第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
T 嗜好型官能評価の概要
2.だいこんの評価
<試料と方法>

A:味一番 北海道士別市
B:福味  北海道士別市
C:夢岬  北海道石狩市
D:ふくろうの里 青森県下田市


( 写真左から A:「味一番」  B:「福味」  C:「夢岬」  D:「ふくろうの里」 )

 生、おかか煮、あげ煮で評価した。生食の場合はスライサーで千切りにした。

 おかか煮と揚げ煮の基本レシピは、だいこんを小さく乱切りにしたもの3kgに対して2%かつおだし汁(沸騰した水に花かつおを入れて1分加熱3分放置)1.2kg、酒60g、みりん60g、醤油150gとし、だいこんを調味料で煮て、沸騰してから40分加熱し、総重量を3.5kgに会わせるために追い炊きをし、花かつお20g加えてさっと混ぜた。前夜に煮たものを翌日再加熱して供した。あげ煮では同様の基本レシピに対し、最後の花かつおは用いず、油揚げ320gを大根と共に煮た。

 おかか煮ではAとB、AとC、BとCのいずれかを評価した。あげ煮ではBとC、CとDのいずれかを評価した。各特性を7段階評価尺度で評価した。パネルは農大栄養科学科の学生2クラスで、それぞれ約80名である。まず生食で評価してから煮たものを評価した。

<結果>
 生と煮物を同時にプロットして、それぞれの煮物について図6と7に示す。


図6.だいこんの生とおかか煮における評価結果


図7.だいこんの生とあげ煮における評価結果

 辛みの強さについては、生でのみ評価したが、Cは辛みが強かったにもかかわらず、辛みにも強さが好まれていた。辛いだいこんは嫌われるという先入観は正しくないといえる。生と煮た場合では多くの場合に煮ることによって、評価が高まった。Cは煮ることによってうま味が増し、最も高く評価された。分析は行っていないが、CはBrixのみでなく、グルタミン酸の量も多く、どちらの煮物でもかつおだしを用いているためにうま味が増強されたことも寄与していると思われる。

 BとCの比較はおかか煮と揚げ煮の両方で行っているのでそれらの結果を図8に示す。


図8.だいこんの調理法による評価の違い

 揚げ煮よりおかか煮でCの方が明らかにうま味が強くなっている。どちらにもかつおだしは共通に用いられているが、油揚げはイノシン酸を含まず、おかか煮は僅か20gを加えたかつお削り節中のイノシン酸がうま味をさらに増強したためと考えられる。だいこんは、おろしや酢の物、サラダなど生でも食されるが、醤油をかけてグルタミン酸を増し、さらにかつお節をかけたり、小魚と混ぜるなどして、動物性食品と組み合わせることによって、イノシン酸とのうま味の相乗効果を引き立てるのが日本古来の食べ方であり、さらにブリ大根やおでんなどにすれば、ますますうま味の相乗効果が発揮される。そういった和食文化の伝統の食べ方を見直すことが、だいこんの消費拡大には重要と思われる。

 また、おかか煮でCの風味が好ましくなっているのは、うま味とのバランス効果によるためと思われる。食感も好ましくなっているのは、かつおぶしが物性に影響を及ぼすはずはなく、煮詰め時間が若干違ったことと、好ましい味は咀嚼を促すことなどが考えられる。

 なお、ここではだいこんのグルタミン酸の分析は行っていないが、(財)日本特農産物協会による平成17年3月発行の国産農産物推進消費者活動支援対策事業報告書資料編には4県のだいこんについて分析値が示され、遊離グルタミン酸量は15から29mg/100gとなっている。

 (平成19年10月5日実施)
(東京農業大学 山 口 静 子)
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