第2章 野菜のおいしさに関する検討結果の概要
4 大きさ別ほうれんそうの品質とおいしさ
ほうれんそうのおいしさに関する調査の一環として、大きさの異なるほうれんそうの食味と成分を比較することにより、成分に及ぼす生育程度の影響とおいしさに関係する要因を検討する。このために、同一圃場において同一管理によって生産されたほうれんそうを用い、品質と食味に関する調査を実施した。
1.形状調査結果
調査に用いたほうれんそうの形状は、L級はMS級に比べて葉が8cm長い程度であったが、1株重は約2倍あった。また、両者とも葉身の比率が約7割と高く、がっしりした草姿であった。
表1 品質調査に供したほうれんそうの形状
大きさ
葉長(cm)
1株重(g)
葉身率(%)
MS
L
22.0±2.0
29.7±0.7
39.0±6.7
77.6±2.2
71.5±3.1
66.2±1.2
注)葉身率は葉身重/全重×100
2.食味評価結果
ほうれんそうはお浸し・油炒めとして食味評価を行った結果、お浸しでは両者の評価がほぼ同数であり、有意差はなかった。一方、油炒めでは、MS級をおいしいとするものが多く、5%水準で有意な差があった。評価の主な判断基準は甘み、えぐみ、筋っぽさの強弱であった。
表2 一対比較法によるほうれんそうの食味評価結果
評価試料
評価結果(評価人数)
有意差検定
MS級がおいしい
L級がおいしい
お浸し
油炒め
24
35
28
17
n.s
*
注)n.sは有意差なし、*は5%水準で有意
油炒めでも全体的に両者の差は小さいが、L級についてはえぐみや渋みが感じられたために低い評価とした回答が12あった(逆に、えぐみは油との相性がよいと評価した回答もあった)。
3.成分分析結果
成分分析を行った結果、水分と硝酸含量はL級がMS級より明らかに高かったが、糖とビタミンCの含量はほぼ同程度であった。
表3 食味評価に供したほうれんそうの成分
大きさ
水分
(%)
糖含量
(g/100gFW)
ビタミンC含量
(mg/100gFW)
硝酸含量
(mg/100gFW)
MS
L
88.8±0.1
89.4±0.2
2.2±0.3
2.0±0.2
68±9
60±7
64±22
110±10
前年度の調査では、茹でたほうれんそうのおいしさは甘みと相関があった。本年度は、MS級とL級という大きさの違いでは、原材料をそのまま食するお浸し(前年度の茹でに相当)のおいしさや糖含量に差は認められなかった。おいしさに差がなかったことは糖含量に有意差がないことを反映したものと考えられた。一方、油炒めによる調理ではえぐみの影響が現れ、えぐみが強いとされたL級は評価が劣る結果となった。また、食味評価におけるコメントからは、糖含量が大きな影響を及ぼす甘みに差がない場合は、えぐみや筋っぽさがほうれんそうのおいしさの判断基準として重視されることが推察された。
(千葉県農業総合研究センター 宮 崎 丈 史)
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