これは苦味を含め味のバランス感覚の違いによるものと思われる。
一般に食品の評価においては、チーズ、本醸造の酢、蒲鉾、からすみ、練りウニの瓶詰めなど、味、風味に特徴の強い食品の評価を食べ慣れない人で行うと、価格とは逆相関の結果が得られることは屡々経験することである。食感でも或る老舗の高級羊羹には絶妙ともいうべき微妙なかたさと粘りがあり、それは追随を許さぬ高度の技によることは業界ではよく知られているが、一般人で評価しても安価でやわらかいものをよいとする人が半数で、平均では差がつかなかった。かつてレギュラーが少なかった時代にインスタントコーヒーとレギュラーコーヒーを一般人で評価して、前者の方が高く評価され、インスタントがいかに優れているかを報告した事例もあった。
今回の評価結果からすると、三浦ダイコン(本三浦)も同様な論理を適用すれば存在は危うくなる。また、この実験で用いた試料は苦味も偶々強かったのかもしれないし、成分も偶々少なかったのかもしれない。食感についても、やわらかいと見るのか、煮くずれている、とろけそうとみるか、評価者の解釈で評価はまったく違ってくる。人でなくテクスチュロメータで測れば直ちに結論がでるといったものではない。この実験は1cmの厚さでシンプルな味付けで煮たもので、本来の食感のよさを発揮するのは厚く切って長時間煮込み、おでんやふろふきにした場合と思われる。それは今後時間をかけて検討すべき課題である。また、今回はミネラルやアミノ酸に大差はなかったが、ビタミンや機能性成分その他の成分を含めてさらに検討する必要がある。
この実験でいえることは、大同小異のダイコンが多い中で、一部の人には嫌われても野菜に関心の高い一部の人に高く評価されるダイコンが存在するということである。もし食感や苦味が特徴だとすれば、たとえもっと出来のよい三浦ダイコンで評価しても、普通のダイコンを食べ慣れている人がその特徴を直ちに理解し高く評価することはあり得ない。そのために苦味をなくし、食感を硬くしても普通のダイコンに近づくだけで、他のダイコンにない特徴を付与すれば三浦ダイコンではなくなる。嗜好の形成には時間がかかるが、一度獲得した嗜好は長続きする。大量生産ではなく食べ慣れた人の嗜好を大切にして、その物のよさをさらに追求することが大切と思われる。
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