第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
T 嗜好型官能評価の概要
3.きゅうりの評価−その1
<試料と方法>

A:新潟 ブルーム
B:福島 品種A
C:福島 品種B   
D:仙台 四川2号

 BとCは同一産地のものであるが、専門家の予想ではCは硬くてBより劣ると思われたものである。評価は生と塩漬けでA、B、CおよびA、B、Dの組み合わせで行った。

 生はスティック状にして、漬物は小さめの乱切りにし1%の食塩を混ぜて3時間漬けた。

<結果>
 A,B,CとA,B,Dをそれぞれ一括して図9と10に示す。


図9.きゅうりの生と塩漬けでの比較結果−その1

 生と塩漬けではパリパリ感、食感において似た結果が得られた。平均値で高い値を示したのはパリパリ感や食感で、香りや風味、微妙な味では、とくに生において全体に低い評価であった。

 とくに、注目すべきことはBとCでは専門家にはCの方が劣ると予想されたにもかかわらず、Cが最も高い評価を得ていたことである。それはパリパリ感が強かったため、素人にはそれがよしとされたためと思われる。甘味も若干強いとされていた。


図10.きゅうりの生と塩漬けでの比較結果−その2

 参考までに、すべての評価を総合して、評価者のきゅうりに対する嗜好度別に、きゅうり全体に対する評価の平均値を求めたのが、図11と12である。きゅうりに対するパネルの嗜好度は大好きを7、大嫌いを1とする7段階評価により測定したもので、7,6,5、4以下で分類した。


図11.生食におけるきゅうり全体に対する評価者のきゅうり嗜好度別評価平均値


図12.塩漬けにおけるきゅうり全体に対する評価者のきゅうり嗜好度別評価平均値

 きゅうり全体として見たとき、もっとも高く評価されているのは食感であり、味についてはきゅうりの好き嫌いにかかわらず甘味の強さが高く評価されている。これはきゅうりの味については誰でも感じられた味は甘味で、それに若干の苦味があったことを示す。きゅうりの微妙な味は全体として強くはないがきゅうりの好きな人のほうが強く感じていた。きゅうりがあまり好きでない人は総じて評価が低いが、香り、風味の評価が低く、特に生では微妙な味を感じていない。つまり、極端に言えば、きゅうりがあまり好きでない人は、これらのきゅうりからは明確には甘さしか感じとれていないといえる。
 
 表2は、各特性間の相関係数を求めたものである。総合評価と最も相関の高いのは味であったが、甘味より甘味以外の微妙な味の方がより相関が高かった。


表2  試料全体を総合して見たときの評価項目間の相関係数(n=のべ330)

 以上からこれらのきゅうりがもし最近のきゅうりの開発方向を反映しているとすれば、食感と甘味のみにターゲットが絞られ、食べる方もそれ以外の香りや微妙な味はあまり感じていないといえる。とくにきゅうりの余り好きでない人が、好きな人並に認知しているのは甘いということだけになる。しかし、本当はそれよりも大切な甘味以外の微妙な味が疎かにされているということである。
 (平成19年10月5日実施)
(東京農業大学 山 口 静 子)
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