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野菜における甘味増強の意味 |
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野菜嫌いの人を野菜好きにするために、甘味を強めることや、香りを弱くすることが手段として有効であるならば、薦められるべきであり、現在のにんじんが食べやすくなったために子供にも好まれるようになったのも事実である。しかし、問題はどのような人が、どれだけそれを望んでいるかである。図8-3は大学生159名のにんじんの特性に対する好みや要望度を7段階尺度で測定したときの、にんじんに対する嗜好度で群別し平均値で示したものである。 |
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図8-3 にんじんに対する嗜好度群別にみた好みと要望
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にんじんのにおいを弱くしてほしいと思っているのは嗜好が形成途上にある人だけである。また、にんじんの甘さが好きなのは、にんじんが好きな人であって、嫌いな人はその甘味も好んでおらず、もっと甘くしてほしいとは思っていない。生食についても同様である。回答者は女性が多かったので、好きな人はもっと甘くしてほしい傾向も見られるが、全体としてこれ以上甘くすることは少なくとも大学生の年代では望まれていないし、それによってにんじん愛好者が増えるとは予測できない。煮て食べるならば砂糖を加えればすむことである。さらに糖度を上げたいとすれば、何のため、誰のためかを考え直す必要がある。
同様のデータをほうれんそうについて図8-4に示す。ほうれんそうが好きな人は独特の風味を好み、アクやえぐ味はあまり気にしていない。葉の厚いもので、やわらかいだけでない歯ごたえも好んでいる。根の甘味を好むのもほうれんそうの好きな人で、もっと甘くすれば若干喜ぶのはほうれんそうが好きな人である。根と葉の甘味の強さが異なることによって、味の対比が引き起こされ、双方の味が引き立てられるのであるが、そういった認識はほうれんそうが大好きな人では僅かに窺えるが、そうでない人の反応はむしろ逆の傾向にある。
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図8-4 ほうれんそうに対する嗜好度群別にみた好みと要望
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いずれにしても、ほうれんそうをさらに甘くすることに努力が一局集中することや、アクやえぐ味を減らすために他の成分も減らし、葉を薄くし、生食用にも兼用できるようにすることが、食物の総摂取量が限られているなかでのシェア争いにおいて、本筋になりうるのか、それよりも、ほうれんそうらしさを大切にすべきなのかはこのデータからも明らかと思われる。 |