驚くべきことに、唯一Dでドレッシングをつけた場合のみ、若干新鮮な方が多く選ばれたが、他はすべて収穫後6日間過ぎても、収穫1日後と差がないか、より好ましいとされた。
さらに、評価の内容を各特性について詳細に見たのが図14である。特性のプロフィールにはそれぞれ違いが見られる。ドレッシングをかけることによる評価の変化も、ものによってそれぞれであったが、特にD2はそのまま食すると、苦いような薬臭いような異味、異風味が感じられ、多くの回答者がそれを指摘し、評点にも大きく現れていた。ところが、ドレッシングをかけて食べたときは、評価はむしろ逆転した。ドレッシングによって異味、異風味がマスクされ、あるいはそれらの味や風味がアクセントになったのかもしれない。また、D2は中身もつぶれやすい感じであったので、生では好まれなかったが、薄切りにしてドレッシングで食べたときは気にならなかったものと思われる。要するに極端に言えば、ドレッシングやマヨネーズをつけて食べるなら、味や風味はどうでもよく、食感さえあればいいと思われるのもやむを得ないことを示唆している。
いずれにせよ、きゅうりの生命と思われた新鮮さをどう考えるべきであろうか。昨年度の調査では、主婦が最も望むきゅうりはパリッとして、新鮮なものであったが、購入後消費されるまでの保存期間も長いことも示された。長持ちしてパリッとするきゅうりは消費者のニーズに合わせた生産者の努力の結果ともいえる。昨年度の報告書では、パリッとしたミニきゅうりは味も香りも乏しく、特に食感を好む人にはよいとしても、それを一般のきゅうりに当てはめるべきではないと述べたが、それは杞憂ではなくたちまち現実のものとなった感がある。
このようなきゅうりの変化は好むと好まざるとに拘わらず、もとを辿れば消費者の望みを叶えんとしたものでもあるが、実際にきゅうりそのものの香りや味はどうでもいいはずはない。生産者は消費者の要望を短絡してとらえ、それを強調するだけでなく、プロとしての良識ある判断が必要であり、消費者も要望には責任を持ち賢い選択をする必要である。
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