タイトル<野菜の学校>
● 2011年度「野菜の学校」 ●
- 2011年10月授業のレポート -
【当日の鹿児島野菜とその料理】
※植物分類表記は、系統発生解析による新しいAPG分類体系に基づく
さつまいも(黄金千貫、種子島紫いも、安納紅いも、安納黄金いも、隼人いも)

<ヒルガオ科>
 さつまいもは、別名、甘藷、唐芋、琉球藷。中央アメリカ原産。15世紀末、スペイン人がヨーロッパに持ち帰り世界に広めた。温暖な地を好む。

 日本には1597年、琉球に伝来し、薩摩、長崎など九州地方に広がった。種子島が甘藷栽培の最初の地。

 1735年に幕府が蘭学者の青木昆陽に試験栽培を命じ、1737年に栽培に成功。昆陽は「甘藷記」というパンフレットを作ってさつまいもの現物と共に諸国に配り、以後関東地方でも広く栽培されるようになった。

 やせた土地でもよく育ち、強風にも強いため、重要な救荒作物。飢饉や戦中戦後の食料難の時代にも役立ったが、甘みが強く、主食としての作物にはならなかった。

 主な品種に、「紅アズマ」(皮は濃赤紫色、中は黄白色。繊維が少なく、肉質は粉質、甘みが強い。関東地方で人気)、「高系14号」(皮は赤褐色で厚い。中は淡い黄色。甘みが強い。1945年に高知県で早堀り用品種として育成。鳴門金時などの枝変わりも多い。西日本で人気)などがある。

<栄養・効能>
 さつまいものエネルギーは132kcal。食物繊維は100gあたり23gと、いも類の中で最も多く、便秘の改善や予防、血液中のコレステロールを低下する効果があるといわれる。いものビタミンCは加熱に強く安定している。

 さつまいもの切り口からでる白い液体は「ヤラピン」で、腸の蠕動運動を促進し、便を柔らかくする。食物繊維との相乗効果で便秘防止によいとされる。

 糖分が多いために甘く、でん粉(アミロース)を麦芽糖に分解する糖化酵素のβーアミラーゼを多く含む。β-アミラーゼは60〜80℃程度で活発に働くため、蒸したり焼いたりする過程で多量の麦芽糖ができ、甘みが増える。

 さつまいものでんぷんは消化されにくく、腸内で消化しきれなかったでんぷんが腸内細菌の栄養源となり、分解されて腸内ガスが発生する。「おなら」が出やすいといわれるのはこのため。また、「胸焼け」しやすいのは、さつまいもは他の野菜に比べて水分が少ないため。胸焼けは胃酸が逆流して食道が軽い炎症をおこしている状態。ゆっくり、よく噛み、水分を補給しながら食べると防ぐことができる。

<基本調理法・料理例>
 焼く、揚げる、煮る、蒸す、炒め物など。変色しやすいので、皮をむいたり、切ったらすぐに水に浸けて使うとよい。また、ゆでるときに酢やレモン汁を加えると、酸の働きにより、色鮮やかに煮上がる。

【黄金千貫】

 数度の品集改良の後、1966年(昭和41年)に鹿児島で生産が始まった。皮が薄く、淡い茶褐色(白色)で中身はごく薄い黄色。ずんぐりした形。でんぷん採取用や焼酎の原料にされる。食味はホクホク。蒸すと甘い香りが醸し出される。

 


黄金千貫

【種子島紫いも】

 沖縄、種子島の特産で皮は淡い茶褐色(白色)で、中身は鮮やかな紫色。加熱すると華やかに発色する。紫色は抗酸化物質ポリフェノールの一種のアントシアニンの色素によるもので、ガン予防、肝機能を向上する作用、血圧を下げる、眼精疲労の回復などに効果がある。種子島紫いもから選抜された「種子島ゴールド」は1999年(平成11年)に品種登録され、現在はほとんどがこのいも。ホクホクの粉質。多くの紫いもは淡泊な食味だが、これは強い甘さを持ち、蒸す、焼くなどそのまま食べてもおいしいほか、和菓子の色づけなどに使われる。

 


種子島紫いも

【安納紅いも・安納黄金いも】

 太平洋戦争後、戦地から兵隊さんが持ち帰ったいも苗を種子島の安納地区で栽培したのが「安納いも」の始まりといわれる。1998年(平成10年)度には在来種から県が選抜した皮が紅色の「安納紅」、淡い黄色の「安納こがね」が品種登録され、島内では年々面積が増加している。掘りたてより3週間から1ヶ月以上熟成させると甘みが増し、おいしくなる。2品種とも主に焼きいもや蒸しいもで食べられ、粘質で大変甘い。

 安納紅いもは、糖度が16度、上手にじっくり焼くと糖度は40度にもなるという。水分が多く、焼くとクリームのようなねっとり感がある。

 安納こがねは安納いもを栽培しているとごく稀に現れる白っぽい変色品種。食味は安納いもと同等かやや上品な甘み。皮の色は異なるが、肉質、糖度などはほとんど変わらない。

 


安納紅いも


安納黄金いも

【隼人いも】

 長紡錘形で、外皮は黄褐色。肉色はあざやかな鮭肉色でカロテン含量が多く、甘みが強い。大正時代にアメリカから入ってきたさつまいもで、「にんじんいも」といわれる。アメリカ品種ポートリコに類似し、同一品種とみられる。

 やや痩せた地で乾燥した台地に適している。にんじんにそっくりで、当時としてはおいしく、よく煮て食べられていたが、現在は市場にあまり出ない。蒸かして食べると独特のカロテン臭がある。


隼人いも

 
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