第2章 野菜のおいしさに関する検討結果
V ダイコンの官能評価と機器分析
1 ダイコンの嗜好型官能評価
 近年ダイコンは青首が主流で、伝統的な品種が一般の消費者には入手し難くなっている。味も画一化され大差がないように思えるが、その中でも煮物におけるダイコンの評価が、鰹だしの使用によって大きく変化することが示された1)。それはダイコンのグルタミン酸と鰹のイノシン酸の相乗作用によるものと思われた。そこで伝統的なダイコンのうま味やおいしさと微量成分の関係を調べるために以下の官能評価を行った。成分の分析については日本食品分析センターに依頼した(分析の項参照)。
<試料>
A:福天下 青首
B:冬みね 青首
C:本三浦
D:大蔵

の4種についてA とB、A とC、A とD を組み合わせて比較評価した。

図1.ダイコンの外観 上よりA、B、C、D

図2.煮物の外観
 以前に特農産物協会で行った実験2)では、4種のダイコンのグルタミン酸分析値は一般に出回っているもので15−29mg%であったが、今回も17−29mg%であった。
しかし分析値は予知できないのですべてA(23mg%)と比較した。うま味に関していえばB(17mg%)をA とすればより明確な結果が得られたと思われる。
<方法>

 産地直送品について、外皮を薄く皮挽きで除き太い部分3分の1ほどを用い3本分から均等にサンプリングするようにした。厚さ1cmに輪切りにしたものを6分の1のいちょう切りにしたもの1.5kgに対し水1.5kg、食塩15gを加えて加熱、煮立ったら醤油15g、酒15g、鰹削り節(にんべん)10gを加えて10 分煮たものを評価した。

 なお、Dは3本すべてに若干鬆が入っていたので、著しいところは除いた。

 評価はAとB、AとCの順に続けて行った。それぞれで試食順序はランダムになるように配慮した。評価はダイコンを主に行ったが、煮汁についても評価した。評価項目は、ダイコンらしい風味の強さ、風味の好ましさ、口中に広がるダイコンらしい風味(ダイコン臭さ)の強さ、ダイコンの風味の好ましさ、食感(歯ざわり・噛み心地・舌触り)の好ましさ、ダイコンとしての甘味の強さ、ダイコンの甘味の好ましさ、うま味(こくなどを含む深みのある味)の強さ、滋養がありそうな味(滋味)、あなたにとってのダイコンのおいしさの各項目について+3からー3までの7 段階尺度で評価し、さらに、ダイコンとして品質のよいと思う方を選んでもらい理由を記入してもらった。

 さらに予め試飲カップに注いだ煮汁について、甘味の強さ、だしがでている感じ、味の密度=味のしっかり感(しっかりしている−うすっぺらい)について7 段階尺度で答えてもらった。

 パネルは野菜と文化フォーラムの講演会や野菜の勉強会の参加者を中心に依頼した結果ボランティアで参加を快諾戴いた20代から70代前半の男女24名で過半数が50才以上である。

<実施時期と場所>

 平成20年12月18日  築地市場の調理室付き会議室



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