表1 アミノ酸、ミネラル、糖の品種比較(ダイコン、生)
なお、イノシン酸は出汁由来である。用いた鰹節には0.56%のイノシン酸が含まれていた。表1、<参考データ>とも「本三浦」の糖含量がやや高い傾向は認められ。また、ミネラルでは「大蔵」のカルシウム含量が高かった。グルタミン酸、アスパラギン酸についてはキャピラリー電気泳動法の感度が十分でなく、試料間の差異はほとんど確認できなかった。
「大蔵」と「福天下」の間では、前者が「うま味」が強く、煮汁の「だし感」も強いと評価された。表1のグルタミン酸含量でわずかではあるが前者が多く、<参考データ>でも「大蔵」0.019%、「福天下」0.014%と微妙に前者が多いようである。さらに、イノシン酸は「大蔵」に多く検出された<参考データ>。グルタミン酸とイノシン酸によるうま味の相乗効果の結果、「大蔵」において「うま味」を強く感じたものと考えられる。 カルシウムは「大蔵」に最も多く含まれていたが、これが味に寄与しているのか、あるいは、品種の特徴なのか、あるいは土壌、肥培管理によるものなのか等については、さらなる検討を要する。 「本三浦」の特徴として、コメントによれば、やわらかくしっとりした食感があげられる。食感に関しては今回は機器評価できなかったが、品種特性を示すものとして、理化学的な評価法の開発が待たれる。また「苦味」、「辛味」などについてもコメントがあった。「苦味」については、今回化学分析した結果からは評価できなかった。アブラナ科野菜ではグルコシノレートが苦味に関与するという報告もあるので、ダイコンを扱う場合には、グルコシノレート分析を行うことが望まれる。(ダイコンの辛味物質であるイソチオシアネートは、組織の破壊によりグルコシノレートから生成される。)