今回の試料のミネラルやアミノ酸量は接近していた。キャベツに優劣の差をつけるのが目的ならば、もう少し差のある試料で評価すべきであったが、実験前に試料の中身を知ることは不可能である。むしろこの実験が示唆することは、微量な成分の差がどの程度識別可能であるかということである。
また、生産者はキャベツを甘くすべきか否かも重要な問題である。そこで、甘味とうま味はどのようにキャベツの味の識別や評価に関わっているかを見るために、上記のAとBの比較でB(あまだま)の方が品質がよいとした人(9名)と通常の甘さのAをよいとした人(13名)で群別し、AとCをいかに評価したかをプロットしたのが図5である。
甘味の強さはどちらもAを強いとしているが、甘味の好ましさについてはあまだまを選んだ人がAを好ましいとし、そうでない人は差がない。また、あまだまを選んだ人はAの方がうま味も強いとし、煮汁でもA
の方が甘味は強いが、だし感や味の密度には差がついていない。しかし、通常のキャベツを選んだ人は、甘味はAが強いが、うま味は僅差でC、だしや味の密度はCの方が強いとしており分析値と合っている。うま味という味はニンジンの章でも述べたように食品の複雑な味の中ではグルタミン酸そのものの味としては感じられないので、回答者にとっては、だしがきいているという方が分かり易いはずである。ニンジンで示したと同様に、甘いキャベツを好む人は甘味への注目度が高いため、うま味やだしには注意が向かず認知できなかったものと思われる。
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