第2章 野菜のおいしさに関する検討結果
T ニンジンの官能評価と機器分析
1 ニンジンの嗜好型官能評価
実験1.社会人によるニンジンの評価
 試料は広く出回っている以下の一般的なニンジンA,B,Cと昔ながらの長ニンジンD、有機栽培のニンジンEで、産地直送のものを用いた。前年行った評価ではCはAよりグルタミン酸が多く、鰹だしやイノシン酸無添加ではA、添加ではCが高く評価されたことから、再度試料として選んだ。またBは新品種であるが最近人気が高いということで選んだ。長ニンジンは以前の評価結果では、ニンジンらしさが強いために、平均的には好まれなかったが、ニンジンが好きな人には高く評価されたものである。また、Eは5寸ニンジンではあるが昔ながらのニンジンに近い風味を持つと期待されるものとして選んだ。しかし、写真にも示すように、今回はD、E両方とも時期が若干早かったせいか、以前評価したときよりも、外見的にも、色、形ともにかなり貧弱であった。昨年は12月に評価したが、今回は11月で熟度が足りなかったことが考えられる。
<試料>
 A:向陽2号 B:愛紅 C:ヒトミ5寸 D:国分(長ニンジン) E:黒田5寸(有機)

向陽2号

愛紅

ひとみ

国分(長人参)

黒田5寸(有機)

図1.試料の人参の外観


国分ドロ付き

黒田5寸(ドロ付き)

愛紅(その他もドロなし)

図2.出荷品の外観

 先ずA、B、Cについて、生(上下1cm 下3cm を切り取り皮引きで表層を剥いたも
のを縦8つ割にしたもの)、だしなしで煮た場合(1きれが約6gの乱切りニンジン1kg
+水1kg+塩5g+味醂、酒、醤油各15g)、鰹だしで煮た場合(水の代わりに2%の鰹だし使用)について評価した。各試料は1箱から5 本以上をランダムで選び均一に混ぜて偏りのないようにした。

 次にA、D、E については鰹だしで煮た場合についてのみ評価した。

<評価法>
 評価項目は、ニンジンとしての色彩の好ましさ、口中に広がるニンジンらしい風味(ニンジン臭さ)の強さ、ニンジンの風味の好ましさ、食感(歯ざわり・噛み心地・舌触り)の好ましさ、ニンジンとしての甘味の強さ、ニンジンの甘味の好ましさ、うま味(こく
などを含む深みのある味)の強さ、味の密度=味がしっかりしている感じ、滋養(栄養に近いがカロリーではなく、身体に必要な養分がある感じ)、あなたにとってのおいしさ、の各項目について+3から-3までの7段階尺度で評価し、さらにニンジンとしてあるべきと思う品質のよさについてもっともよいを1位として順位をつけてもらった。

 パネルは野菜と文化フォーラムの講演会や野菜の勉強会の参加者を中心に依頼し、ボランティアで参加を快諾戴いた20代から70代前半の男女24名で過半数が50才以上である。

<実施時期と場所>

 平成20年11月18日  築地市場の調理室付き会議室



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