第3章 消費者アンケート調査
1 ピーマンに関するアンケート調査
調査結果のまとめ
 ピーマンは、セロリなどとともに子供の嫌いな野菜として取り上げられることが多い。嫌いな理由は特有の香りと苦味とされるため、これを改善するために、生産現場においては収穫熟度や品種で対応しようとする動きも見受けられる。

 ピーマンの消費は、1人当たり1か月の購入数量が約800g(総務省統計局「家計調査結果表」)と安定しているが、近年は横ばい状態である。そこで、ピーマンの消費をさらに伸ばすための方向性を見い出すことを主目的とし、これまで行われることのなかった成人女性に対するアンケート調査を実施した。成人女性は、家庭消費において購入や利用の主力となる層であり、次世代の食嗜好への影響力も大きい。

 結果の詳細は設問ごとに次ページ以降に示したが、要約として以下のように取りまとめた。
  1. 成人女性は、8割以上が食材としてのピーマンの必要性を認めており、現状のピーマンを好ましいものと評価している。評価のポイントとして、緑色の彩りや高い栄養性、苦味などの味、食感の良さといった点を挙げている。

  2. 苦味は、子供では低年齢ほど嫌いな層が多くなり、20代女性でも好ましさはやや低いが、30代以降の女性になると好ましい要素に変わってきている。また自由回答でも、ピーマンを好きな層では好きな点を「苦味」と記述した人が約2割にのぼっている。このように、ピーマンの苦味はナバナ(アブラナ科)、シュンギク(キク科)、ゴーヤ(ウリ科)などと同様に、その個性として肯定的に評価されている。したがって苦味を弱めることは、ピーマンを好む層の消費を減少させることにもなりかねない。一方、ピーマンを嫌いな層では、嫌いな点として苦味を挙げる人が圧倒的に多い。また、炒め物など加熱調理するものが多いピーマンの使用例からは、苦味を和らげるための工夫をしていることが見て取れる。
     こうしたことから、苦味に関しては、現状程度を維持する生産手法(品種や栽培法等)とともに、これを弱める生産手法も開発し、両者が併存するような状態としてゆくことが望ましいと考えられる。

  3. ピーマン果実の形状や大きさ、緑色の濃さなどは現状の範囲にあることが望ましいとされている。果肉の厚さや甘みについても約7割の人が現状のままでよいとしているが、3割の層は改良を望んでいる。また、ビタミン含量などの栄養性は高いにこしたことはないが、現状でも十分と認識されている。

  4. ピーマン特有の香りは、苦味とともに嫌いな要素として挙げられると思われたが、大多数の人は現状程度を肯定的に評価しており、問題とするに足りないと結論できる。
 以上のように、本調査では、これまでのピーマンの印象を大きく変えるような結果が得られた。今後、ピーマンの消費を維持・伸長させてゆくためには、より多くの人々に必要不可欠な食材として認識されるようになることが肝要である。そのためには、ピーマンを嫌いな層にも受容されるように苦味を弱めることなども必要となる。また、これに加えてピーマンを美味しく食べるための調理法を開発して広めることも大切なことと考えられる。なお、アンケートの「美味しい食べ方の提案」には、肉詰め、炒め物、天ぷらなどのポピュラーな料理以外に、ホワイトシチューに入れる、千切りにしてごま油と和える、「浅漬けの素」を使った漬物などのユニークな提案もあった。

 ピーマンの苦味成分についてはアルカロイドやフラボノイドなどの諸説があり、いまだ明らかになっていない。苦味をコントロールするための成分育種や栽培法の改善を促進するためには、苦味物質のできるだけ早い解明が望まれる。なお、ピーマン果実中の有機成分を網羅的に解析する予備調査では数百もの物質の存在が確認されており、これらの中には機能性が期待できる成分も少なくないと思われる。今後、ビタミンなどの栄養性だけではなく、苦味物質の機能性等が明らかになれば、さらにピーマンの消費が増加することに繋がるものと期待される。
(千葉県農林総合研究センター 宮崎丈史)


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