最上段は被験者全員の選択度数を示す。また、2段目と3段目には初めに添加、または無添加を選んだかによって被験者を群別して示す。1回目にヒントなしで味わったときは、好ましい方の選択率には殆ど差がなかったが、実験1ではヒントにより着眼点が絞られると、IMP
添加試料に対する全体の選択率は一様に高まった。5回目にIMP が選ばれた度数は51で添加したものが無添加より統計的に有意に選ばれている。初めに添加を選んだ人は2回目以降も無添加を選んだ人より添加の選択率が高く、実験1では5回目には殆どが添加を選んだ。一方初めに無添加を選んだ人は2回目では若干名が添加を選んだが、それ以降その度数は増えなかった。実験2でも同様な傾向は見られたが、実験1ほど顕著ではなく、味醂を除いたためにうま味を引き立てる要素が減ったことやヒントの与え方が具体的でなかったために識別が難しかったことを示す。
さらに選択理由からどのような特性の違いによって試料を識別したかを見ると、味のみでなく、外観や食感を含めて様々な言葉が挙げられたが、度数が多かったのは甘味とニンジン臭さであった。添加と無添加が選ばれた場合に分けて、挙げられた代表的なキーワードの度数を時系列的にまとめて図8に示す。
実験1では、ヒントなしでIMP 添加を選んだ人は、甘味やニンジン臭さにも注目して
いるが、だしも挙げられているのに対して、無添加を選んだ人は、だしもうま味も少なく、甘味が最も多く挙げられている。2
回目以降に添加を選んだ人も、だしやうま味は一気には増えないが、5回目にはだしとうま味がもっとも多くなっている。これは図7と合わせて考えると、だしが違うというヒントが与えられても、直ちにうま味が実感できる訳ではなく、何回も味わうことによって、うま味がだしのイメージに伴って体得されることを示している。また、無添加を選んだ人は最後まで甘味とニンジン臭さにとらわれて、うま味を実感できなかった。実験2
では、だしやうま味という言葉は最後まで殆ど挙げられなかった。また、実験1 と反して、IMP 添加を選んだ人の方がより多く甘味を挙げているが、本来甘味には差がないはずであるから、これはうま味が僅かであるときに甘味と判断されたことが考えられる。
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