知識集約型産業創造対策事業(野菜のおいしさ検討委員会)も2年度目を迎えました。当初の計画では、昨年度のきゅうり、にんじんとは別の新たな品目を取り上げる予定でした。ところが、昨年度事業で検討している際に、生食と加熱調理では、同一野菜でも品質評価結果が全く違うことがわかりました。また、嗜好型官能評価試験においても、評価者の嗜好形成度・鑑別力レベルにより、評価結果に違いが現れることが明らかになりました。
こうしたことから、19年度事業としては、むしろ昨年度の結果をさらに掘り下げることが、野菜のおいしさに関する構成要素の抽出に接近するのではと考えるに至りました。
まず、野菜のおいしさ構成要素として、供試用野菜の選択・調達が最も重要という視点に立ち、これまでいわれてきた野菜のおいしさ情報を参考に、供試用野菜の産地・品目を選定しました。ところが、評価日に合わせた供試用野菜の調達にあたって、きゅうり等の果実の成長が早い野菜は、収穫日数日前の天候が品質に大きく影響することが官能評価試験結果に現れるなど、指標化のための新たな課題が浮上することとなりました。産地・品目は、指標化に直ちには結び付けられなかったという次第です。
しかし、今年度の検討結果からは、大変貴重な発見がありました。同一野菜でも、使用する調味料によってその野菜に含まれる成分との相乗効果が生じ、それが味に大きな差となって現れるため、おいしさ評価に違いが出るというものです。この発見は、これからのおいしい野菜の料理方法の新たな参考情報になると確信します。
また、長年流通業界で話題に上がっているおいしい野菜の事例評価では、機器分析・官能評価とも裏付けできないという結果も出ました。これは、分析対象である野菜が他の食品と違って生きているものであるため、野菜品質の再現性に難点があるゆえと思われます。とはいえ、巷でいわれている野菜のおいしさ情報は、科学的知見に裏付けされたものは少なく、ビジネスに偏重した情報が多いといえるでしょう。そのことを考慮した野菜情報の理解・対応が必要と考えます。
野菜のおいしさの指標化には、この分野の研究データが乏しく、研究の底辺が固まっていないため、これからは、それを追及する計画的な検討に基づいたデータ蓄積の中から見えてくるものがあると想定されます。この野菜のおいしさ検討委員会の検討結果も、その一助になれば幸いです。
委員の方々には、こうした困難をご承知のうえで、昨年に引き続きご熱心に検討を重ねていただき、ここに報告書としてまとめることができました。心から感謝申し上げます。
また、野菜のおいしさ検討委員会に評価用供試野菜をご提供並びに試験栽培してくださった産地のご協力には、深く感謝申し上げます。この検討結果が野菜のおいしさの科学的指標作成に発展し、さらに野菜の消費拡大に結びつくことを願ってやみません。
|