タイトル<野菜の学校>
● 2012年度「野菜の学校」 ●
- 2012年4月授業のレポート -
【当日の江戸東京野菜とその料理】
※植物分類表記は、系統発生解析による新しいAPG分類体系に基づく

◆亀戸だいこん <アブラナ科>

 文久年間(1861〜64)に亀戸周辺で盛んに作られただいこん。「お多福だいこん」ともいう。鮮緑の丸葉で、根元の太さ6cm、長さは30cm位の小型だいこん。産地は東京都葛飾区。収穫時期は 3月彼岸〜4月、生産量は不詳(1生産者2〜3万本)で、現在の生産者は本格的には1人、ほか3〜4名。

 荒川上流から運んだ肥えた土のため、肉質が緻密で風味のよい白いだいこんができる。根も葉も一緒に浅漬けやぬか漬にでき、新鮮な野菜の少ない早春の青物として、江戸市民から喜ばれた。春秋蒔けるが、春にトウ立ちしにくい性質を利用して晩秋に蒔き、年越しして春の浅漬け用高級だいこんとして収穫する作型で広まった。初物好きの江戸っ子は、亀戸だいこんを待ってぬか床を出し、その年初のぬか漬けをしたという。

 亀戸だいこんの栽培発祥を記念して、平成11年には香取神社に「だいこんの碑」が建てられた。


亀戸だいこん


亀戸だいこんの深川汁風

 

 都市化の中で、生産は葛飾区高砂に移った。種を守ってきた鈴木藤一さんは、軸(葉柄)が真白でやわらかい株を残すため、チョウによる自然交配の防止、冬の太陽熱を上手に取り入れて旬のおいしさを育てるヨシズ栽培の技など、多くの努力と工夫で栽培を続けている。

 JA東京スマイル、JA東京中央会が支援しているほか、旧産地の亀戸周辺では、商店街の若手経営者グループが「亀戸だいこんを地域のシンボルに」と、小学校での栽培体験、亀戸だいこんにちなむお菓子作りなどを行ない、また亀戸だいこんをメニューに取り入れた料亭もある。

 ビタミンCは普通のだいこんの2倍とのこと。だいこん葉は根より栄養分が多く、特にカルシウムは260mg/100gと多く含まれている。

 調理法は、葉、根ごと浅漬け。江戸の料理屋で出る香の物として「このだいこんに勝るものはない」といわれた。間引きした葉だいこんもおいしい。

「亀戸升本」という料亭には、亀戸だいこんあさり鍋、麦菜飯、野菜スティック、たまり漬けなどのメニューがある。

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