第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
U 分析型官能評価結果
1 きゅうり
(3) まとめ
   きゅうりのおいしさを決める要因を探るために求めた,各パネラーの総合評価に対する各評価項目の相関係数を表T−4に示した。
 総合評価には官能評価の平均と標準偏差を示し,各項目欄には総合評価と各項目との相関係数を示した。相関係数は一般的に0.4以上,0.7以下がやや強い相関,0.7以上が強い相関と言われているので,相関係数が0.4以上,−0.4以下のものセルに色づけした。
 
きゅうり生
   各項目の大項目との相関を見ると味の総合的評価で,K5はやや強い相関,それ以外は強い相関があった。テクスチャーの総合的評価でK4,K5がやや強い相関でそれ以外が強い相関であった。香りの総合的評価もやや強い,強い相関であった。しかし,小項目を見るとテクスチャーの小項目である果皮と果肉の硬さのバランスが全ての試料でやや強いから強い相関を示していた。味ではK1〜K4の試料で渋み・えぐみがやや強い負の相関を示し,ついで旨味・こく,甘味にやや強い相関を示した。
きゅうり塩もみ
   大項目では生と同じ傾向であったが,外観とも相関が高くなっていた。小項目をみると果皮と果肉の硬さのバランス,シャキシャキ感との相関がやや強いから強いであった。続いてみずみずしさ,旨味・コク,甘みが各1試料を除いてやや強いから強い相関であった。
 以上より今回行なった実験では,きゅうりの評価を決めるのにテクスチャーの小項目である果皮と果肉の硬さのバランスが大きく関与していることが示唆され,味は一つの項目に絞れなかった。更に時期を変えての検討が必要と思われる。
 
表T-4 官能評価の総合評価と各項目の相関(きゅうり)
試料 総合評価との相関係数(r値) 総合評価
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 平均 SD
K1
K2
K3
K4
K5
K6
0.3
0.4
-0.2
0.1
0.2
0.0
0.3
0.5
-0.2
0.3
0.4
0.0
0.4
0.5
-0.1
0.3
0.5
0.2
0.3
0.1
-0.2
0.1
-0.2
0.4
0.0
0.2
0.1
0.1
0.3
0.4
0.8
0.8
0.4
0.5
0.5
0.5
0.7
0.8
0.5
0.0
0.5
0.3
0.3
0.5
0.3
0.2
0.7
0.3
0.9
0.8
0.9
0.5
0.6
0.8
0.5
0.2
0.0
0.5
-0.1
-0.2
0.8
0.8
0.6
0.9
0.4
0.5
0.6
0.3
0.2
0.6
0.4
0.2
0.4
0.2
0.1
0.1
0.4
0.4
-0.5
-0.1
-0.3
-0.1
-0.4
-0.1
-0.3
-0.2
0.1
-0.3
-0.4
-0.2
-0.4
-0.5
-0.6
-0.4
-0.3
-0.2
0.9
0.8
0.9
0.9
0.5
0.8
0.10
0.24
-0.05
-0.43
-0.76
-0.43
1.37
1.37
1.12
1.25
1.00
1.08


K1
K2
K3
K4
K5
K6
0.7
0.5
0.4
0.3
0.4
0.6
0.3
0.5
0.4
0.2
0.5
0.6
0.6
0.5
0.6
0.4
0.7
0.7
0.1
0.1
0.0
0.5
-0.1
0.1
0.0
0.0
0.0
0.4
0.2
0.4
0.5
0.7
0.5
0.5
0.4
0.7
0.7
0.5
0.4
0.4
0.6
0.7
0.5
0.6
0.3
0.4
0.8
0.6
0.6
0.8
0.6
0.5
0.9
0.8
0.2
0.0
-0.2
0.0
0.4
0.1
0.7
0.7
0.5
0.4
0.7
0.6
0.7
0.6
0.3
0.7
0.8
0.5
0.3
0.4
0.4
0.7
0.6
0.5
0.0
0.2
0.3
0.3
0.2
-0.4
-0.2
-0.1
-0.1
-0.1
-0.3
0.0
-0.1
-0.4
-0.2
0.1
-0.5
-0.2
0.8
0.7
0.6
0.9
0.9
0.8
-0.05
0.05
0.00
-0.10
-0.90
-0.19
1.24
1.02
0.84
1.18
1.34
1.25

相関関数 r≧0.4 or r≦-0.4

1:色、2:種の感じ、3:外観の総合的評価、4:果皮のかたさ、5:果肉のかたさ、6:果皮と果肉のかたさのバランス、7:シャキシャキ感、8:みずみずしさ、9:テクスチャの総合的評価、10:きゅうりらしい香り、11:香りの総合的評価、12:うま味・こく、13:甘み、14:酸味、15:苦み、16:渋み・えぐみ、17:味の総合的評価

(女子栄養大学教授 松 田 康 子)
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