一般にニンジンは甘くてニンジン臭い風味が特徴と思われ、うま味はあまり意識されないが、ここではたかだか閾値程度に存在するグルタミン酸が微量のイノシン酸との相乗作用でうま味が増強されることによって、ニンジンのおいしさを支配していることも示された。しかし、内外の文献をみても、ニンジンの評価項目にうま味を挙げているものは殆どない。もし挙げたとしても、ニンジンの味のなかでうま味物質自身の味を捉えることは難しい。評価者はニンジンの中で示すうま味のイメージを体得しつつ評価しなければならないが、だしの概念が定着していない人がうま味の概念を形成することは容易ではないことも示された。また、ニンジンを好む人の方が好まない人よりうま味の識別力が高く、うま味の強いニンジンを高く評価していることも前報で示されている2)。
これはニンジンの好きでない人の評価に合わせれば、ニンジンのうま味は無視され、長ニンジンのようにうま味があってもその味は無視され、出汁や肉を使っておいしくなるうま味のポテンシャルをもったニンジンは生き残れないことも意味している。よりよい食品の選択・摂取のためにも、だしやうま味への注意力心を高めておく必要がある。
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