60cmと成長し、初雪の便りの前には収穫し、漬け物になるとのこと。

 自家製の「かぐらなんばんの甘露煮」をご馳走になった。かぐらなんばんの種を取らずに、ザラメと醤油だけでこっくりと炊いたもの。始めに甘さ、後からピリリとした辛さが口いっぱいに広がり「また一口」と食べたくなる。(辛いものが苦手な人は無理?)。


「かぐらなんばん」の種とり


赤と青の「かぐらなんばん」

「かぐらなんばん」の甘露煮
 本日の宿、あまやち(尼谷池)会館に夕方5時40分過ぎに到着。
●夕食のメニュー「野菜と文化のフォーラム一行のためのスペシャルメニュー」
  1. 一寸法師(枝豆)(各人にお鉢いっぱい盛られて)
  2. 神楽菊ちりめん(かぐらなんばん、ちりめん山椒の炒め物に食用菊が和えられて)
  3. 蒸かしなす(長岡巾着なす、枝豆ピューレのせ)
  4. 地物ぜんまいの田舎煮(新潟特産の車麩、油揚げの煮物も)
  5. 山古志牛ひれ蒸籠
  6. ゆうごう吸い物(鯨入り)(ゆうごうは「若どりしたゆうがおの実」)
  7. ノドグロ風干し(日本海の高級魚)
  8. オクラ花の揚げ物
  9. 煮菜茶漬け(体菜の古漬けを塩抜きして打ち豆と煮たもの)
  10. 梨なす漬け物、神楽味噌、フキノトウ味噌
  11. いちじく薄切り、神楽杏仁


長岡の野菜をふんだんに使った夕食


お鉢いっぱいの「一寸法師」も!

 1.の「一寸法師」は、東京から来た者には十分美味しい枝豆だったが、鈴木氏によると「実が入りすぎていて」「だめだ…」、と翌日改めて豆を選別し、茹でて下さった枝豆を車中で頂いた。

 2.の「神楽菊ちりめん」は長岡青果の鈴木氏が発案されたもの。筆者の個人的感想では9.の「煮菜」に惹かれた。2.も9.もご飯がすすむ、まさに「米どころ」の料理であると思う。

(文責・理事 日原幸子)

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