ここは国立の研究所で、育種を専門にしている。チンゲンサイ、白菜、キャベツなどの葉菜や瓜類が多かったが、最近は施設栽培用の野菜が増えている。なす、ピーマン、トマト、またスイカ、メロンなど。自分で育種したものは自分で売るという原則もあるそうだ。施設栽培用の野菜が増えてきたのには、時代と共に、より安定的に収量を上げるだけでなく、安全性の問題がクローズアップされてきたことによる。
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育種専門の国立研究所
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現在、中国の野菜の安全性は、以下の3つのランクに分けられており、1〜3へと安全性がより確保される( マーク参照)。認定は国家の認可を受けた第三者機関による。同じ漢字でも日本語とは言葉の意味が微妙に違うので、要注意だ。
1.無公害野菜…農薬、化学肥料の使用を基準以内に守っていて、健康に害がない
2.緑色野菜…農薬、化学肥料の種類や使用法が限られていて、守られている
3.有機野菜…農薬、化学肥料をいっさい使用していない
国家の要請は、無公害野菜、緑色野菜を確保すること。輸出用はもとより国内販売でも、人々の意識が高くなっているためである。沈さんからも日本への輸出は特にきびしいとの苦言があったが、逆に学ぶことが多いとも。
人口2000万の上海は自給率が40%と低く、60%は近辺から調達している。意識が比較的高い上海の野菜は安全性も高いが、外部には不安が残るという話もあった。
最後に、上海の野菜に関する基本情報をうかがった。
上海の野菜年間消費量は550万t、地元産は220万t。地元産の内の5万tは輸出用、30万tは中国内の他地域へ(主にカリフラワーなどを北方へ)送るそうだ。広大な中国には、野菜が行き届かない地域も少なくないだろう。野菜の栽培面積は周年野菜は3万3000u、季節野菜は1万3000〜2万u。今後は市からも施設栽培を増やす要請があり、2010年を目処に周年野菜の栽培地の約2万uを施設栽培にするように計画している。
虹橋空港発13:10と、上海滞在は正味2日間のごく短期間だったが、上海及び中国の野菜事情が垣間見える密度の濃い研修だった。行く先々で聞いたのは、日本への輸出条件が大変シビアであるということ。コストをかけて応えても改善されないことに、苛立ちさえ感じている印象だった。
かつての冷凍ほうれんそう事件、中国餃子事件など、中国の野菜の安全性には時として不安がある。しかし、少なくとも今回見学した地では、安全性確保に日本国内以上といってもよいほど配慮している様子がうかがえた。食糧自給率39%という日本が、今後の食料確保を考える時、ただ輸入条件をきびしくするだけでは自分の首を絞めることにもなりかねない。むしろ、中国を初めとする諸外国が安全な食料を生産できるように情報や技術を伝え、結果として安全な食料を得られるような関係にしていくべきではないだろうか。また、消費者は風評でなく冷静に判断すべきで、そのための事実に基づいた情報が伝わるしくみも必要と痛感した。
大崎理事はじめ、上海各地で大変お世話になった方々に、心からお礼を申し上げる。
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