第2章 野菜のおいしさに関する検討結果
T ニンジンの官能評価と機器分析
1 ニンジンの嗜好型官能評価
<評価者の特性>
 今回の社会人パネルと大学生の結果を共通の質問で比較する。

 「ニンジンは大好きだ」に対しては、社会人でも大好きは少なく、そこそこ好きに止
まっている。しかし、分布のピークが社会人では5にあるのに、大学生は4である。大学生は嗜好形成が発展途上にあるといえる。

 「ニンジンのにおいが大好きだ」に対しては、社会人は4以上が大部分であるが、大学生は4以下が大部分で、嗜好が未開発の段階にある。「もっとにおいのないニンジンが食べたい」に対しては、社会人はそうは思っていない人が多いが大学生はどちらともいえないが多数をしめている。

 「ニンジンの甘味が大好きだ」については、どちらも分布がブロードに拡がっている
が社会人も大学生も好きな側に多く分布している。「もっと甘味の強いニンジンが食べたい」についても分布はさらにブロードであるが、社会人は僅かに食べたくない側に傾いている。大学生は女性は食べたい側に僅かに傾いてはいるが、どちらでもないを中心に両側にほとんど同じ頻度でばらついている。

 「果物は甘ければあまいほどおいしい」については社会人の一部はやや賛成であるが、多くは反対である。しかし大学生はそう思う人も多い。

 「一般に香りの強い野菜が好きだ」に関しては社会人は6にピークがあり、そう思う人が多いが、大学生はどちらともいえないが突出して高く、両サイドに対照に広くばらついている。

 以上から、野菜嗜好の発達は香りに対する新奇性恐怖の除去と甘味嗜好が関与しており、野菜嗜好が未発達のときは香りが少なく、甘味で新奇性恐怖を抑えているが、年齢が高くなると、香りや甘くないものに移行することがわかる。

 従って今回行ったにおいや苦味の強い長ニンジンや黒田5寸の評価は大学生で行えば、より低く評価される可能性もある。しかし、若者や幼児のみをターゲットとして野菜を開発すれば、年齢を重ね食嗜好が成熟したときに初めておいしさの分かる野菜はなくなってしまうし、日本人の食全体が幼児食の方向に徐々に移行することになり、それは次の世代にとっても望ましいものではない。特に生体に必要な微量成分が希薄になることを避けるためにも嗜好が生成された人が高く評価する個性或品種は大切にする必要がある。



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