第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
V きゅうりに関する官能評価と機器分析の比較
まとめと総合的な考察
  1. 今回のきゅうり試験に関しては、評価の高かった試料については、果糖、ブドウ糖の含量が高い傾向があった。

  2. 保存期間の長い試料ではこれら糖含量の低下とともに嗜好性の低下が認められ、ブドウ糖含量の低下の方が果糖含量の低下よりも著しかった。

  3. 糖含量の簡易評価法として、Brix測定は簡便な手法であり、一部きゅうりのおいしさ指標として対応できる可能性はあるが、保存による品質低下には十分対応しきれない場合もみられる(試験1のA、a)。これに対して、グルテストのような血糖センサーは、ブドウ糖に特異的に応答するため、より選択性の高い手法として期待できる。ただし、Brix測定と比べてコストが高い(1試料100円)こと、希釈の手間がかかることなどの問題も残している。

  4. きゅうりの食感としては、従来円柱状のプランジャーを突き刺す方法が用いられてきた。これに加えて野菜茶研開発のCI法や形状に関係するデータを組み合わせれば、きゅうりの食感は評価できる可能性がある。

  5. きゅうりにおいてみずみずしさやジューシーさは鮮度と関係し重要と考えられる。ただしこのような項目については、水分含量を分析するだけでは評価できない。

  6. 今回の試料については、収穫前の天気があまりよくなかった。天候が品質に影響することは別の試験でにもとめられており、それぞれの品種のもつ本来の特性を比較できなかった可能性も残されている。

  7. 報告には記載しなかったが、ブリーダーがおいしいと思う品種Aとおいしくないと思う品種Bについての比較試験(10月3日収穫)も行っている。たまたまA、Bの糖含量は同じであったが、野菜茶研職員はAを好み、学生パネルはBを好んだという結果も得ている。とれたてのきゅうりに親しんだ者は、ジューシーで粘りがありキュウリ臭の強いもの、普段冷蔵庫のきゅうりを食べている者は歯ごたえの強いものを好むなど、きゅうりに対するおいしさの基準が食経験により異なる可能性もある。
(野菜茶業研究所 堀 江 秀 樹)
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