甘味と文化:
わが国の古来の食嗜好は、色、味、香りともに自然を貴び、繊細で奥深いものをよしとしてきた。山菜の苦味やお茶の渋味などへの独特の嗜好も発達させてきた。嗜好の形成には後天的な学習が必要であり、それを避けて本能的な快や食べ易すさのみを追求するのは味覚の幼児化につながる。
4)本来の野菜らしさ、個性
本来の野菜らしさには味、香り、風味、食感の全てが関わっているが、香りは特に野菜らしい特徴を支配している。意識調査では味と共に香りが薄くなり、本来の野菜らしさがなくなったことが指摘されているが、同じ野菜で地味と香りや食感が無関係なはずはない。濃香とはこまやかな香りをいう。無数の成分から成る香りは密度が高く蒸発しにくいが、成分が櫛のように欠けた薄っぺらな香りは野菜を切ったときは強くてもたちまち消え失せてしまう。香りもまた地味と同様に無限の成分からなるものである。また組織もしっかりしたものはある程度歯ごたえもあるのは当然である。しかし重要なことはそういった濃香や食感には嗜好が未形成の人と形成された人が対立した価値観を持つことである。その点については次のレビューの中で述べる。
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