●「野菜を食べ比べ」て、美味しさの真髄を学ぶ●
江澤正平さんの『野菜の学校』 NPO法人野菜と文化のフォーラム
- 2005年 12月期の学習 -
日時:2005年12月3日 PM1:30〜 場所: 東京秋葉原・ 東京都青果物商業協同組合ビル8階 会議室
後期が始まりました。江澤正平校長大いに語る!
「野菜をどう考えるのか」、この問いに正しく答えずして、真の野菜の美味しさは理解できず、人間は有機物しか食べられない。
植物は太陽、水、土などの無機物から、有機物を作る。白菜は白菜の種からしか生まれない。人間は白菜を作れない、ただ育てるだけ。農業が始まって、ほんの2万年ほどの歴史しかなく、日本には自生した野菜は極めて少なく、野菜は外来ばかりである。だから、自然条件に適合する性質は、重要なことなのである。
そこで野菜の旨さを見分けるには、「氏」と「育ち」が重要になる。諸君にはすでに言わんとすることが解るはずだが、「氏」とは自然条件のことだ。従って、栽培技術が「育ち」ということになる。もう大体のことはわかるな、日長で異なる品種の作型こそ、旨いか不味いか、その原因になるということだ。もちろん、土作りはそれに影響することはいうまでもない。
さて、そこで冒頭の問いもどろう。野菜をどう考えるか。だが、わしがいつも口をすっぱくして言ってるように、野菜には「植物」と「商品」、そして「食べ物」という3つの顔がある。諸君には、野菜と果物の生長の違いが解かるかな? 果物は美味しくなってから食べるが、野菜は開花し、その後に実をつける以前に食す。そうするとどうなる? 野菜は食べられないように身を守る。子孫を絶やさないための自己防衛だが、つまり、それが毒をもってする、ということになるわけである。毒草というのは薬草でもあるのだが、野菜は蓚酸、硝酸などの苦味で外敵から己を守る。苦味、辛味をもってそれを為すのだ。
それに較べて、果物は美味しく食べて後には種が残る。美味しければ美味しいほど、種が残るというわけだ。子どもの野菜嫌いも当たり前なのだ。
それではなぜ、若者は野菜を食べないのか? それをはっきりしておこう。わしは野菜の旨さを知らないからなのだ、と言おう。そこで重要なのは、「商品」としての野菜の顔である。流通業者が食べ頃はもちろん、消費者の望んでいる品種にも応える必要がある。70日、80日に生長したホウレンソウが、20日で収穫したものより、しかも冬場に旨いのは自明のことなのだ。このように旨いといえるものを「食べ物」として見て、作る側、売る側に努力があるのか・・・ここのところを切に望む。使用価値があれば、お金は後からついてくる。金儲けが先では野菜の消費量は増えない。
野菜をどう考えるか。このことをアタマに置きながら、ベロ(舌)メーターを上げてほしい」。
野菜には植物、商品、食べ物の3つの顔がある●今月の格言
『12月の食べ比べ野菜』 ネギ・ハクサイ・タマネギ
野菜は「食べ物」なけれど「植物」。その本質を学ぶことが美味しい野菜を知る第1歩。
『野菜の学校』は「植物学」の講義から始まる。まずは“アタマを耕す”。
──講師・荻原佐太郎元千葉農業試験場長のお話。
ネギ
金沢で生まれた加賀群、東京・江東区千寿を発祥地とする千寿群、京都生まれの九条群に大別される。前者2群は白い葉鞘部を食べ、九条群は葉を食す。 原産地は中国で、紀元前から栽培する。
日本へは奈良時代に朝鮮を経て伝わる。中国から16世紀にヨーロッパへ伝わり、ヨーロッパ原産のリーキ(西洋ネギ)を産する。
初期生育が遅く、長期間の栽培を要す。5〜12ヶ月。ユリ科ネギ属。
ハクサイ
アブラナ科アブラナ属。
中国を原産地に、カブとツケナの交雑種。
冷涼な気候に適し、60〜80日の生長で早い。秋冬穫りが主な作型。
高冷地では春夏穫り、平地は春穫りもある。
タマネギ
ユリ科ネギ属の草本で肥大した鱗茎を食用にする。
中央アジアが原産地で、紀元前にエジプト、ヨーロッパに伝わり、17世紀にアメリカ、19世紀に中国に、日本へは明治以降である。
収穫時期は品種により異なり、貯蔵性も高く、周年出荷される。
今回の受講生31名。お世話をした人8名。調理指導・荒井慶子さん
【閑話休題】
恒例により、東京青果個性園芸事業部の東海林邦子さんが、食べ比べ野菜の産地と市況の解説。
今回の利き味に出品されたネギ・ハクサイ・タマネギの品目一覧表
(17.12 供試野菜協力:東京青果)
品 目
県
産 地
品 種
種苗育成
備 考
ネギ
栃木
JAなすの大田原
秀逸
武蔵野
軟白ネギ 白美人
群馬
JA甘楽富岡
下仁田
サカタ
北風の恵み
埼玉
葱茂
元蔵
武蔵野
千寿ねぎ
千葉
JAちばみどりそうさ
夏扇
サカタ
愛知
JAあいち北布袋
越津ねぎ
埼玉
トキタ農場
なべちゃん
トキタ
赤ネギ
埼玉
トキタ農場
あかひげ
トキタ
ハクサイ
茨城
県西VSF
オレンジクイン
タキイ
オレンジ白菜
茨城
茨城はくさい
霜降りはくさい
オリジナル品種
茨城
JA北つくば結城
黄ごころ
タキイ
菜黄味
茨城
JA北つくば結城
秋理想
日本農林社
ミニ白菜
茨城
北浦みつば出荷組合
娃々菜(わわさい)
トキタ
タマネギ
北海道
グリーン情報(北見 林氏)
金剛
佐々木種苗店
在来種
北海道
味じまんグループ(宍戸富一氏)
T808
北海道
JAきたみらい
北もみじ2000
七宝
在来種
北海道
JAあわじしま
もみじ3号
七宝
米国
(白瀬ナナカシ)
タマラ、デイトナなど
名物授業は野菜の「食べ比べ」──“利き味”タイム!
五感に、第六感もフル稼働して全神経を集中!
《ハクサイ》は煮て、生で、《ネギ》は焼き、煮る、刻んで生で、《タマネギ》は煮て、晒して。奮闘の「食べ比べ」。
おまけ:広島菜など 我こそはと、舌に自信の“味人“よ、「野菜の学校」にお出かけあれ!
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