第9章 野菜のおいしさに関する意識調査とタマネギの官能評価
味覚と食嗜好研究所 山口 静子
附表2 野菜に関する意見(その2)

 前記の調査を踏まえタマネギの官能評価の際に追加調査を行った。以下は66名のコメントである。前記と同様仮の見出しをつけて生の声をそのまま列挙する。

質問1
 「最近の野菜は概して本来の野菜らしさがなくなった」ということは実際にはどういうことだと思うか、という質問に対して挙げられたコメント

  •  甘味、辛み、苦味などの味が薄くなった。
  •  甘味が強くなる、味が薄いなど。
  •  トマトが甘い。
  •  苦味、エグ味。
  •  苦味が評価されにくくなっている。
  •  本来野菜が持っている苦味や辛みや甘味が薄れ、ただ単に甘味の強い野菜が増えて来ている。
  •  小松菜は苦味のある野菜ではない。野菜の甘味があり奥深い味のするもの。

  • 濃さ・深み 味が薄っぺら、ある要素だけが強くても奥深い味わいがない。
  • 濃さ・深み 味の濃さ、甘さ、深みなど。完熟は色合いなど、歯ごたえ食感。
  • 濃さ・深み 味の濃さがない。当たりさわりのない味。
  • 濃さ・深み 味に濃さがない(人参)、食感に密度がない(葱)、成分が少ない、大量生産で作りすぎているようで水っぽく感じる(大根)
  • 濃さ・深み 味わい、同時に栄養(カロリーとかありふれた成分の問題ではない)も乏しくなった。
  • 濃さ・深み コクのような複雑さが乏しい。

  • 味・香り 香り、甘味、が薄くなっている。年々農作業の軽減のため農薬をかなり使用している。最近有機などもあるがそれでも昔とは違う。
  • 味・香り 大根が甘くなり、人参の風味がなくなった。
  • 味・香り 香りが少なくなった。甘くなった。
  • 味・香り 甘味と酸味バランスではなく甘味だけが強調された品種が多くなった。香りが弱いように思える。
  • 味・香り 臭いや苦味、辛さが減少し、甘さが増している。
  • 味・香り 香りの強さ、歯ごたえ、辛み、苦味などの特性が強く出る。
  • 味・香り トマトを例にすると昔の青臭さがなくなり甘くなった。果物のようになった。

  • 味・繊維 甘味や繊維。

  • 香り 香りがない。
  • 香り 土臭さのような香り味がしなくなった。
  • 香り 春菊→香りが本当になくなってしまっている。
  • 香り 野菜本来の香りがない、例えば、人参、きゅうり。
  • 香り 人参特有の臭いがなくなった。
  • 香り 人参の香り少ない。香味野菜のしその葉、茗荷にしても香りがなくなっている。何のための香味野菜かという怒りを感じる。
  • 香り 切ったときの香りが少ない。少し水っぽい。
  • 香り 人参特有の臭みがなくなった。玉ねぎを切っていても涙が出るようなものが少なくなった。
  • 香り トマトの臭みの強い薬物独特の臭いの強さ。
  • 香り 素材を生かした食べ方をしていない。外で食べることが多く好きなものしか食べられないし、生食で食べる機会が少なく香りの強いものは食べない。
  • 香り 強さよりも質が問題。貧弱で濃厚さがない。

  • 食感 かたいものが嫌われている。
  • 食感 総じて軟化し煮えやすくもなったがしっかりした歯ごたえ、噛みごたえのあるものがなくなった。
  • 食感 煮えやすくなったのは時間的には助かるが、組織の結着力が脆弱で、野菜の力強さがなくなり、栄養成分にも影響があるのではないかと気になる。
  • 食感 小松菜の育種、小松菜でなくなっている(ザーサイ、パクチュなどが交雑されている)。ほうれん草緑が濃すぎて繊細な味、ほうれん草の食感が失われつつある。
  • 食感 きゅうりなど硬直していて味、風味が薄く人工的で自然さがない。トマトなど未熟のうちに収穫するものが多くなったがおいしいはずがない。

  • 外観 形、姿がそろい過ぎている。
  • 外観 形の規格からはずれている野菜が出回らない。

  • バランス 例えばきゅうりは皮と身の硬さのバランス、香り、しなやかさ(テクスチャー)が以前よりは改良されているものの不満。

  • 鮮度 新鮮な野菜を食べる機会が減ったことに起因しているような気がする。

  • その他 褐変しにくくなった。

  •  従来は旬による気候によって栽培されていたから。

  • 旬・その他 はしり、旬といったような野菜の本来の食べ頃に対する認識が変化して(なくなって)きている。1.周年供給 2.気候温暖化 3.ユーザーの供
    給体制などが変化している。
  • 旬・その他 輸入品、工場生産が多くなり年中買え、香り味に個性がない。

  • 特徴 きゅうりのフリーダムのように本来の特徴がない野菜が多くなった。
  • 特徴 画一的で万人受けする品種のみが増えた。
  • 特徴 野菜の種類そのものの特徴が薄くなった。クセがなくなった。好き嫌いが少なくなった=食べやすくなった?
  • 特徴 ・・らしさが少なくなっている。にんじんらしさ、きゅうりらしさ・・
  • 特徴 トマトは昔と全く別物になってしまった。
  • 特徴 新ジャガ、新人参は感激するほどの味でない、2月頃新野菜が出てがっかり。
  • 特徴 食べやすさを追求することが野菜らしさを失わせていると思う。
  • 特徴 野菜それぞれの個性的な味、人参の場合は人参独特の味。
  • 特徴 青みのあるトマトなどが全くなく自然な感じが全くしなくなった。

  • 多様性 多様性がなくなっている。品種栽培法の画一化が進んだため同じ野菜でも季節による差がなくなった。

  • 作り方 私は小松菜の育種をしている。生産者のために生産性や見た目を追いかけすぎたために本来の風味や食感が損なわれた。

  • 農法 栽培方法(農法)などでも差がでる。栽培効率の良い作物の品種を選んで栽培しているから。
  • 農法 収穫効率のみを重視して作られた野菜。ほとんどがF1の種だから。
  • 農法 スーパーのF1品種は食材、つまり材料として、また地方や伝統的な野菜は嗜好品として大きく分かれてしまっている気がする。

  • 流通 選別場(選果場)で選別されてから流通に乗せられるため同じ様な農産物しか市場に出回らない。

  • その他 食べた方に先入観があるのでは?比較したのか(試食はブラインドをしてやったのか)。


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