タイトル<野菜の学校>
●「野菜を食べ比べ」て、美味しさの真髄を学ぶ●
江澤正平さんの『野菜の学校』 NPO法人野菜と文化のフォーラム
- 2005年 11月期の学習 -
日時:2005年11月5日 PM1:30〜 場所: 東京秋葉原・ 東京都青果物商業協同組合ビル8階 会議室
見てくれより“育ち”の良い野菜は旨い●今月の格言
『11月の食べ比べ野菜』 ホウレンソウ、キャベツ、ゴボウ
野菜は「食べ物」なけれど「植物」。その本質を学ぶことが、美味しい野菜を知る第1歩。
『野菜の学校』は「植物学」の講義から始まる。まずは“アタマを耕す”。
──講師は荻原佐太郎元千葉農業試験場長。
ホウレンソウ
アカザ科ホウレンソウ属。
原産地は西アジア。東洋種(日本種)は17世紀、西洋種が19世紀に日本へ渡来する。大正末まで日本種のみで、西洋種は普及しなかったが、1960年代に入り、食の変化に対応した、西洋種との一代雑種が開発され、周年生産を可能にし、1年を通して出荷されている。
生育適温は15〜20℃、25℃以上不適で、秋冬期の寒さに当ると甘みを増す。
キャベツ  
アブラナ科アブラナ属。ヨーロッパを原産地に、日本へは江戸期に伝来。原種は不結球タイプ。明治期になり結球タイプに変わり、大正期には民間育種家の手により、わが国独特の品種「秋播き冬春穫り」、さらに「夏播き冬穫り」が開発され、こうして、古代ローマ人に食用にされた最古の野菜の一つと言われたキャベツは、昭和期の戦中、戦後に発展する。生育温度5〜20℃。耐寒性で、高温時に病害発生するが、夏に高冷地、冬に平地を産地に代え、日本人には大事な食料になっている。日本では生食用だが、外国では温野菜利用。さて、葉は切って洗うか、刻んで洗うか? 旨さは前者に軍配。

ゴボウ
キク科ゴボウ属。ユーラシア大陸に野生種を見るが、食用は日本のみ。
中国では薬用にする。
その中国から平安時代に渡来し、日本では宮廷料理として貴ばれ、古くから愛好された野菜である。イヌリンやセルロース、リグニンの成分による効能が知られている。
根は、品種により異なり、30〜50p。粘土質の土に適し、酸性土壌に弱い。
 
「野菜の学校」の呼び物、“味の辻説法”・・・江澤正平さん、かく語る!
ホウレンソウは、近頃、サイズが小さい。大きく育ったものでなければ、旨くない!
20pで食べているが、30p以上のホウレンソウがホンモノ。アメリカでは50pだ。
これが美味しい“ヒミツ”です。 大きくなり過ぎたホウレンソウは、蓚酸(しゅうさん)が多くなる、という話をよく耳にするけど、これには作り方に問題がある。植物はもともと、種が子孫を残すため外敵から“我が身”を守る必要から、蓚酸、硝酸などの“毒”をもつ。これら含量の多少は肥料や土地条件などの栽培法に影響される。
これからの冬野菜は、“寒さ”に当たり旨くなる。とくにホウレンソウ・・・、そして、キャベツは“芯”こそ、一番の美味と知るべし。

「最終授業は「食べ比べ」── “利き味”はいかに?!
《キャベツ》=この時期より甘み増し、しゃきしゃき感の歯ざわりで生良し、また、煮付けても良し。
品種改良の発展で“甘み”が増えたとの声。
《ホウレンソウ》=エグミが旨さのじゃまをする。エグミ除去に品種改良を望む声。
旨いホウレン草の“秘中の秘”とはホレン草ならず“ホウレン木”にあり、と江澤正平先生曰く。
《ゴボウ》=旨さの決め手は歯応えと香り。良い歯応えと高い香りが美味の決め手になる、これに意見が一致する。本日の教室は、参加者の質問が多く、とりわけホウレンソウの“エグミ”に話題沸騰!。

今回の受講生30名。お世話をした人13名。調理指導・荒井慶子さん
【閑話休題】
東京青果個性園芸事業部の東海林邦子さんの、食べ比べ野菜の産地と市況の説明。
ゴボウは昨年に続き豊作、中国産はこの前の台風の被害があり作柄不良。
キャベツは関東近在物が10月上中旬の日照不足や台風の被害がありベストではなく、やや安値で推移。
ホウレンソウは10月上旬天候不良、中下旬以降高温ぎみで作柄良く徒長気味な生育をしている。
 
ゴボウ、キャベツ、ホウレンソウの品目一覧表 (17.11 供試野菜協力:東京青果)

品 目
産 地
品 種
種苗育成
備 考
ゴボウ 青森 十和田青果 柳川理想 柳川採種研  
  茨城 JA なめがた玉造(芹沢) 柳川理想 柳川採種研  
  中国   柳川理想 柳川採種研 ポリ袋入り
  茨城 JA 水戸 簡単 渡辺採種場 ごほちゃん
キャベツ 茨城 カルゲン会 初美 雪印種苗  
  埼玉 昔がえりの会 いろどり カネコ種苗  
  千葉 JA ちばみどりアグリタウン銚子 秋早生、青春、しずはまのいずれか   千葉エコ農産物
  東京 JA あおば石神井 YR藍宝 日本農林社  
  兵庫 JA あわじ島志知 グリーンボール サカタのタネ  
      とんがり 日本農林社  

 

 

 

新藍

タキイ種苗

 

ホウレンソウ

群馬

JA 佐波伊勢崎さかい野菜センター

パレードほか

サカタのタネ

 

群馬

A 佐波伊勢崎さかい野菜センター

まほろば

サカタのタネ

北風の恵み

 

茨城

健農うまか

マーメイド7

渡辺農事

 

 

埼玉

JA いるまの

プリウス、サンピア

カネコ種苗

菜色美人

 

岐阜

アクト

 

 

 

ゴボウ  
ゴボウを野菜として利用するのはわが国の独特の文化である。耕土が深く排水の良い圃場で栽培される。日本の収穫量は約17万tで、最近の輸入物は中国産がほとんどで6〜8万tにもなる。
今回は同一品種で国内2産地と中国産を食べ比べて見た。味の評価は市場価格の差(s単価 日本産/中国産=250円/100円)でもあった。中国産は低評価であったが、今年の生産環境が良くなかったことも原因していよう。短めのサンプルは最近流行のサラダ用途も目的とした極早生種で、今回の調理法では生食が無く評価が困難だった。
ゴボウの食べ比べでは香り(臭みでなく風味)・肉質が柔らかい・甘さがあるなどが評価された。
また、ゴボウのレシピ13種が荒井慶子さんから紹介された。
キャベツ
 
キャベツは気温が下がってますますおいしくなってくる。
生食では、いわゆる「寒玉」と呼ばれる葉質が硬くよく締まって、主に業務用に利用されるものより、春キャベツ系の柔らかい葉質、淡い色択、香味、甘味の評価が生食では高かった。
これらはわが国の独特の品種改良の成果と評価される。特に新品種「とんがり」は評価が高かった。
茹でた場合は評価が分かれ、味か浸みて歯ごたえがあったほうが良いとする人も多かった。
用途別に品種の使い分けがされていて、生と加熱用品種の差があることがわかった。
ホウレンソウ
 
ホウレンソウは関東近在物のみ。
病害抵抗性や晩抽性、安定多収性の改良目的で日本種と洋種の交雑からいろいろな品種が発表されているが、刻み葉、地際部の赤味など多少の日本種の名残を持つ物もあるが、お浸し食べ比べでは差がない。
ホウレンソウは病害のレース変化も早く、抵抗性育種の競争が激化しているが、食味の面もかなりの改良がされている。
食べ比べではえぐみについて女性は敏感であった。柔い、くせがない、えぐみがないことが評価された。品種、作型、栽培法、収穫サイズの大きさそして茹で時間などが検討課題。 縮み、寒締めホウレンソウについての質問があった。
(12月露地栽培のサンプルから)
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