第3章 野菜のおいしさに関する検討結果
W 大きさ別ほうれんそうの品質とおいしさ
3.結果及び考察
1)食味評価
 食味評価結果を表1に示した。お浸し・油炒めともに、評価の主な判断基準は甘み、えぐみ、筋っぽさの強弱であった。お浸しでは両者の評価がほぼ同数であり、有意差はなかった。一方、油炒めでは、MS級をおいしいとするものが多く、5%水準で有意な差があった。

表1 一対比較法によるほうれんそうの食味評価結果

評価試料
評価結果(評価人数) 有意差検定
MS級がおいしい L級がおいしい
お浸し
油炒め
24
35
28
17
n.s
       注)n.sは有意差なし、*は5%水準で有意
有意な差となった油炒めでのコメントには、以下のような記述が散見された。
  • MS級はクセが少ない、食べやすい
  • L級は葉にえぐみ・苦み・渋みがある
  • L級は油とのマッチングがよい
  • 両者の差は小さい

 上記のコメントにもあるように、全体的に両者の差は小さいが、L級についてはえぐみや渋みが感じられたために低い評価とした回答が12あった(逆に、えぐみは油との相性がよいと評価した回答もあった)ことが特徴的であった。

 

2)形状調査及び成分分析結果
 ほうれんそうの形状調査結果を表2に示した。L級はMS級に比べて葉が8cm長い程度であったが、1株重は約2倍あった。また、両者とも葉身の比率が約7割と高く、がっしりした草姿であった。

表2 食味評価に供したほうれんそうの形状

大きさ
葉長(cm) 1株重(g) 葉身率(%)
MS
22.0±2.0
29.7±0.7
39.0±6.7
77.6±2.2
71.5±3.1
66.2±1.2
       注)葉身率は葉身重/全重×100
 成分の分析結果を表3に示した。水分と硝酸含量はL級がMS級より明らかに高かったが、糖とビタミンCの含量はほぼ同程度であった。なお、糖と硝酸の部位別含量を表4に示したが、両者とも、秋冬に収穫する露地ほうれんそう成分の特徴を有しており、特にこの時期としては葉柄部の糖含量が多かった。

表3 食味評価に供したほうれんそうの成分

大きさ
水分
(%)
糖含量
(g/100gFW)
ビタミンC含量
(mg/100gFW)
硝酸含量
(mg/100gFW)
MS
88.8±0.1
89.4±0.2
2.2±0.3
2.0±0.2
68±9
60±7
64±22
110±10

表4 食味評価に供したほうれんそう部位別の成分含量(新鮮重100g当たり)

大きさ
糖(g) ビタミンC(mg) 硝酸(mg)
葉身 葉柄 葉身 葉柄 葉身 葉柄
MS
1.5
1.2
4.0
3.5
89
85
13
10
18
47
180
240

 前年度の調査では、茹でたほうれんそうのおいしさは甘みと相関があった。本年度は、MS級とL級という大きさの違いでは、原材料をそのまま食するお浸し(前年度の茹でに相当)のおいしさや糖含量に差は認められなかった。おいしさに差がなかったことは糖含量に有意差がないことを反映したものと考えられた。一方、油炒めによる調理ではえぐみの影響が現れ、えぐみが強いとされたL級は評価が劣る結果となった。また、食味評価におけるコメントからは、糖含量が大きな影響を及ぼす甘みに差がない場合は、えぐみや筋っぽさがほうれんそうのおいしさの判断基準として重視されることが推察された。
(千葉県農業総合研究センター 宮 崎 丈 史)
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