第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
V 成分分析結果
成分の分析は、女子栄養大学栄養科学研究所に委託した。栄養科学研究所では、試料到着後、以下のような方法によって各成分を測定した。
・
水分
五訂日本食品標準成分表分析マニュアルに従い、可食部を細切後、約5gを精秤し、乾燥錠剤と混合後、減圧下70℃で5時間乾燥後に秤量する。
・
糖度
可食部をフードプロセッサーで磨砕後、上澄液を遠心分離し、糖用屈折計で測定する。
・
糖分
可食部を生のまま又は凍結乾燥したものを粉砕し、一定量を70%エタノールで環流抽出する。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により、抽出液の遊離糖を測定する。
・
有機酸
可食部を生のまま又は凍結乾燥したものを粉砕し、一定量を70%エタノールで環流抽出する。HPLCにより、抽出液の有機酸を測定する。
結果は以下のとおりであった。
1 きゅうり
きゅうりは、品種・産地の異なる6試料について、水分、糖度、糖分(糖含量)を分析した。分析結果を表1に示した。
表1 きゅうりの成分
試料
水分(%)
糖度(Brix%)
糖分(g/100g新鮮重)
K1
K2
K3
K4
K5
K6
95.4
95.1
95.4
95.6
95.1
95.6
3.6
4.0
3.7
3.6
3.7
3.5
1.8
1.9
1.9
1.9
1.9
2.1
きゅうりの糖分は、還元糖である果糖とブドウ糖がほとんどを占めた。
6試料とも、水分は約95%、糖分は約2%であり、差がなかった。
また、10月20日に到着し、数日間室温に保管後、分析に供した試料の成分を表2に示した。試料の品種・産地は表1の記号と同一であるが、ロットが異なるために、表1に示したデータとの比較は困難である。
表2 室温保管きゅうりの成分
試料
水分(%)
糖度(Brix%)
糖分(g/100g新鮮重)
K2'
K4'
K5'
95.4
95.6
95.5
3.7
2.7
3.5
2.0
1.5
1.5
2 にんじん
にんじんは、品種・産地の異なる6試料について、水分、糖度、糖分を分析した。分析結果を表3に示した。
表3 にんじんの成分
試料
水分(%)
糖度(Brix%)
糖分(g/100g新鮮重)
C1
C2
C3
C4
C5
C6
87.2
90.1
89.2
89.3
88.7
90.3
10.0
7.4
8.6
8.1
8.2
7.4
6.5
4.7
5.6
5.9
5.8
5.2
にんじんの糖分は4〜6割がショ糖であったが、試料C1ではショ糖が約8割を占めた。
水分と糖度は、水分が低いほど糖度が高いという関係が認められた。
糖度と糖分には有意な正の相関が認められた。
3 ほうれんそう
ほうれんそうは、品種・産地の異なる6試料について、水分、糖分、有機酸含量を分析した。分析結果を表4と表5に示した。
表4 ほうれんそうの水分と糖分
試料
水分(%)
糖分(g/100g新鮮重)
S1
S2
S3
S4
S5
S6
87.2
85.6
87.8
88.9
93.0
89.6
2.7
2.5
2.2
1.9
0.6
1.0
水分は試料間で大きな差があったが、糖分や有機酸には水分と同様の差は認められなかった。
試料S1〜S4は糖分が2〜3%であり、冬季に栽培されるほうれんそうの特徴を示していた。
糖分の多い試料(S1〜S4)ではショ糖が5割以上を占めており、特に試料S2ではショ糖の組成比が8割と高かった。一方、試料S5と試料S6では、ショ糖は4割程度であった。
表5 ほうれんそうの有機酸含量
試料
シュウ酸
(g/100g新鮮重)
リンゴ酸
(g/100g新鮮重)
クエン酸
(g/100g新鮮重)
S1
S2
S3
S4
S5
S6
0.57
0.61
0.51
0.46
0.42
0.60
0.35
0.31
0.23
0.25
0.13
0.30
0.24
0.30
0.18
0.15
0.05
0.10
ほうれんそうの有機酸は、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸が主要な成分であった。
リンゴ酸とクエン酸の合計量は、試料S1と試料S2が他試料よりやや多い傾向にあった。
(千葉県農業総合研究センター 宮 崎 丈 史)
>> 野菜のおいしさ検討委員会報告書 目次へ