●平成21年度地方野菜視察研修会報告●
担当理事:大崎 伸介、日原 幸子
協力:長岡中央青果(株)会長 鈴木 圭介氏
【研修目的】
長岡野菜は5年前の中越地震、前年8月に本会で視察しました。震災から5年、復興に向けた長岡野菜産地の力強い取り組みを見学したいと思います。そして、コシヒカリだけでない枝豆、巾着なす、れんこんなど新潟の秋を堪能したいと思います。
【期間】
2009年9月25日(金)〜26日(土) 1泊2日
【参加者】
25名(定員枠以上のお申し込みがありました)
【訪問地】
新潟県長岡市周辺の野菜産地
<2009年9月26日(土) 2日目>
 薄曇りから晴れの天気。朝食をいただいたあと、8時少し前に宿を出発。圃場を1カ所。信濃川の治水施設を見学。

 山古志では1カ所、直売所を見学。棚田の風景が美しい虫亀地区にある「多菜田(たなだ)」。08年の12月に地元の女性たちがオープンした食事処・野菜直売所。直売所の奥にはこざっぱりとして暖かな食堂がある。代表の五十嵐なつ子さんにお話をうかがうと「地元の食材をメインにしています」「まわりの方々に盛り上げて頂いています」。

 鈴木氏によると煮物が特にお勧めだそうで、機会があればこちらで昼食をとってみたい。

 山古志の山里に別れをして、長岡市の平野部へ。長岡・中之島にある「大口れんこん」の集荷場に到着。大口れんこん生産組合の組合長・高橋秀信氏に説明をいただく。当日はフォーラムの一行以外にも一般に開放されたイベントの日で、同氏のお話はヒートアップ。大口れんこんに対する深い愛情と熱意が伝わってきた。


宿の朝食


直売所で売られていた「かぐらなんばん」

 数分茹でたもの、茹でて醤油、七味唐辛子やキムチ味で和えたれんこんを試食。お土産にはお手製のれんこんチップスを頂いた。
●「大口地区のれんこん」
 長岡・中之島の大口地区で生産されるれんこん。県内消費がほとんどである。特徴はシャキシャキした歯触りと甘さ。今回見学と試食したのは早生種の「エノモト」であったが、10月下旬からは在来種の「だるまれんこん」が出荷される。

 レンコンは皮をむくと中は真っ白で肌目も細かくオールラウンドの調理に適する。99年の識菜会(野菜の食べ比べを行う研究会)で筆者も試食したことがある。「(東京には全く入って来ないけれど)、新潟にはこんな美味しいれんこんがあるのか!」というのが正直な感想だった。


長岡・中之島の「大口れんこん」

 れんこんの畑へ移動。イベント開催で地元のテレビのカメラも入っていてかなりの賑わい。お陰で生産者が多人数で収穫する模様を、間近で見学出来た。この時期は水温もまだそう冷たくはないだろうが、出荷の最盛期、雪をかぶったれんこん畑で作業されるのは厳しいことかと思われる。ただ、この大口れんこんの生産者は若い方が多く、作業風景からも「元気」をもらえた。

「大口れんこん」の収穫風景

若い生産者が多く、元気いっぱい!
 さて、バスは長岡の中心地を離れ信濃川沿いを走る。最後の訪問地・大河津分水資料館へ。研修会の案内にある短い説明に「新潟県農業の原点」とある。信濃川の度重なる氾濫・水害で、越後平野は甚大な被害に見舞われていた。この被害を食い止めるために、増水した水を日本海に流す施設。近代日本の治水事業。という説明も実際に訪れるとそのスケールの大きさに驚くばかりだ。

 資料館に到着して、まず館内を館長に案内頂きながら見学する。この分水が作られたのは日本海より最短の場所であった。治水事業は江戸時代から嘆願されていたこと、いったん氾濫すると農作物の被害にとどまらず家は浸かり、伝染病は広がり……と様々な展示がとても分かりやすい。資料館の屋上は展望台。この時からちょうど晴天となり、雄大な信濃川、分水の堰、付近の田んぼ、畑が一望出来た。

 新しい堰までバスで移動。魚道観察室があるというので降りてみる。分厚いガラスの向こう側に小さな魚たちがゆらり、ゆらり。不思議な光景である。表の階段状の魚道では、獲物をねらい、鳥が不動で待っているのがおかしかった。

 分水施設の付近は公園として整備されている。広場や体験水路などもあり、学校単位で子どもたちの見学が多いのもうなずける。

 昼食場所の寺泊へ。峠を越えて日本海を目にするとやはり感動的だ。晴天なので海が青く美しい。食後の自由時間で「魚のアメ横」寺泊をそぞろ歩き。午後2時に寺泊を出発し、JRの燕三条駅に2時40分過ぎ到着。一同で記念撮影のあと、解散となる。

 各人にお土産として「山古志こだわり屋」特製の総菜セット(味噌やうま煮)と、かぐらなんばんの3個が配られた。


寺泊での昼食

●アンケートと旅行全体をまとめて……
 「研修旅行で特に印象に残ったところ」というアンケートを参加者にお願いしました。
  • 今回の視察旅行では長岡野菜を4種類「長岡巾着なす」「肴豆」「かぐらなんばん」「大口れんこん」を見学したが、どれもこれも大変素晴らしい野菜であることが分かった。

  • 長岡野菜はここ数年で確固たるブランド化を築いていると感じた。

  • 出発時に数々の立派なパンフレットが配布された。某大手飲料メーカーのスポンサーが付いたものもあり長岡野菜の勢いが伝わってくる。この勢いが生まれたのも、「長岡野菜を愛し、作り、広める人たちがいる」「喜んで食べる人」がおられること。肴豆が店頭に並ぶのを楽しみに待っている人々がいるし、長岡青果の自社農場で栽培された漬け菜の加工品が昨年度はすぐに売り切れたそうだ。

  • その他、印象に残ったところとして大河津分水と旧・山古志村訪問を書いた方が多かった。山古志では、埋没したままの家屋や寸断された道路に心痛むものがあった。しかし、地元の主婦たちが立ち上げたお店(多菜田)で温かい交流を持ち、あまやち会館の館長のお話「崩れた山肌を草が覆っていくたくましい姿に励まされた」「山古志の人々は寄り添って生きている」に山古志の復興を心から感じたことだと思う。

  • 今回のツアーでは圃場の他、山古志村の震災跡地や大河津分水も見ることが出来た。両地を見たことで、人は自然の恵みを受けて農業を営み、食物を得てきたのと同時に、自然と闘っても来たのだと改めて実感し、自然に対する畏敬の念を強く感じさせられた。
 最後に、研修旅行を企画・案内、そして長岡野菜をふんだんに組み合わせたスペシャルメニューをご提案いただいた長岡中央青果(株)の鈴木会長と佐藤専務両氏に感謝を申し上げると共に、地域の宝「長岡野菜」が末永く守り育てられることを念じます。

(文責・理事 日原幸子)

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