第9章 野菜のおいしさに関する意識調査とタマネギの官能評価
味覚と食嗜好研究所 山口 静子
附表2 野菜に関する意見(その2)

 前記の調査を踏まえタマネギの官能評価の際に追加調査を行った。以下は66名のコメントである。前記と同様仮の見出しをつけて生の声をそのまま列挙する。

質問4
 「最近の果物は甘すぎるものが多い」と思う一方、イチゴを買うときは甘そうなものを選び、りんごや柿、栗などももっと甘くなってほしいという人もかなりいる。その限りにおいて、果物はもっと甘くなることが考えられるが、果物や野菜の甘味化について、あなたのお考えをご記入下さい、に対するコメント

(肯定的意見)

  • 必要である。
  • もっと甘くしてほしい。
  • ここまで糖度を上げられたのは技術の進歩で高く評価すべき。
  • 果物に関しては甘すぎるとは思わないので、問題視していない。
  • 問題ない。
  • 大衆が望む方向でよい。
  • 甘味が強いということは氏素性育ち収穫時期貯蔵など全てが満足なときに発揮できると信ずる。それが技術だ。過度に甘すぎる必要はないが、スイカBrix13,メロン15−16,トマト6−8、葡萄16… 栽培技術の努力の結果と評価する。
  • 果物は嗜好が重要なので市場や消費者に指示されるものを栽培していく。その中で甘味が求められるのはやむを得ない。
  • もともと果物は野菜の必需品ではなく嗜好品のため甘い物を果物に求めるならしかたない。
  • ただ適作その土壌でとれたものを食べるのがよいと思う。
  • どちらでも消費が増えることはよいこと、その上で選択肢が増えるように甘味の少ない品種も残っていく。
  • 甘味が強いのがいい人もいれば、酸味とのバランスがいいという人もいるので、どちらもあってよいと思う。また九州と東北でも好みの味が違うので、地方ごとに品種を変えて作ってもいいと思う。
  • 爽やかな甘さ、濃厚な甘さなど、甘味の質が多様化して行くのではないかと思う。

(批判的反省的意見または提言)

  • 甘味以外の特徴を明らかにする(香りなど)
  • 現状で十分甘いと思う。調理幅を広げて行く上で野菜と果物のコンビネーションが生まれればと思う。
  • 砂糖のような甘さでは面白くない。
  • 味覚は個人差があり好みは別々。品種改良しすぎるとかえってマイナスになる。
  • 甘いだけでなく酸味とのバランスが必要。ただ甘いだけだと味ボケしてしまう。
  • おいしさ(甘さ)と酸味とのバランスによりコクなどが出てくるのではないか。
  • 甘味が強くおいしい野菜が増えうれしいが、反面、苦味、辛み、酸味など他の味覚を楽しみたいのもある。甘味が強いだけでなく他の味覚とのバランスも大事だ。
  • 甘くなると甘酸のバランスが崩れ日持ちが悪くなる。.甘、酸、辛み、苦味、渋みの適正なバランスがほしい。
  • 酸味などバランスがとれたうま味がほしい。
  • 個人的には果物は酸味が普通だと考えているため甘味化には反対である。
  • 酸味を大事にして欲しい。
  • 甘味と酸味のバランスが肝心と思う。
  • 甘味が強く酸味とのバランスが大切。
  • 甘味と酸味のバランスのとれたものが好ましい。
  • 甘味だけでなく酸とのバランスが必要。また酸味の強めな果物も少しは必要。
  • 苺は甘そうなのを選ぶと答えたのは、今の苺の糖度をもっと高めて欲しいという意味ではなく、いつも安いものを買うので味気ない場合を予想するため。
  • 甘さが価値に大きく影響しているが果物もそれぞれの品種により味が違うことを消費者に伝えてもよいと思う。酸味、歯触り、香りなど、そういう情報も消費者に伝えてほしい。
  • 果物は天候により甘味変化するので、当たりはずれがあり、消費離れ、野菜は甘味が増すことにより日持ち、鮮度低下が早い。
  • 品目によって好みは違う。現状はそういうものしか仕入れされず(売っていない物は買えない)状態が甘味だけを選択する行動につながっているのではないか。
  • 果物本来の甘、酸、苦のバランスがとれた味を知らないのではないか(砂糖水大好き人間)。
  • 本来の青果物の持つ甘味以上のものを作っていくと外見でしか選ばなくなってしまう。今から育つ子供達は本来の青果物の味を知らなくなってしまう。
  • 甘味と同時にそれぞれの特有の香りも必要と思う。甘味だけでは梨も柿も同じ味になってっしまうのではないか。
  • 酸っぱい調理用の果物が注目を浴び始めてきた。果物も甘味だけの傾向は生食だけの基準であり、熱を加えた果物は別分野として発展して欲しい。
  • 一般的に店持ち性を良くする為に若採りがされている。例えば苺は先端が色づいたくらい、梨は青いうちに出荷されている。
  • 野菜は地産地消が基本。果実も基本的には同じか。日本の気候風土に合う種類の生産を心がけるべき。
  • 数多ある品種や産地による味の違いを評価してどう特徴を生かして利用していくかということだと思っていたが、最後に有機の方が慣行より食味に優れると結論づけて終わりというのにはとても残念、拍子抜けした。
  • 野菜の風味品質などについては土地気候条件によりその品質の特徴を出すのは問題がある。
  • 比較するとすれば同一条件栽培のものでないと比較できない。
  • 果物と野菜に分けて考える。例えば、スイカ、苺、メロンは野菜から果物へ、トマトはあくまでも野菜としての役割を追求、トマトに糖度を求めるのはあまり意味がない。
  • そのまま食べるのであればやはり甘い物をおいしいと感じてしまう。しかしケーキに載せるなどスィーツと一緒に食べる場合には酸味がアクセントになる。味が均一化される様々な味が用途によって使い分けられることを望む。
  • 甘すぎるものが多い。例えばミカン、酸と糖のバランスがよいのがおいしいが、現在は糖が勝っているものが多すぎる。
  • 甘すぎると沢山食べられない。果物は水分補給の目的でジューシーさも大切なので、口の中にしつこさが残るような甘味は必要ないと思う。
  • スイカ狩りに参加し10kg以上の大きなスイカを10人くらいで腹一杯平らげた。少なくとも500gは食べたと思うが、糖度10%としても50g。スイカは水分補給どころか食べると水がほしくなるほど甘くならないでほしい。
  • 甘味と香りのバランスがおいしい果物だと思う、野菜、果物など、甘味、糖度ばかりを追求して行くのは大反対、林檎もミカンも不味くなった。
  • 砂糖、蜂蜜、コンデンスミルクなど、好きなものが自由に使えるのになぜ果物をこれ以上甘くしなければならないのか。甘味が足りなければ加えることができるが、強すぎれば減らせないので食べられない。野菜も生食なら甘くてもおいしいが、料理が甘くなりすぎるのは非常に困る。野菜は毎日大量に(目標350g)摂取するもので、さらに果物も摂取すると糖分過剰になる。消費者は好むと好まざるとに関わらず、甘味の強いものを食べざるを得ず、そのうちに甘味に慣らされて日本人の味覚が破壊する。とくにテレビ番組などでやたらに甘味嗜好を煽るような風潮を止めるように働きかける必要がある。
  • 糖質の量が多くなれば身体の中も糖分が多く残り、生活習慣病の原因となることを重く考えてほしい。甘味も>ライトオリゴ糖ならね。
  • 甘み嗜好が増えるのは頭脳労働が増え、大都市の場合はストレスが多く、身体を動かさず、気と頭ばかりを使うため。もっとメタボや糖尿病が増えるかも。
  • 確かに甘い物はおいしいが一方肥満が現代社会では問題になっている。果物を制限されている人も多い。甘味はほどほどで、酸味もありジューシーなもの、糖と酸のバランスのよいものを望む。
  • あまり手をかけ過ぎてほしくない。大量生産はよい結果を生まないと思う。
  • 食育や健康という観点からして自分の子供をこれ以上甘い野菜や果物を好むようになるように躾けたいとは思わない。大人は子供の嗜好にやたらに迎合すべきでない。大人の方が味覚を鍛える必要がある。
  • 最近の果物は甘すぎると思うが、お客は「これ甘いか」と聞くので甘くないものは売りにくい。しかし、もっと酸っぱいのが欲しいという客もいると八百屋がいっていた。
  • 強い甘みは食品の微妙な味を味わい分ける感受性を低下させる。
  • 本来ごはんの時に食べるおかずや酒の肴というものは塩味系で甘み系ではなかった。漬け物なども買ったものは甘すぎる。野菜の甘味もほのかに甘いのはいいが甘味が主役になると野菜を逸脱する。食物全体の中でそれぞれの食品の役割は何かということを消費者も生産者も自覚すべき。
  • 単純な発想で、野菜の消費量を増やすために売れる野菜を作ればいいと考えるのは間違いで、野菜の満たすべき本来の機能や役割を基本に立ち返って本質的に良質の野菜とは何かを追求すべきである。
  • 甘いことで消費が伸びるのであれば1つのあり方として許容すべきであろう。ただ最近地方野菜伝統野菜が注目されていることは単に甘い、やわらかいという価値観では捉えられない野菜が食卓に載る可能性を広げていることになるのではないか。問題はこうした伝統野菜、地方野菜が甘さ、軟らかさといういわゆる「食べやすい」方向へ向かってはいないかということだ。売れることは第一でそのために食べやすさを追求することはやむをえないという考え方もあろうが、特有の味わい風味を保存するためには政府などがサポートすべきだと思う。


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