第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
U レタスに関する官能評価と機器分析の関係
1.試料 長野県産レタス
 長野県内の農家が栽培するレタスを試料とした。
2.官能評価
 9月13日、20名で行った。レタスはちぎって皿にもりつけた。

 官能評価は外観のよさ、香りのよさ、風味のよさ、食感のよさ、味のよさ、総合評価については-3から+3の7段階、苦味については0から3(3は非常に苦い)の4段階とした。各平均値を表にまとめた。

 官能評価結果について、下の表に平均値をまとめた。全体に評価値のばらつきが大きかった。

3.機器分析
 野菜茶業研究所において実施した。硬さ、歯切れ(野菜茶研未発表)についてはKramer シェアセルを使用して葉の先の方を測定した。レタス全体を縮分した試料を熱水で抽出し、キャピラリー電気泳動法により糖を分析した。
4.まとめと考察
 上図に官能評価結果(総合評価)を示した。平均値でおおよそ2点の差内に分布し、さらに標準偏差が1.5以上ある試料も観察され、評価値のばらつきが大きいといえる。収穫期の比較(AとG、CとF)では過熟のものが嫌われる傾向にあった。
 レタスにおいてはシャキシャキした食感が重要と考えられる。しかしながら、供試した試料中では総合評価によりも評点の差が小さかった。また、機器分析による「硬さ」や「歯切れ」との相関関係も認められなかった。これは、機器分析法が開発途上にあることも要因のひとつであるが、機器では葉の先端に近い部分を測定したのに対し、官能試験では部位を指定せずに喫食させたことにも原因がある。官能評価のコメントでは、同じ試料についても「しっとり口触りがよい」から「ぱさつく」まで評価が分かれており、パネル間の喫食部位の相違が、評点にも反映されているものと推定される。
 糖含量(遊離糖の合計値)と味評点の関係を上図に示した。他の野菜では遊離糖含量が高いものが味がよいと表される場合が多いが、レタスではこのような関係は全く観察されなかった。
 一方で総合評点と苦味評点の間には負の相関が認められた。また苦味評点は、味や風味の評点と負の相関関係にあり、苦味の強いものが嫌われるものと考察される。ただし、評点のばらつきは非常に大きく、苦味は部位によって異なることから、パネル間の喫食部位の相違が、データのばらつきに反映されているものと推定される。苦味成分を供試試料ごとに分析できればよいが、現状、機器を用いて評価するための手法が開発されていない。

 以上まとめると、以前から指摘されているように、過熟なもの、苦味の強いものは嫌われる傾向にある。他の野菜では品質指標になる糖含量やBrixはこの時期のレタスの嗜好を反映せず、むしろ苦味が品質にとって重要である。また、レタスは部位によって食味や食感が異なるため、官能評価法を工夫しなければ、精度のよいデータは得られない。今後の研究においては、苦味や食感を客観的に評価できる手法の開発が望まれる。

(野菜茶業研究所 堀 江 秀 樹)
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