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第5章 野菜のおいしさに関する文献調査結果 |
2.レタス |
レタスのおいしさに関する研究例は国内外とも多くない。特に国内での研究報告が少ないため、国外での研究を中心にとりまとめることになるが、季候、風土、品種が異なるため、どこまで日本の玉レタスにも応用できるかについては検討を要する。
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(1)食味特性 |
中村ら1)は施肥窒素量と品質の関係を解析し、窒素施肥量の増加とともに、柔らかさと甘さが低下した。また、総合評価と甘さ、苦さの評価の間には相関関係が認められ、甘くて、苦味のないレタスがおいしいとされた。Brixについては窒素施肥量や結球重が増すにつれて低下する傾向にあった。
レタスの苦味成分については、乳汁中に含まれるとされsesquiterpene lactone類との関係が示唆されている。レタスとチコリの官能的な苦味と成分との関係はPriceら2)によってなされている。その結果、苦味スコアとの相関の高いsesquiterpene
lactone類はlactucin glycosideであった。一方で、Sessaら3)はglycoside体とされてきたのは誤りとしている。彼らは、レタスの乳汁からlactucin,
lactucopicrinなどsesquiterpene lactoneとそのoxalate体やsulfate体を同定している。これらの組成は品種や生育ステージにより変化し、老化した植物において苦味が強いのは、sesquiterpene
lactone類の増加によるものと考察している。荒川ら4)は、レタスと野生種のsesquiterpene
lactone類を比較し、lactucopicrinについては、栽培種ではクリスプヘッド型(玉レタス)で少なく、コス型が多いとしている。また野生種のLactuca
salignaはクリスプヘッド型の75倍以上のsesquiterpene lactone類を含んでいた。
レタスには強い苦味が嫌われる傾向にあり、それはsesquiterpene lactone類によるものと考察される。しかしながら、個々の成分の苦味強度が明らかにされておらず、また簡易な分析法がないことから、品種や栽培条件と苦味に関する詳しい解析は現状行われていない。
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(2)物性・食感 |
Simonneら5)は肥料として与える窒素源と品質の関係について解析した。窒素源により収量は変わらなかったが、官能評価の結果、硝酸カルシウムで施肥したものが、硝酸アンモニウムで施肥したものより硬(crunch)かった。
Schofieldら6)によれば、(カナダでは)玉レタスは輸送中傷みにくいことから硬い(firm)ことが望まれる。従来玉の硬さは手で押すことによって評価されてきたが、彼らは、物性評価機器を用いて平板で押すことにより評価する手法を開発した。
食感の品種間差を機器で評価した報告は少なく、カット野菜として貯蔵との関係で評価されている場合が多い。Martin-Dianaら7)は薬剤洗浄後のカットレタスの食感を直径1cmの棒を貫入させ、かかる力の最大値を評価に用いている。その結果、カット直後のレタスの場合には処理薬剤間で差は検出できなかった。一方で、カット1日後と10日後で比較すれば10日後の方が値が高く、10日後の試料ではシャキシャキ感(crispness)を失ったことによるふにゃふにゃ感(flexibility)の増加によるものと考察される。Baurら8)は、貯蔵中の食感評価のために、10枚刃のシェアセルを用いている。彼らも薬剤処理条件の差の検出を試みているが、差違は検出できなかった。さらに、試料の不均一性のため、機器測定が困難であり、官能評価とはあまり一致しなかった。一方Baurらの方法はWeiら9)にも用いられている。彼らは、官能評価によって得られた食感スコアとSpecific
energy of deformation の間に相関を認めている。
Martin-Dianaら10)は、8枚刃のKramerシェアセルを用いて、カットレタスの貯蔵によるッシャキシャキ感(crispness)の変化の評価を試みている。彼らは、シャキシャキしたレタスとしなっとしたレタスの差違から、crispness
coefficient(CC)の計算方法を考案した。そして、乳酸カルシウム処理は塩素処理に比べてシャキシャキした食感であることをCCの値から示している。
レタスは部位によって不均一であり、食感の評価は非常に難しい。機器評価においても、通常用いる円筒ではなく、複数刃で押し切る方式が主になりつつある。これは、物性の部位間差が非常に大きいレタスを対象にする場合当然の流れであろう。一方、日本では軟らかく巻いたレタスが好まれるが、むしろよく締まったものが高品質とされる国もあるようである。食感評価法については外国の評価法を取り入れるだけでなく、日本人の嗜好に合った方法にアレンジする必要がある。
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(野菜茶業研究所 堀 江 秀 樹)
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