第2章 野菜のおいしさに関する検討結果の概要
6 野菜のおいしさに関する文献調査
 きゅうり、ほうれんそう、にんじんのおいしさについて科学的にどこまで解明されているか学術文献を調査した。
1.
きゅうり
   きゅうりは食感が重要な野菜である。食感の科学的評価法について、近年活発に研究されているが、測定値と官能評価の間の関係は明確にされたとはいえない。味について、グルタミン酸などうま味を有するアミノ酸含量が高いことが、野菜のおいしさに関係するという考え方もあるが、きゅうりでは貯蔵したものの方が、新鮮なものよりもグルタミン酸の含量は高く、これは当てはまらない。香りについてはスミレ葉アルデヒドとキュウリアルコールが重要とされるが、これらニオイ成分の生成量とおいしさの関係は未解明である。
2.
ほうれんそう
   えぐみやアクとシュウ酸の関係について議論が続いている。必ずしもシュウ酸の多い場合にえぐみやアクが強いとはいえず、シュウ酸のえぐみに関して、カルシウムとの沈殿生成に関係するという新しい考え方も提案されている。寒締めほうれんそうの甘味については、ショ糖の蓄積によると考えられている。一方、独特の苦味については、成分の同定がなされていない。食感や香りについては報告が少ない。
3.
にんじん
   海外での研究事例が多い。にんじんの甘さには糖の含量が関係しているようであるが、テルペン類や他の成分の存在が、糖の甘味を抑制しているようである。にんじんはストレスをうけると苦味成分であるメトキシメレインが誘導される。しかしながら、通常のにんじんでは本成分の含量は低く、にんじんの苦味はメトキシメレイン以外の成分によるものと推定される。にんじんを茹でると、ゆで時間に伴い軟らかくなる。このような軟化は機器測定によっても確認されている。香りについてはテルペン類の影響が大きい。
(野菜茶業研究所 堀 江 秀 樹)
 
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