●「野菜を食べ比べ」て、美味しさの真髄を学ぶ●
江澤正平さんの『野菜の学校』 NPO法人野菜と文化のフォーラム
- 2006年 4月期の学習 -
日時:2006年4月1日(土) PM1:30〜 場所: 東京秋葉原・ 東京都青果物商業協同組合ビル8階 会議室
匂い・香りも味である●今月の格言
『4月の食べ比べ野菜』 春キャベツ・エンドウ・ソラマメ・インゲン
野菜は「食べ物」なけれど「植物」。
その本質を見極め、美味しさ知る。
『野菜の学校』は「味の説法」と「植物学」の講義と“百聞は一味”の教え『食べ比べ』体験!
“味の説法”・・・江澤正平さん、かく語る!
「前月の説法では、人間の長い歴史の中で、われわれは言葉を学び、その言葉を通じて、あれは美味い、これが不味いなどと“目と耳”で確かめていたが、しかし、ほんとうに確かめなければならないのは“舌”であり、味覚を学べ、と。“見た目”と“聞いた耳”ばかりの味は本当でなく、したがって、自らの“ベロ(舌)メーター”をしっかり身に携えよ!そう述べた。
さらに、“旨い”と感じた記憶は残り、“味の記憶”をたどることが可能なのだ、とも述べた。そして、今月はもう一つ大事な“味”の要素を付け足そう。“匂い”である。蓼食う虫も好き好きと言うが、あの匂いが大好きというのもあるように、“匂いも味の内”と心得るべきである。
たとえば特産クサヤは、あの匂いあっての旨さである。美味しいインゲンには独特の匂いがある。この匂いが野菜の“個性”なのである。個性のある野菜は旨く食べることができる。 個性のある野菜を選択できる食生活は豊かだ。そういう野菜のある世の中こそ、素晴しい世の中なのである」
──講師・荻原佐太郎元千葉農業試験場長のお話。
キャベツ2(春キャベツ)
秋播きで年内定植し、越冬の後、春に結球するところから春玉とも呼ばれる。マイナス5度に耐える低温性だが、冬季に生長するためには5度以上のところが望ましい。温度と土壌水分を要し、水田裏作に適する。春キャベツにはゆるい巻き、内側の鮮やかなグリーン、やわらかな葉などの特長があり、生食向きとして高い人気を得ている。
9月のは種、11月の定植、4月の収穫。
エンドウ(豌豆)
マメ科エンドウ属。原産地は中央アジアから中近東地域。古代エジプトのツタンカーメン王の王陵を発掘した時、エンドウマメを埋葬品の中に発見されたほど古い栽培歴だが、日本には穀類が10世紀ごろ、野菜としては江戸時代で、一般に普及するのは明治時代である。若い莢を食べるサヤエンドウ、未成熟の実を食べるグリーンピース、莢用品種に絹莢が知られるが、最近、実も莢も食べるスナップエンドウがある。
低温性で、生育温度0度から28度位がよく、高温には枯れる。
10月中旬に種子まきをすれば、翌年5月頃に収穫期。
ソラマメ(蚕豆・空豆)
マメ科ソラマメ属。名の由来は蚕がつくる繭の形に似ているとか、莢が空に向かって実るとかいわれる。原産地は中央アジア、地中海地方。江戸初期に書物に記載を見るが、明治以降に欧米系品種の導入により一般化。
低温性。露地栽培のばあい、10月に種をまき、11月に定植、翌年5月に収穫。
インゲン(菜豆)
マメ科インゲン属。原産地はメキシコ南部、中央・南アメリカ地域。中国から帰化した隠元禅師(江戸期)によってもたらされた有名な話として伝えられ、ヨーロッパには17世紀に全域に広がった。
多くの品種は、完熟豆を乾燥させて、煮豆、甘納豆などの利用や、若い莢を利用する野菜用に分けられる。
種子、品種ともほとんど外国産であり、ハウス、トンネル、露地栽培の周年出荷されている。中温性で、適温20度。
酸性土壌に不向きで、マメ科の中では多肥栽培。
「食べ比べ」──“利き味”やいかに?!
「インゲンとササゲは違うマメですか?」
「莢の中にある美味いマメを見分けて選ぶコツはありますか?」
「マメの調子法?」
▼インゲンとササゲは植物学では違う。(荻原先生)
▼マメは違うのだが、地方によっては同じマメとして呼ぶところもある。長野県にモチササゲというインゲンがあるが、長野県の農家にしかないが、これは美味い。ついでに言えば、外見の悪いカスリインゲン(岐阜・高山産)があるが、茹でて最高の味になり、通称“湯上り美人”の称号をもつ。見てくれよりも旨いものは残さなければ(江澤先生)
▼触ってみて、マメがわかるぐらいが食べごろ。見た目にマメの存在を感じるときが美味い(真柄先生)
▼茹でる水量はヒタヒタで、蓋は閉めっぱなし。葉ものは逆に、水量はたっぷりです。(荒井先生)
産地別&品種別に充分に舌を鍛えて、恒例のそれぞれの「人気投票」で締めくくる。
本日の受講生22名。お世話をした人8名。
調理指導・荒井慶子氏
【閑話休題】
『食べ比べ』前は、いつもの東京青果(株)東海林氏より産地情報と市況解説。
春キャベツ・いんげん・えんどう・それまめの品目一覧表
(18.4 供試野菜協力:東京青果)
品 目
県
産 地
品 種
商品名
備 考
春キャベツ
茨城
しおさい農協
金系201
春キャベツ
兵庫
あわじ島農協
三春
〃
千葉
ちばみどり農協アグリタウン
金系201
〃
銚子産
神奈川
三浦市農協松輪
金系201
〃
本春系
いんげん
千葉
安房農協富山
鴨川グリーン
グリーンタッキー
沖縄
沖縄県農協
ビックリジャンボ
ジャンボいんげん
えんどう
愛知
豊橋南部
紅姫
きぬさやえんどう
さや
愛知
豊橋南部
ニムラサラダスナップ
スティックさや
さや・実
静岡
トピア浜松農協
砂糖えんどう
砂糖えんどう
さや・実
鹿児島
南さつま農協枕崎
ミナミグリーン
ミナミグリーン
実
和歌山
みなべいなみ農協
うすいえんどう
うすいえんどう
実
そらまめ
鹿児島
いぶすき農協
陵西
そらまめ
春キャベツ
キャベツは北欧で作られた野菜。春キャベツはわが国独自の作型で、品質も好みの軟らかい葉質で、これらは育種者の努力によるもの。産地の分布はいずれも海岸に近いところとなっていると講義。
金系201はこの作型の主力品種で永年のベストセラー種。レタスに近い形状で柔らかいことが特長であるが、まだ最盛期にはなっていない。
三浦産は本春(ほんぱる)キャベツとして特に有名で、会場の食味評価(生食での葉質の柔らかさ、甘さ、キャベツらしい香りで)は圧倒的に高い。価格も30〜40%高め。
しかし甘さに関してはむしろ冬系のほうが勝る。関東では生食用で柔らかくて香りのよいもの、関西では加熱料理用が多く、自ずと葉質の硬い物が好まれるようだ。
当日は育種の専門家が見えられ特別のコメントが得られた。
豆類
男性はどちらかというと豆類のにおいが嫌いのようで、彼氏に食べさせる最初のメニューとして「豆ご飯」はよした方がよい(江澤氏)。インゲンのにおいは好き嫌いがある。料理は関西のほうが進んでおり、いろいろなレシピ・利用法がある。実・莢とも豆類は食べ方に地方色が色濃く残っている。
ソラマメに至っては、現代風にオーブンで温度を調節して20分でOKという簡単料理も紹介。
また、荒井氏により本日供試野菜のレシピが複数紹介された。
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