3、4に関しては、「がんばれば手に入る」レベルのものも入っています。また、そこでしか採れないといった場所とは結びつけず、その品種であればいい。基準がかなりゆるいと思われるでしょう。その理由は、追々ご説明するうちにおわかりになることと思います。
あいちの伝統野菜のイメージアップをはかるために、マークとロゴマークも作っています。マークを見ると、信長、秀吉、家康が大八車で伝統野菜を引いています。天下を取った優秀な3人が愛知出身であることをアピールしながら、宣伝に一役買ってもらっています。
愛知の特長は種苗会社が多いことで、県単位の数では日本一。そこで、伝統野菜の種を17品種出してもらっています。
また平成17年からは栽培指導も始めました。愛知県のHPの「つくっちゃおう」という項目に伝統野菜の作り方の紹介もあるので、ぜひご覧ください。
あいちの伝統野菜を知るHPとしては、以下の3つがあります。
- 愛知県:農産物や伝統野菜等の紹介(園芸農産課)
- 特定非営利活動法人 ジャパンフード協会:あいちの伝統野菜ブログ 他
- (社)愛知県漬物協会:守口大根(守口漬け)、かりもり(粕漬け)について紹介
あいちの伝統野菜は漬けものと絡んでいるものが多くあります。昔から愛知は農業が盛んで、特に広大な濃尾平野ではいろいろな作物が作られてきました。一方、お伊勢参りの伊勢地方もあり、お参りの帰りには何らかの土産が必要です。それで重宝されたのが、作物の種や漬けものだったことでしょう。
愛知は醸造文化も盛んで、酒屋が多い。大根もたくさん採れる。そこで酒粕を使った守口漬けや各種粕漬けができるのはごく自然の成り行きです。
こんな土地ですから、愛知では行き交う人に売る野菜を、また東京と大阪にはさまれた立地なので、ほしい所に売る野菜をと、ドンドン新しいものを作ってきました。
ところが、親の代では食べていた野菜を今は食べないという事態になっていることに気づきました。これではいけないと、平成14年から地元を見直そうという活動がスタートしたのです。その時点では、種はもうあちこちに流通していました。あいちの伝統野菜の4つの定義がゆるいのは、こんな背景があったということを、ご理解ください。
◆あいちの伝統野菜いろいろ
あいちの伝統野菜をご紹介しましょう。
・早生かりもり
漬けもの、特に奈良漬け用のうりです。果肉が固いので、しっかり長く漬けるのに向きます。うり類は一般に尻が太くなったりするのですが、これは頭から尻までスーッと同じ太さで、この地にしかないそうです。一説には秀吉が朝鮮から持ち帰ったとか。
・十六ささげ
つる性でさやの長さは30cmほどにもなります。夏の栄養をとるのに貴重な野菜でした。
・越津ねぎ
ねぎは関西は緑の部分、関東は白の部分が好まれますが、これは緑と白が半々で、両方とも使える利点があります。分けつ性が高く、やわらかく、鍋物には重宝されています。
・白花千石豆
つる性でやわらかく、独特な香気があります。あえものでいただきます。
・まつな
形が松の葉に似ていることからこの名前があります。
・愛知縮緬かぼちゃ
皮に、名前のとおり特有のひだがあります。近年のほっこりしたタイプとは違い、だしをきかせてうす味に煮る、料亭で上品にいただくようなかぼちゃです。
・愛知白早生たまねぎ
生で食べると大変甘みがあっておいしいたまねぎです。
・愛知早生ふき
もっぱらきゃらぶきにしていただきます。
・天狗なす
大きくて、そのままではグリルに入らない。丸ごとバーベキューなどで豪快に焼くか、輪切りでソテーなどにします。
・方眼だいこん
首は太く、先端にかけて細く曲がっています。曲がっているので栽培が大変。
・宮重大根
近年、全国に最も普及している青首大根の祖といわれている大根です。
・ファーストトマト
先の尖った形が特徴の一世を風靡した品種ですが、今はそのものはなく、フルーツトマトにその血が受け継がれています。
・知多3号たまねぎ
黄色の早生系たまねぎで、1号、2号もありましたが、現在は3号になっています。愛知には昔から、その温暖な気候を利用して大阪や東京に送るための野菜を冬に作りこむという体制があります。
あいちの伝統野菜としては、この他、五寸にんじん、早生とうがん、治郎丸ほうれんそう、愛知本長なす、八名丸さといも、大高菜、渥美白花絹莢えんどう、野崎中生キャベツ、愛知大晩成キャベツ、野崎2号はくさい、法性寺ねぎ、守口だいこん、青大きゅうりなどがあります。
ただ、東京まで来ているものは、愛知早生ふきくらいです。ぜひ愛知に来て、伝統野菜を食べていただきたいと思います。
◆「いいともあいち運動」で地産地消を進める
伝統野菜ではないのですが、今日はエリンギとヤナギマツタケをご紹介しています。エリンギの栽培に最初に成功したのは愛知なのですが、ほとんど知られていません。またヤナギマツタケの栽培は、昭和50年代後半から各県で研究がスタートし、愛知は、神奈川の58年に少し遅れて2番手で60年から栽培されるようになりました。
愛知では、キャベツにしろトマトにしろ、野菜は市場が求めるままにいかに安定供給するかを第一に進めてきました。しかし、もっと地産地消という面から見直そうという「いいともあいち運動」という取り組みも、平成10年からスタートしています。野菜に限らず愛知の農林水産業は大変豊かにバランスよく発展してきています。それを県民に理解してもらい、さらに応援してもらおうというものです。
シンボルマークを作り、愛知県産農林水産物の販売や利用に力を入れてくれる店のゆるやかなネットワークを築いて応援しています。現在、「いいともあいち」推進店は753店、その内販売店は606店、飲食店は147店になっています(平成23年4月現在)。
今日は、その内の1店、東京で初めて「いいともあいち」推進店として入ってもらった世田谷区奥沢のイタリアンレストラン「VICOLETTO」のオーナーシェフ・渡邊貴夫さんに、愛知野菜の魅力についてお話しいただきます。
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