第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
U 分析型官能評価結果
1 きゅうり
(2) 結果及び考察
 
1) 官能評価
 
1.

きゅうり生

   官能評価の平均値を図T−1に示し,平均値の差の検定を表T−1に示した。(なお,平均値と標準偏差は別表2にしめした)
 総合評価はK2が一番高い評価であった。低い評価であったのはK5であり,K5はK1,K2,K3に比べて有意に低い評価となっていた。その理由はK5の外観が他と異なり,K1,K2,K3に比べ,外観の総合的評価が有意に悪く,果皮が有意にかたく,果皮と果肉のかたさのバランスが有意に悪いため,テクスチャーの総合的評価が有意に悪いことが総合評価にも影響しているようであった。K6も外観が他と異なっており,色が若干薄いことが悪い評価で,外観の総合的評価が有意に悪くなっていたが,果皮,果肉のかたさが有意にやわらかいと評価され,みずみずしさが有意に高く評価され,甘味がK1より有意に強い結果であったためか,総合評価では他と有意な差は見られなかった。
 K4は総合評価に有意な差は見られなかったが,苦味がK2,K3,K6に比べ有意に強い評価となっていた。甘味はK1が若干弱い評価で,K3,K6に比べ有意に低い評価であったが,きゅうり生ではK5以外に大きな違いは見られなかった。
2.
きゅうり塩もみ
   官能評価の平均値を図T−2に示し,平均値の差の検定を表T−2に示した。(なお,平均値と標準偏差は別表3にしめした)
 きゅうり塩もみは,総合評価を見るとK5以外はほぼ普通の評価であった。K5は生より若干ではあるが悪い評価になっていた。生と同様にテクスチャーについてはかたい評価であるのに加え,苦味,渋み・えぐみが強く評価された為と思われる。
   
 
図T-1 きゅうり生
 
表T-1 きゅうり生 平均値の差の検定
評価項目
組み合わせ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

K1とK2

      *     *                      
K1とK3
            *           *          
K1とK4
      * *   *                      
K1とK5
*   * *   * *   *                 *
K1とK6
*   * * *   * *         *          
K2とK3                                    
K2とK4                             *      
K2とK5 *   * *   *     *                 *
K2とK6 *     * *                          
K3とK4     * *                     *      
K3とK5 * * * *   *     *                 *
K3とK6 *   * * *     *                    
K4とK5     * *   *     *                  
K4とK6         *     *             *      
K5とK6       * *     * *                  
* P<0.05
   
 
図T-2 きゅうり塩もみ
 
表T-2 きゅうり塩もみ 平均値の差の検定
評価項目
組み合わせ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

K1とK2

                                   
K1とK3
      *     *                      
K1とK4
*   * *   * *   *                 *
K1とK5
      * *   *                      
K1とK6
* * *   * * *   *   *         *   *
K2とK3                                    
K2とK4 *   * *   *     *                 *
K2とK5         *                          
K2とK6 * * * *   * *   *   *           * *
K3とK4 *   * *   *     *                 *
K3とK5         *                          
K3とK6 *   * *   * *   *   *       *   * *
K4とK5 * * * * * *   * *                 *
K4とK6 *                   *              
K5とK6 * * * *   * * * *               * *
* P<0.05
3.
きゅうり生での保存比較
   官能評価の平均値を図T−3,図T−4,図T−5に示し,平均値の差の検定を表T−3に示した。(なお,平均値と標準偏差は別表4にしめした)
 K2,K4,K5ともに総合評価に有意な差は見られなかったが,K2,K5では若干保存していない試料の評価が高い結果であった。しかし,K4は保存した試料の方が若干高い評価であった。
 
図T-3 K2保存差による比較
 
図T-4 K4保存差による比較
 
図T-5 K5保存差による比較
 
表T-3 きゅうり生保存 平均値の差の検定
試料
評価項目
組み合わせ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
K2

保存無と有

                                   
K4
保存無と有
                            *      
K5
保存無と有
                    *              
* P<0.05
   
2) 物性
   破断強度解析で測定した結果より破断応力を図T−6に示す。果肉を見ると官能評価でかたいと評価されているK1が高く,一番やわらかいと評価されたK6が低くなっており,官能評価の結果とほぼ一致しているようであった。しかし,果皮ではK5が他よりかたいと評価され,ついでK1,K3で,一番やわらかいのがK6であり,官能評価で感じるかたさと機器で測定した破断応力,いわゆる破断に要する力が一致しないようであった。
 
図T-6 きゅうり 破断応力
   官能評価の結果を解析できる物性値を検討したところ,図T−7の破断歪率(試料の元の厚さに対する破断変形の比率)よりK1,K3,K5で破断するまで割合が高いことから力が加わっても破断しにくく,図T−8のもろさ応力よりK5が破断した後のもろさ点との差が大きいことより,噛み切る感が強く出たものと考えられる。このことは,波形自体(別表)を見ても,K5の果皮の波形が,破断した後の波形の降下が大きいことが他と異なり,食べたときのかたさの感じ方としてかたいとなったと思われる。
 
図T-7 きゅうり 破断歪率
図T-8 きゅうり もろさ応力
(女子栄養大学教授 松 田 康 子)


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