(1) 官能評価による比較
試料は、写真に示した2009年12月に収穫された徳島県産金時ニンジンと千葉県産向陽2号を用いた。前項と全く同様の方法で加熱試料を調製した。官能評価に先立ち、言葉あわせを何度も行い匂いの質の違いを調べたが、向陽2号で選出された用語で金時ニンジンの質も表わすことができるという統一的な認識がパネルの話し合いにより得られた。つまり、品種の異なる加熱ニンジンの匂いは質というよりもそれぞれのにおいの強さの違いで表すことができることがわかった。向陽2号をコントロールとし、各評価用語について金時ニンジンの匂いが強いか弱いかを+5〜−5の点をつけてもらった。結果を図4に示した。金時では“パセリ様”、“青臭い”
の用語について低く評価された。また“重い”、“ほこりっぽい・日向臭”、“トマトの酸味を連想させる”の用語については、向陽2号に比べ高く評価された。このことから金時ニンジンはニンジンくさいにおいが弱まる分、ほこりっぽさや重さが際立つ傾向にあるということが示唆された。また加熱特有の香りとしての“かぼちゃのような甘さ”
に関しては向陽2号に比べ、高く評価された。「ニンジンらしいにおい」を感じないことで、より甘さやまろやかさを感じるのではないかと考えられた。
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