●「野菜を食べ比べ」て、美味しさの真髄を学ぶ●
江澤正平さんの『野菜の学校』 NPO法人野菜と文化のフォーラム
- 2006年 3月期の学習 -
日時:2006年3月4日(土) PM1:30〜 場所: 東京秋葉原・ 東京都青果物商業協同組合ビル8階 会議室
学ぶべきは目と耳にあらず「舌」にあり●今月の格言
『3月の食べ比べ野菜』 トマト・レタス・イチゴ
野菜は「食べ物」なけれど「植物」。
その本質を見極め、美味しさ知る。
『野菜の学校』は「味の説法」と「植物学」の講義と“百聞は一味”を教える『食べ比べ』体験!
“味の説法”・・・江澤正平さん、かく語る!
「わが人生80年余、ひたすら野菜の“美味い、不味い”を探求してきた。
いま改めて、“味”とは何かを考えてみると、味覚の初体験は母乳である。母乳によって、この世で最初の味を体験するのである。母からもらう乳の味が、われわれ人間が“味”を知る最初である。上手いことすると“味をしめる”と言うが、このときに美味い味を知るのである。つまり、この世に誕生したとき、母親から“醍醐の味”を授かるのである。生まれて初めての“食事”になる母乳は、“旨い”のである。なぜならば、赤ちゃんは“不味い”となれば飲まないだろう。実に明解な答えではないか。
つまり、“旨い”から口にしたのである。この“旨さ”を“舌が感じた”から、生きることができたのである。
人間の長い歴史の中で、われわれは言葉を学んできた。その言葉を通じて、あれは美味い、これが不味いと目と耳で確かめている。しかし、ほんとうに確かめるべきは“舌”である。生命を守る“舌”であるのに、なんと、愚かなことと思う。今からでも遅くない。味覚を学
──講師・荻原佐太郎元千葉農業試験場長のお話。
トマト2(冬春トマト)
昨年9月期に続き2回目の講義。
今回は冬春期のトマト。この時期は低温弱光の気候により、生長が遅く、果実の成熟日数が長く、その分、内容成分が充実している。
樹上完熟果として出荷するが、自然条件は必ずしもよくなく、色、形状、食味に技術を要する。高糖度の栽培には、日照条件をよくし、肥料、土壌水分、根域を制限するなどして、果実の肥大を抑えて、完熟果にしていく。
糖分は果糖、ブドウ糖で、ショ糖は極めて少ない。
レタス2(冬レタス)
レタスも、昨年7月期の講義に続く2度目の登場。15〜20℃の低温性の作物だが、生長は早い。しかし、キャベツほどの耐寒性がなく、冬季には、しかし、低温障害にともなう病害を発生する。ハウスやトンネル被覆するなどして細かい栽培管理が必要になる。
イチゴ
バラ科の草本。近年のイチゴは初夏でなく春の果物になり、アメリカ、スペインに次いで世界3位の生産国である。
種子繁殖は可能だが、今日、苗による栄養繁殖である。花芽は低温・短日で分化し、高温・長日で開花する。
交配はミツバチで大果、美味をもたらせ、安定生産が図られている。
土壌栽培は高畝、水耕栽培は高段の栽培法で、生育適温は18〜23度。乾燥に弱い。
「食べ比べ」──“利き味”やいかに?!
「品種と栽培の違いによる味の差があるのか?」
「日照時間に味の差を感じるなら、冬季は太平洋側にあるものを選ぶのか?」
「イチゴは土耕栽培と水耕栽培に味の違いはあるのか?」
▼旨い、といわれる野菜は「土作り」がよくされ、栽培者の努力がある。生育期間が長ければ、それだけ“未熟”にならないので“旨く”なる。これは植物の生理である。(江澤先生)
▼レタスはどのように食べるのか、その食べ方はマヨネーズなのか、青じそか、胡麻ダレか、食べあわせも考えてみるのも大事。(江澤先生)
▼レタスは鮮度が要素。穫れたてなら1個を食べられのだから(真柄先生)
熱気の舌戦。産地別&品種別を舌で味わい、恒例の「人気投票」で締めくくる。
本日の受講生39名。お世話をした人9名。
調理指導・荒井慶子さん
【閑話休題】
『食べ比べ』前は、いつもの東京青果担当者より産地情報と市況解説。
トマト・レタス・いちごの品目一覧表
(18.3 供試野菜協力:東京青果)
品 目
県
産 地
品 種
商品名
備 考
トマト
愛知
愛知経済連渥美伊良湖
レディーファースト
愛知
JAひまわり
桃太郎ヨーク
佐賀
JA佐城川副
サンロード
光樹
茨城
協和園芸開発
自家採取
美味
中玉トマト
カゴメ
ラウンド
こくみ
ミニトマト
群馬
トキタ
サンチェリープレミアム
レタス
栃木
JAおやま
ブリザード
千葉
JA安房かんべ
ジョイグリーン
静岡
JA遠州中央
菊川103
千葉
カズサレイクファーム亀山
ロメインレタス
東京
足立青木農園
ピンクロースター
千葉
JAちばみどり飯岡
フリルレタス
ちば
トキタ
美味レタス
いちご
長崎
JAなんこう
さちのか
佐賀
JA佐賀東部みやき
さがほのか
福岡
JA福岡八女
あまおう
熊本
JA球磨
ひのしずく
群馬
JA利根沼田
とちおとめ
茨城
ステビア
あすかルビー
おまけ
新潟
長岡中央青果(株)
(雪中ダイコン)
甘味
トマト
ゴールドスペックのある果実は、前述の「美味しくなる条件」から外れた分だけ糖度が低いトマトである。供試トマト中高糖度トマトは協和・自家採種のもので締づくりされた割には大玉で味が濃い。でも価格も2倍と高い。経験によればBrix1上げると収量は20%減収(8段栽培の場合)することも知ってもらいたい。
トマトはナス科植物。この科に属する野菜は油との相性が良いことを、以前本会のシンポジュームで学んだ。加熱・油漬け料理トマトはわが国では余り一般的でなく、今後加熱料理に適する品種が望まれる。その品種特性は何か? また、トマトも食材の一つとすれば、他の食材との組み合わせによっては、必ずしも高糖度や完熟果が優れているとは思えない。
レタス
最近のレタスは葉重型の結球の緩い早生品種が好まれる。よって玉を持ってみて軽い物が中心部まで緑が濃く品質が良いとされる(江澤氏談)。また、美味タスのように炒めて利用する品種も登場し、今後の需要拡大が期待される。
いちご
栽培の時期により品種の評価が大きく変わる。栽培の末期になったものはやはり美味しくない。本日は「ひのしずく」が圧倒的で「さがほのか」、「あすかルビー」の評価が高かった。品種がいつも万能ではない。やはりその品種の栽培状況を消費者は知るべき。
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