●会員による会員のための親睦・勉強会 全体レポート●
第1期・2005年11月〜2006年4月
第1期(2005年11月〜2006年4月)
講師:大崎伸介氏、江澤正平氏、荒井慶子氏、芦澤正和氏、三保谷智子氏、川口和雄氏

<2005年11月>
大崎伸介氏(理事・JT食品開発センター)
「中国の野菜生産の現場から」

 日中合弁会社から中国に派遣され、帰国したばかりの氏に、中国における日本向けの野菜輸出の現状を、豊富なスライドを見ながらうかがった。日本向け野菜はいっせいに収穫して加工場に運ぶことが肝心であるため、育種や土地の改良などに大変な試行錯誤・工夫がなされている。中国産に対する不信を払拭するには至らなかったものの、輸出品の品質管理をする中国の行政機構「CIQ」の大変きびしい規制があることも知った。

<2005年12月>
江澤正平氏(故・名誉理事)
「市場事始め」

 明治末に生まれ、先日亡くなられた氏は、大正から現在までの市場の生き証人ともいえる存在。市場の発祥から信長の時代、江戸…戦時中から現代までの変遷、幕府や政府が市場をいかに管理してきたか等々、近年は自身の体験に基づく歴史や事件とも絡めながら、興味深くお話いただいた。大事なのは、安全な食べものが安定的に供給されること。そのための市場の役割とは? 最も大切なのは人と人との信頼関係であるとの持論は、偽装がはびこる近年、いっそうの説得力をもつ。

<2006年1月>
荒井慶子氏(副理事長・元女子栄養大学講師)
「食べ比べを担当して」

 氏は江澤正平氏と二人三脚で野菜の食べ比べの活動に携わり、調理を担当してこられた。食べ比べの公平な条件を整えるためには、料理とはまた違う細心の気遣いが必要で、それには前例がない。常に舌を鍛えながら(「ベロメーター」)の工夫・苦労があったことがしのばれた。当日は長年の懸念だったというほうれんそうのおひたし(塩が必要か?)と大根の煮物(調味料を加える順番)の食べ比べも行われた。

<2006年2月>
芦澤正和氏(理事顧問・元野菜茶試験場)
「日本の野菜の種類と品種の総まとめ」

 野菜の育種の大家であり、著書も多岐にわたる氏に、日本野菜総論のような形で講義いただいた。植物としての野菜の系統樹、利用部位別の野菜の区分、市場で扱われる野菜の品目、日本における野菜の実用化年代とその原産地等々、資料を基に短時間で網羅いただいた内容は、今後も折に触れて振り返ることになる貴重なものだった。現在の「指定野菜」「特定野菜」はほとんど外国から伝播されたものであることも再認識した。

<2006年3月>
三保谷智子氏(理事・女子栄養大学出版部)
「『栄養と料理』10年に見る野菜企画の変遷」

 昭和10年創刊の『栄養と料理』は、当初から「食生活をととのえることで健康に」という姿勢を一貫しつつ、時代と共に様々なテーマを取り上げてきた。氏がここ10年の企画を整理してみると、野菜を取り上げた記事が毎号といっても過言でなく掲載されている。近年は野菜の機能性成分と病気予防に関連した記事が続くなど、野菜が健康に果たす役割がいっそう注目されるだろうことが分析された。

<2006年4月>
川口和雄氏(理事・日本農園芸資材研究会)
「施設園芸の歴史と野菜生産への役割」

 野菜の収量が安定して確保でき、周年供給が実現できたのは、園芸資材・施設園芸の発展があったからこそと、目を開かされた内容だった。以後、受講者は産地で資材を見る目も変わったのではないだろうか。日本の資材の技術力は世界に類を見ないが、施設園芸では既に中国・韓国にも遅れをとっているとか。実際に精緻な資材も持参いただいた。消費者ニーズというわがままに翻弄される農家の経営の厳しさをもっと知るべきという苦言に納得。
(文責/勉強会担当理事 脇ひでみ)

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