野菜のおいしさに関しては、これまで、平成18、19 年度の農林水産省補助事業知識集約型産業創造対策事業「野菜のおいしさ検討委員会」において、野菜のおいしさに関する科学的な指標の設定を目的に、官能評価と理化学的な評価を組み合わせた検討が行われてきました。
その中では、減少傾向にある野菜消費を増加刺激に寄与する情報提供として、既知の野菜のおいしさ基準に基づき、機器分析と官能評価結果との関係のなかで指標化するものでありました。検討結果を指標化するには供試野菜の評価(分析)時期、再現性の問題、更に指標化するためには野菜品質に係る基礎的な研究データが求められましたが、これまでの文献の中には求めることが出来ないほど未知の分野であることが確認されました。
さらに、その野菜が好きな人とそうでない人の間では、おいしいとする野菜像が異なることも明らかにされ、野菜品質評価の現状は大きな転換期に差し掛かっていることを示唆する検討事例も現れ、野菜消費拡大のためには野菜消費の現状を生産から消費に係る関係者全ての正しい理解の必要性が浮上しました。
こうした検討結果をふまえて、副菜摂取改善対策事業においては、ニンジン、キャベツ、ダイコン、ナス、ピーマンの検討を実施いたしました。
検討結果からは、機器分析値と官能評価を直接結びつけることは難しい品目があることや、特に加熱した場合には、未知の成分の相乗作用によるものと思われる傾向がみられ、ナスにおいては、果実の密度、硬さ等の肉質が食感に影響することや、消費拡大の手掛かりを掴む視点から実施したピーマンのアンケート調査からは、おいしさよりも料理の彩りの視点から選んでいる消費者が多いことが明らかになり、野菜品質評価の複雑、深遠さが浮き彫りになりました。
本報告は、多くの制約を受けながらも、野菜のおいしさ解明のために英知を絞った結果であり、生産・流通・消費・育種等の各場面で野菜を取り扱う方々に、多くの示唆を与えるものと期待いたします。
ただし、このような複雑..深遠な野菜品質について指標化を目指すには、先ず野菜品質解明のプログラムを作り、それに基づき実施するものでないと、現状のような短年度の計画では難しい事も示唆されました。野菜のおいしさを科学的知見に基づく解明結果は、野菜の栽培方法にも連動し、強いては消費者の求める安全でおしい野菜の流通に大きく貢献するものと考えられるため、本報告が野菜の品質研究活性化のための礎になることを期待いたします。
委員の方々には、ご熱心に検討を重ねていただき、ここに報告書としてまとめることができましたことを心から感謝申し上げます。
また、野菜のおいしさ検討部会に評価用野菜をご提供くださった種苗会社、農協、生産者、さらに調理室をご提供くださいました東京シティ青果株式会社等多くの方々のご協力には、深く感謝申し上げます。
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