第2章 野菜のおいしさに関する検討結果の概要
2 分析型官能評価
 それぞれの野菜のおいしさに関わる評価項目を探るために,官能評価の各パネラーの総合評価と各項目との相関を求めた。総合評価には官能評価の平均と標準偏差を示し,総合評価と各項目との相関係数を別表にしめした。相関係数は一般的に0.4以上,0.7以下がやや強い相関,0.7以上が強い相関と言われているので,相関係数が0.4以上,−0.4以下のものセルに色づけした。
(1) きゅうり
  生…各項目の大項目との相関を見ると味の総合的評価で,K5はやや強い相関,それ以外は強い相関があった。テクスチャーの総合的評価でK4,K5がやや強い相関でそれ以外が強い相関であった。香りの総合的評価もやや強い,強い相関であった。しかし,小項目を見るとテクスチャーの小項目である果皮と果肉の硬さのバランスが全ての試料でやや強いから強い相関を示していた。味ではK1〜K4の試料で渋み・えぐみがやや強い負の相関を示し,ついで旨味・こく,甘味にやや強い相関を示した。
  塩もみ…大項目では生と同じ傾向であったが,外観とも相関が高くなっていた。小項目をみると果皮と果肉の硬さのバランス,シャキシャキ感との相関がやや強いから強いであった。続いてみずみずしさ,旨味・コク,甘みが各1試料を除いてやや強いから強い相関であった。
   以上より今回行なった実験では,きゅうりの評価を決めるのにテクスチャーの小項目である果皮と果肉の硬さのバランスが大きく関与していることが示唆され,味は一つの項目に絞れなかった。更に時期を変えての検討が必要と思われる。
(2) にんじん
  生…大項目との相関を見ると味の総合的評価で,全ての試料で強い相関であった。続いて香りが一つの試料を除いてやや強いから強い相関であった。小項目を見ると全ての試料で高い相関を示すものはないが,旨味・コクがC1,C5以外でやや強い相関を示した。
  煮物…大項目では全てと相関が強い傾向であった。小項目をみると全ての試料で相関がやや強かったのは味のなじみ・しみこみであった。歯触りはC6以外でやや強い相関を示し,特にC3,C4では強い相関であった。
   以上よりにんじんの生では,味の旨味・コクが若干関与していた。煮物で一番相関が強かったのは味のなじみ・しみこみであったが,これは味付けに関わるかと考えられる。それは,総合評価の平均で低かったC1やC6で共に0.6とやや強い相関で,味のなじみ・しみこみが不足との評価が関与していると考えられる。このC1は昔ながらのにんじんで,しっかりした味でないとなじみ・しみこみが悪いと捉えられたかと思われる。とすると,この評価項目は味付けで変化することが推察される。次に相関の大きかった評価項目は歯触りであり,加熱によるテクスチャーの変化の関与が大きいと考えられ,歯触りの評価の良かったC6を除いたC3,C4,C5が総合評価も良かった。
(3) ほうれんそう
  茹で…大項目との相関を見ると味の総合的評価では全ての試料で強い相関であった。テクスチャーもやや強いから強い相関であった。小項目を見ると甘味で全ての試料が高い相関を示した。
  浸し…各大項目との相関を見ると味の総合的評価でS6がやや強い相関以外は強い相関であった。テクスもやや強いから強い相関であった。小項目をみると全ての試料で相関がやや高かったものはなかった。味では甘味がS2,S4を除いてやや強い,強い相関があったが,茹でで見られたアクっぽさとの相関はS6にやや強い相関が見られた以外に見られなかった。これはアクっぽさの感じ方が弱くなったものと思われる。テクスチャーではすじっぽさ,ふっくらさで2試料を除いてやや強い相関を示した。
  炒め…各大項目との相関を見ると味の総合的評価でS6がやや強い相関以外は強い相関であった。小項目ではテクスの各項目との相関が弱くなっていた。味の甘味,アクっぽさは2試料を除いて相関がやや強く,アクっぽさは負の相関なのでアクっぽさの感じ方が強くなったためと思われる。
   以上よりほうれん草の茹では甘味が関与していた。この時期のほうれん草が甘かったこともあるやも知れない。また,総合評価の低かったS4,S5を除くとふっくらさとの相関もやや強かった。浸しでは,甘味,すじっぽさ,ふっくらなどが関わっていたが,強い相関でなかったので色々な要因が関わっているようであった。炒めでは甘味,アクが関わっているようであった。ほうれん草については,さらに検討が必要と思われる。
(女子栄養大学教授 松 田 康 子)
 


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