第9章 野菜のおいしさに関する意識調査とタマネギの官能評価
味覚と食嗜好研究所 山口 静子
附表2 野菜に関する意見(その2)

 前記の調査を踏まえタマネギの官能評価の際に追加調査を行った。以下は66名のコメントである。前記と同様仮の見出しをつけて生の声をそのまま列挙する。

質問3
 「このまま行けば野菜本来の味風味食感が失われる」ことに対してどうすればよいかに対して挙げられたコメント

(肯定的意見)

  • 野菜が持っている独特の味(苦味や辛みなど)。
  • いろんな品種があるので心配ない。
  • ニーズに合わせての変化であれば仕方ないのではないか。
  • いろいろな理由で変化している、特別な規制をする必要はない。
  • 要は売れるものを作ること。
  • 味や香りを消費者が求めればそういう方向に自然に進むと思う。 

(問題指摘と提言)

  • 特性 まず、野菜本来の味がなぜ必要かを証明、論じる必要がある。
  • 特性 若い人、子供に迎合し過ぎている。
  • 特性 かたいものの価値も重要。
  • 特性 好みで判断する要素を。
  • 特性 固定したものの復権を。
  • 特性 野菜の本来の旬を取り戻すこと。
  • 特性 季節により同じ野菜でも味、香りが変化してもよい。色や形サイズを重視しているようであるが、もう少し多様なサイズ形のものが出回ってもよいと思う。
  • 特性 甘味ばかりを追う品種改良をしない。
  • 特性 味覚や歯並び、あごの発達の影響がでてくることも心配、硬さのある野菜、味の濃い野菜を栽培することが必要。

  • 食べ方 どんな野菜でも規格外のものも一般家庭でも手にはいるように流通させるべきだ。伝統的な食文化や地方食は旬の大量にとれたものをどう生かすかの智恵だと思う。曲がったり虫喰ったりしても大量に料理する、ソースを摂る、保存食を作ることが1本2本のパック入りではできなくなってしまう。
  • 食べ方  根菜、れんこん、ごぼう、にんじんなどを心して多く煮物として味わう。
  • 食べ方 野菜のおいしさは、組み合わせ、調理方法、煮る、焼く、蒸すのトータルで考えるべき。

  • 作り方 農業生産が進化した中でそれを否定し是正しなければならないところ、今後も進化していかなければならないところを分けて考える必要がある。
  • 作り方 本当の自然環境のみでの野菜栽培は生産者にリスクが多すぎる。土を作ることから野菜の栽培、生産流通、加工、調理、食事、体の中の代謝、人の命になることの関連性の中で本当に必要とされる野菜を求めていく必要がある。
  • 作り方 地域にあった在来種の保存と栽培。
  • 作り方 持続可能な土作りの実践。
  • 作り方 畑を大切にする。
  • 作り方 せめて野菜は自国生産、肥沃な土地を大切に守る。
  • 作り方 在来種の発掘、普及。
  • 作り方 在来種を大事にすること。
  • 作り方 在来種を大事に購入する(要望する)消費者行動を継続すること。
  • 作り方 慣行栽培ではなく有機栽培でつくる。
  • 作り方 自分で野菜を生産することを心がける。
  • 作り方 価格などにこだわらず、最も適した方法で栽培された野菜を増やしていく。
  • 作り方 消費者側の物作りをしすぎる。
  • 作り方 合理性のみを追求しすぎると食品は食物ではなくなる。
  • 作り方 野菜は周年である必要はないと思う。
  • 作り方 季節のものを作り流通させることが基本、地域性のある野菜を心がけて食べている。
  • 作り方 人にも野菜にも個性がある。作る側の都合であまり変えない方がよい。自然、大地の力で育てられた野菜は時間がかかってもおいしさが増す。
  • 作り方 子供の野菜嫌いの原因の1つは風味やアクの強さにあると思う。万人向きになる傾向には賛成だが、味にバラエティのある品種も残して欲しい。年齢や個人の好みで好きな品種は異なるので選択できるように多数の品種が必要。
  • 作り方 消費者の際限ない欲求に迎合しない生産、流通体制。
  • 作り方 昔の野菜のタネを復活させるとともに現在重要視されている棚もち、作り易さなど、融合させていく(品種改良)。
  • 作り方 地産地消を薦める、とりたては甘味、風味があり、渋み、苦味が少ない。
  • 作り方 栽培方法の検討、例えば有機栽培と慣行栽培、水耕栽培。
  • 作り方 伝統野菜地方野菜をサポートする。産地はいたずらに売れる方向を追求しない。
  • 作り方 本来野菜などはその地域の土壌条件、気候などによって食味は変わっていたはずである。この点最近は全国一律品種になっているのは問題ではないか。野生味については昔からの伝統品種などの再発見をするべきではないか。
  • 作り方 畑の自然の力を生かした食物が少なくなっていくようでおそろしい。
  • 作り方 昔から伝えられてきた野菜の味には長い選択と淘汰を切り抜けて生き残ってきたもので、食べ慣れない人が直ちに理解できなくてもそれなりの理由があるはずである。
  • 作り方 世界の巨大アグロバイオ企業に独占支配される危険を避けるためにも、F1のみでなく、古来から受け継がれてきたわが国の風土にあった優れた多様な品種の自家採種をできるだけ守るべきである。それには同じ野菜でも品種や嗜好を画一化しないことが大切である。そのあたりの実態も消費者に広く知らしめる必要がある。また、消費者はこの問題に無知で無関心過ぎると思う。

  • 流通・販売 八百屋という商売が成り立つようにする。少なくとも自国生産する。地産地消とする。できるだけ自然に熟したものが流通経路を短縮して食べられるようなシステムを構築することは省エネにとっても重要。
  • 流通・販売 大型量販店に対して朝市や道の駅などが話題になっているが、それもよいが、最も大切なことは、一般の人が信頼して買えるために確立されてきた青果市場を通しての公共的な販売ルートをまともに発展させることである。

  • 情報提供 直売場などで説明付きで販売する。
  • 情報提供 調理と野菜の種類、品種の関係を知らせる。
  • 情報提供 野菜の特性を示して共存すべきだ。情報を提示すべきだ。
  • 情報提供 売り場での説明、食べ方の紹介を売り場でする。
  • 情報提供 遺伝子組み換えなど先端技術について正確な情報を提供する。

  • 啓蒙 有機のような野菜をより広く消費者に理解してもらいその価値観を広めていく働きを全国的に行うべき。
  • 啓蒙 消費者に野菜本来の味などを楽しめる機会を設ける(アピールする)。現在のニーズを正しく掴み直すことも必要。世代が変わっている。
  • 啓蒙 おいしい野菜を作って食べさせる(旬が分かるようにする)、果実のように。
  • 啓蒙 畑または産地で本物を食べる訓練。
  • 啓蒙 野菜本来の味を知る機会を草の根的に広げる。
  • 啓蒙 野菜本来の香味、歯ごたえ、などを家庭でも学校給食などでも伝えていけたらよいが、その方法は?と問われると具体案はないのだが …
  • 啓蒙 様々な野菜を食べる。食経験を増やす。
  • 啓蒙 味覚が形成される幼少期に食べさせるべき(食文化)を受け継ぐ意識が必要。
  • 啓蒙 地道ながら食育だと思う(低学年から始める)。どの名目でもよいが直接土に触れること。
  • 啓蒙 食物の深い味わいは学んで覚えるもので、それを子供にも教え伝えることが重要である。
  • 啓蒙 子供だけでなく若年層(20−40代)にも食育をする。


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