・仙台曲がりねぎ
元々の産地名をとって余目ねぎともいわれますが、松本系1本ねぎに茨城の赤ねぎか山形の赤ねぎの血が入っているのではと見られています。この地は地下水が高いために栽培には向かなかったのを、「やとい」といって、水平に近い20〜30度に傾けて植え付けを行う新しい栽培技術を確立して栽培が広がりました。甘みとやわらかさが人気の、鍋物には欠かせないねぎです。近年出回っている曲がりねぎの多くはF1種で、宮城県としては機械化しようとがんばっているのですが、なかなか難しいのが現状です。
今日は、代々自家採種をしている関内さんという生産者の曲がりねぎ(これは小学3年生の社会科の教科書にも載っているものです)、F1種の曲がりねぎ、私が持参したもので在来種だけれども生産者が違う曲がりねぎを用意しています。
・赤がらからとりいも
さといもの葉柄は「ずいき」「赤がら」とも呼ばれます。宮城では、赤がらは、焼いて干したハゼでだしをとった雑煮には欠かせないものです。仙台近郊では、一般に葉柄を食べるための赤がらと、小いもを食べる青がらの両方を代々残してきました。葉柄をとるから「からとりいも」なんですね。青がらは山形の伝統野菜である土垂れ系の高級さといも「悪戸いも」では、とも見られています。
・仙台長なす
言い伝えでは、伊達政宗公が文禄の役で博多港に立ち寄った際に、藩士が博多長なすを食べ、あまりにおいしかったので持ち帰ったつもりが、違う種だったのではとあります。ただ、そのなすは8〜10cmの小さいうちならおいしいことがわかり、仙台長なすとなったというのですね。
他方、著名な農学者である青葉高先生によると、南部長なすから改良されたのではともいわれます。仙台長なすには2タイプあったようですが、現在の仙台長なすは細長くて曲がるタイプです。
仙台長なすの漬けものがよく知られていますが、実は地元産は少ないようです。
これらの他、宮城の地方品種として、仙台ほうれんそう、仙台大葉(大葉にら)、仙台黄(たまねぎ)などが、渡辺採種場の画像に保存されていました。
いずれにしろ、アブラナ科の野菜が純系を保つのは非常に難しいということもあり、宮城には野菜が残っていないのです。私たち種屋にとっても、伝統野菜は新品種を作っていくための大事な材料でしかないのが現状です。伝統野菜を栽培する農家を守るべき仕組み作りが急務だと痛感しているところです。
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